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「生きた音楽遺産」 来日するポールの公演、NYで見た

写真:ポール・マッカートニー(C)MPL Communications Ltd.
拡大ポール・マッカートニー(C)MPL Communications Ltd.

 ポール・マッカートニーが11月、「アウト・ゼアー ジャパン・ツアー」(東京・大阪・福岡)で11年ぶりに来日公演する。5月にブラジルからスタートしたこのワールドツアーの模様を、6月10日にニューヨーク・ブルックリン公演を見た音楽評論家・作詞家の湯川れい子さんが報告する。

     ◇

 ポール・マッカートニーは、今年6月18日で満71歳を迎えた。その1週間ばかり前の6月10日、私はニューヨークのコンサート会場にいた。昨年9月、ニュージャージー・ネッツからブルックリン・ネッツと改名したプロバスケット・チームのためにオープンしたばかりのピカピカの屋内競技場、バークレイズ・センター、1万8000名収容の会場は超満員で、1枚の余り券も無い。

 5月4日のブラジルで幕を開けたポールの「OUT THERE」ツアーは、ブラジル国内3ケ所のスタジアム公演の後はアメリカに飛んで、フロリダ州のオーランド、テキサス州のオースティン、テネシー州のメンフィス、オクラホマ州のタルサと打ち上げて、遂に6月8日、そして10日のニューヨークはブルックリンでの公演を迎えていた。

 テレビのニュースでは、メンフィスでエルヴィス・プレスリーの墓前を訪れて、「エルヴィスが天国でもギターを弾けるように」と、自分の名前入りのギター・ピックを手に持って語るポールの姿が紹介され、ポールは自分に多大な影響を与えたヒーローの墓石の上に“尊敬の念と共に”ピックを置いて帰ると、その夜、メンフィスの会場フェデックス・フォーラムでのコンサートに向ったと伝えていた。

 そして6月10日のコンサート。全38曲。この夜の感動と興奮を、私はどう伝えることが出来るだろう。

 オープニングは、ビートルズのナンバーから「EIGHT DAYS A WEEK」。長年のビートルズ・ファンにとっても、生きた伝説、音楽の世界遺産であるポールを初めてナマで聞くという若いファンにとっても、嬉しいことに、今までのツアーでは望んでも聞くことが出来なかったビートルズの曲が実に多いことで、全38曲中、ビートルズ・ナンバーは26曲。しかも、「EIGHT DAYS A WEEK」の他、「YOUR MOTHER SHOULD KNOW」は珍らしや『マジカル・ミステリー・ツアー』からの一曲だし、「ALL TOGETHER NOW」は『イエロー・サブマリン』からの物だ。

 そしてジョン・レノンが書いたナンバーとして選んだという『サージェント・ペパーズ・ロンリー・ハーツ・クラブ・バンド』からの一曲「BEING FOR THE BENEFIT OF MR. KITE!」は、アルバムの中でも特殊な工夫を凝らして創り出していたミステリアスな雰囲気を、ちゃんと再現してくれていて涙ものだったし、もう一曲、同アルバムからは「LOVELY RITA」が初参加。

 なんと「EIGHT DAYS A WEEK」を含めての上記5曲は、ビートルズの現役時代も解散後も、ビートルズのメンバーによってコンサート等で演奏されたことは今回のツアーまで無かったというのだから、それだけでもすごく嬉しい気持になってしまう。

 今回、ブラジルやメンフィス等で演奏された曲目をネットで調べて見ると、私が聞いた10日の夜のセットリストとは、時に曲順が違って演奏されるくらいで基本的な違いは無いから、11月の日本公演でもこれらの貴重な演奏は楽しめるはずなので、ぜひ期待して欲しいと思う。

 またニューヨークでは思いもかけず10曲目の「MAYBE I’M AMAZED」の後に、リンダとの想い出が強く尾を引いて誘い出されたかのように、ビートルズが1964年のハリウッド・ボウルで演奏した「THINGS WE SAID TODAY」が、それまでのセットリストには無かった曲として歌われたのだが、「EIGHT DAYS A WEEK」と同じ頃に作られたポールのこの曲は、前回2002年の来日公演でも演奏されなかった曲だけに、古いポール・ファンにとってはたまらなく嬉しい曲なのではないだろうか。

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