2018/03/30

2人目ママの育休戦略……留学やボランティア、自身の可能性探り、広げる

Written by 朝日新聞DIALOG編集部

泣いてはあやし、おむつを替え、授乳し、お風呂に入れ、寝かしつける。育児休業中のママが赤ちゃんと過ごす日々は、あっという間に過ぎていきます。第1子の育休を振り返り、「とにかく余裕がなかった」というママたちが、2度目の育休を取るとき。そこには大きな意識の変化がありました。2月上旬、総合人材サービス「パーソルホールディングス」の東京都内のオフィスで、3人のママに集まっていただき、話を聞きました。聞き手は、大学4年の越智未空さん。大学生が子育て家庭を訪ね、生き方のロールモデルに出会う「家族留学」事業を手がける株式会社manmaで活動しています。このほか、manma代表で大学院1年の新居日南恵さん、パーソルホールディングス「ママお仕事がんばって(MOG)事業推進室」の金子麻由子さん、フィリピン・セブ島への親子留学プログラム「ママ・赤ちゃん留学」を提供する株式会社留学情報館の近藤英恵さんが、オブザーバーとして参加しました。

座談会に参加したのは下記のママたち。
ASさん(36)外資系コンサル勤務。2歳児、0歳児のママ。18年4月に復職予定
AFさん(36)教育・出版社勤務。5歳児、1歳児のママ。18年4月に復職予定
CSさん(34)インテリア会社勤務。5歳児、0歳児のママ。19年4月に復職予定
(以下、敬称略)

越智:初めての育休と、2度目の育休で、気持ちに変化はありましたか?

越智未空さん

CS:1人目の時は「こんなに休んでいいのかな。職場に置いていかれるのでは」と心配で、育休を楽しめないまま終わってしまいました。でも、復職したら、「私が休んでも、会社はなんとでもなるんだな」と分かった(笑)。2度目の育休は「最後の夏休み」みたいな気分です。復職したらもうこれほど長期には休めないので、普段はできないことをやってみたいです。

AS:長女の時は、産後6カ月で復職しました。「(会社で自分の)ポジションがなくなっちゃう!」と焦っていて。次女の育休でようやく、「日々の生活の中で、周りの景色を見よう」という気持ちになれました。

AF:5年前に初めて育休を取った時は、育児そのものに慣れておらず、毎日大変でした。当時は今ほど、子連れで参加できるイベントやサービスがなかったので、家でテレビを見て、昼寝をして一日終わっていたように思います。

越智:その時の後悔から、2人目の育休の過ごし方は変わりましたか?

ASさん

AS:1人目のときは半年で復職したのですが、その間、会話を通じて相手の思いを引き出すファシリテーション能力がすごく落ちた気がしたんです。考えてみたら、育休中、夫以外の大人と会話していなかった(笑)。なので、2度目の育休では「外との接点を持つ」ことを意識しました。まずは産後のセルフケアに関する啓発活動をしているNPO法人「マドレボニータ」の集まりに参加。体を動かしながら、仕事や夫婦関係、家族のこれからについて考え、自分の思いを言語化することの大切さに気づかされました。

その次は、仕事に関連するようなこともしたいと思い、ネットで見つけたパーソルホールディングスの「ママボラン」というプログラムに参加しました。育休中のママがスタートアップ企業やNPOでボランティアをし、本来の仕事とは違う職種や業務を経験することで視野を広げられるというものです。NPOへの転職に興味があったので、いまは、高校生のキャリア支援を手がけるNPO法人「カタリバ」のお手伝いをしています。

AF:最後の育休になるだろうから、やりたいことは全部やろうと思っていました。もともと仕事で、子ども向け英語教材のマーケティングや、英語イベントの企画を担当していたんです。5歳になる上の娘は自社教材で英語に親しみ、簡単な会話ならできるのに、私自身はヒアリングやスピーキングが苦手。

AFさん

そんなとき、やはりママボランのイベントに参加し、留学情報館が、子連れのセブ島留学サービスを実施していることを知ったんです。「行きたい!」と夫に相談し、昨年12月に娘を2人連れて17日間、現地の語学学校に通いました。子どもたちは現地のシッターさんにお世話をしていただき、私は毎日6時間、みっちり授業に参加。帰宅後も宿題をしたり、シッターさんと英語で雑談したりして、どっぷり英語漬けの日々を過ごしました。

CS:私は、manmaの家族留学で、大学生の男女と社会人の方を何度か受け入れました。共働き家庭の一事例を知っていただけるのは、いいことかなと思ったんです。育休中も無理のない範囲で、社会とつながっていたいなと思っています。

越智:外に目を向けるきっかけを、どうやって見つけられたのでしょうか。何かしたい、でも、子育てが忙しい、と葛藤したまま引きこもる人もいると思うんですけど。

AF:私も娘も、家にいるより外出するほうが好きなタイプなので、留学する前から、ヨガ、フラダンス、料理教室、パン教室などあちこち出かけていきました。赤ちゃん連れで行動するのは大変なのですが、思い切って行ってみると、達成感を味わえる。育児を言い訳にせず、自分が「やりたい」と思ったことに挑戦するのって大事だな、と思いました。

越智:小さいステップを積み重ねて、留学に至ったのですね。実際、新しいことにチャレンジしてみて、よかったことを教えてください。

AS:NPOでボランティアをして感じたのは、自分の職場への感謝の思いですね。ずっと同じ会社に勤めてきたこともあって、同僚とはあうんの呼吸で通じ合っていました。それは恵まれた環境だったんだなと。実は第1子の育休明け以降、社内で年下世代と仕事をする機会が増え、コミュニケーションに課題を感じる場面が増えてきたんです。まずは、自分の意思をきちんと言葉で伝えられるようにしないといけないなと思いました。ボランティア先のNPOでは高校生との接点が多いのですが、彼らの考えに触れる中で、「こういうふうに言えば伝わるんだ」「ここが分からないから困っていたんだ」と、客観的に見られる機会を得たことは、今後の仕事にも役立つ気がします。最初は「復職のリハビリに」というくらいの軽い気持ちだったのですが、思った以上に収穫がありました。

あとは、子どもから離れる時間ができて、帰った時に笑顔で接することができるのもいいなと思っています。家でずっと子どもといると、どうしても煮詰まってしまうというか。

AF:たった17日間の留学で、こんなに「聞く」「話す」能力って上がるのかと(笑)。留学した翌日から「間違ってもいいから話そう」と決めたら、話すのが怖くなくなりました。会社で英語イベントの企画をつくっていたのですが、内容をネイティブの人にチェックしてもらう時には通訳の方に間に入ってもらっていました。今後は自分で直接話してみたいと思います。また、留学はちょうどクリスマスの時期だったので、キリスト教文化におけるクリスマスの意義や祝い方を目の当たりにしたことも勉強になりました。フィリピンの育児文化に触れられたのもよかったです。とにかくフレンドリーで、離乳食を食べなくて困っていたら、「これいる?」と食べ物を持ってきてくれたりして。赤ちゃんが泣いていても皆、おおらか。日本だと、赤ちゃんと電車に乗るだけで緊張したり、肩身の狭い思いをしたりするけれど、そこまで気に病まなくてもいいのでは、と感じました。

CSさん

CS:私はお二人のように外に出て何かをする、というのではなく、自宅に外の方をお招きする、ということしかしていないので、ちょっと違うかもしれません。とはいえ、本業がインテリア関係なので、「子どものいる家にお客様を招く際に、必要な段取りや心構え」といったことを、実体験で知ることができたのは大きな収穫でした。働いていると、会社と家の往復だけで、人間関係も固定的。育休中にそれ以外のつながりを持てたことは本当によかったです。育休はあとまだ1年あるので、平日にしか行けない他社のインテリアショップなどにも足を運んでみたい。この期間をブランクにせず、強みに変えていかないと、と思っています。とはいえ、子どもが2人いると生きていくだけで大変なので、「何かできたらラッキー」という気分で取り組めたら。2人目でようやくそう思えるようになった気がします。

越智:お話を伺っていて、育休は単なる休みではなく、勉強やチャレンジができるポジティブな期間としてとらえていらっしゃるように感じました。

AS:いま、育休中の人たちは、そもそもブランクだと思っていない気がします。キャリアだけを考えると停滞かもしれませんが、人生全体を考えれば1年休んだってたいしたことない。育休中は、いろんなことに挑戦できる時期だとは思いますが、だからといって、「そうしなくちゃダメ」というプレッシャーを感じてしまうと、ママたちは苦しくなる。そういう風潮にはしたくないです。子育ては本当に大事で大変な仕事だから。これから育休を取る可能性のある人には、「育休を取ったら、育児は最低限やらなきゃいけないけど、自分がやりたいことも見失わないでね」と伝えたい。

CS:産後、体調がままならない人もいますよね。実家にこもってしまったり。本来、産休はママの体調を元に戻すための期間ですし、健康で、気力が充実していてこそ、育児以外のことにも目が向いて、挑戦できるようになると思うんです。あとは、子連れで外出する時のハードルが下がると、もっと多くのママたちが救われる気がしますね。

AF:移動は一苦労です。とはいえ、私は閉じこもっていると気分が落ち込むので、自転車や、タクシーの1メーターで行ける範囲内の子連れ外出をよくします。初めての育休を取った5年前と比べると、子連れで行けるイベントが増えました。そういったものに参加するだけでも視野が広がり、母としての自分を楽しもうというきっかけになりましたね。

越智:育休中、様々なことにチャレンジした結果、ご自身だけでなく、ご家族にとってよかったことは何でしょうか。

AF:長女も留学は楽しかったようで、毎日自然に英語で話していました。日本にいるときは下の子の世話が忙しく、長女のためだけの時間がなかなか持てなかったのですが、セブでは次女の世話をシッターさんに任せることができたので、長女としっかり向き合う時間が取れました。

越智:ママが仕事で一歩踏み出すとき、家のことをどうするかは気になりますよね。

AF:留学先でシッターさんにお世話になって、日本でも家事サービスを試してみました。夫も週末はしっかり寝て、疲れを取りたいようなので、家事分担でケンカになるくらいなら、窓ふきとか、手の回らないところは外の方にお願いしようと。ちょうど、その家事サービス会社にはフィリピン人の方が登録されていたので、来ていただいて。「セブに行ってきたんです」って話をしたりして。

CS:私は夜、たまに夫と外出したいなと思うんですが、さすがに夜に子どもたちを預けるのは、自分の中でもまだハードルが高いところがあります。普段から顔なじみのシッターさんがいれば別なのかもしれませんが…。

AS:確かに。夜預けるとなると、実家の親しかいないなって思っちゃいますね。

越智:復帰に向けては、パートナーの協力も大事だと思います。勤務先の、男性社員の育休取得などはどのような状況ですか?

AS:第1子の時に夫が半年育休を取ったら、相当珍しがられました。いまは少し増えてきましたが、長期で取る人は少ないですね。前例がないことにとらわれているみたいです。ブランクができると昇進できないと思っている。女性で育休から復帰した人たちはキャリアアップしているんですけどね。男性が変わらないと、女性も変われない。

AF:うちの職場の若手男子は育休を取る人が増えていますが、期間は上司次第という感じがします。

CS:若手男子は子どもとかかわりたいと思う人が増えている印象があります。でも、実際は「育休をこの状況で取っていいの?」という不安があるように見えます。

越智:最後にメッセージをお願いします。

AF:育休ほど長い時間、自分を見つめ直せる機会はなかなかないので、状況が許せば、いろんなことにチャレンジしてみたらいいなと思います。また、育休の人向けのそういった機会やサービスが増えていけばいいなと思います。実は、最初の育休からの復帰後は、仕事にやりがいを感じつつも相当ハードで、上司にもよく怒られて、つい、「楽な仕事に逃げたい」と思う場面もあったんです。でも今は、仕事で大変なことに遭遇しても、果敢にチャレンジする気持ちを忘れないでいようと思います。

CS:メディアに出てくる「両立のロールモデル」って、ガンダムみたいで非現実的な感じがするんです。肩の力を抜いて、普通に楽しく生きていれば、それでいいんじゃないかなと。育児と家事が好きな人はそれを頑張り、外に出るのが好きな人はそれを楽しむ。みんなが自然体で育休から復帰できるようになったら、今後、介護で休業する人が増える時代になっても、職場も心の準備ができるようになっているんじゃないかなと思います。

AS:「育児があるから●●できない」ではなく、やり方さえ考えれば、仕事でも趣味でも、諦めないで済むのではないかなと思います。それを実現するためにも、周りとのコミュニケーションを上手に取ることが大事。やりたいことがあるなら、やる前提で組み立ててみる。子育ても含めた人生を俯瞰(ふ・かん)しながら、できることをしていけるといいなと思います。

後列左から越智さん、CSさん、ASさん、AFさん
前列左から金子さん、新居さん、近藤さん

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