DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2017/12/12

朝日新聞DIALOGセッション「働き方改革と女子大生のキャリア選択 ~仕事と子育ての両立が前提となる社会の中で~」 パネルディスカッション

朝日新聞DIALOG編集部

基調講演に続くパネルディスカッションでは、今年就活を終え、来春から社会人になる女子学生3人が登壇。どのような軸を持って就活に臨んだかを振り返って語りました。講演に引き続き、ジャーナリストの白河桃子さんがコメンテーターとして参加し、モデレーターは「manma」の新居日南恵(におり・ひなえ)代表が務めました。

登壇した学生のプロフィルはこちら。

安野早紀子(やすの・さきこ)さん(京都大4年)
社会的なミッションを持ち、事業を通じて社会を変えることに貢献していると感じられること、また、仕事以外にもインプットの時間を持てるような働き方ができることを重視して、病児保育事業などを手がける認定NPO 法人に就職予定。親になること、家族を持つことに不安のない社会を理想と考え、学生時代はスウェーデンに留学。

浅川氣子(あさかわ・きこ)さん(一橋大4年)
消費者向けのマーケティングに携わりたいと思い、20代からマーケティングに関われる外資系企業に興味を持つ。さらに、年次にとらわれず、自由に発言できる社内風土があるか、柔軟な働き方ができるか、女性のキャリアアップを支援しているかどうかなどを考慮し、外資系メーカーに就職予定。仕事と子育ての両立に関心があり、学生時代はスウェーデンに留学。

越智未空(おち・みそら)さん(法政大4年)
「母親のキャリア支援」というテーマに関心がある。現在活動中の「manma」の事業を副業として続けることができ、かつ、将来自分が出産したとしても、仕事はほどほどの「マミートラック」的な働き方を迫られないことなどを考慮して、人材系企業に就職予定。

新居:慶応の大学院1年の新居と申します。代表を務めるmanmaでは「家族留学」といって、大学生を共働き家庭に派遣して、仕事と家庭の両立生活を実際に見てもらうという取り組みをしております。今日は、大学生がどういう意識で就職活動をしているのかをご紹介できればと思っています。パネリストの皆さんは、中高生の時に東日本大震災を経験したことも影響しているのか、社会課題への関心が高いことが世代的な特徴なのかなと思いました。就職も、終身雇用ではなく転職が前提だったり、副業ができるかどうかだったり、短期的にキャリアを積めるかどうかという意識も強いですね。

白河:皆さんからは「早く成長したい」という意欲をすごく感じます。日本企業ですと「45歳くらいまでは修業期」という年功序列的な考え方がありますが、若い世代が求める成長スピードに、もう合わないのではと思いました。あと、皆さんの多くが「働きながら子育てをしたい」と思っているけど、自身のお母さん世代には「解」がない。お母さん世代の働いている女性たちは、子どもがいないか、結婚しなかった人が多いですよね。

新居:manmaにも、「母親が専業主婦で、身近に両立のロールモデルがいない」という不安感を持って来る学生が多いんです。皆さんは就活のとき、両立のしやすさや柔軟な働き方をどのくらい意識したんでしょうか。

浅川:企業のサイトには両立支援制度がよく載っていますが、実際にどれだけ使われているかは社員に聞いてみないと分からないと思いました。このため、OG訪問では女性社員にお話を伺うようにしました。採用前、内定先の企業で長期インターンをしていた時、上司がたまたま、フレックス勤務をしている子育て中の女性マネジャーだったんです。朝、子どもを保育園に預けて10時に出社し、5時に退社。夜、子どもを寝かしつけた後、自宅からリモートで仕事をしていました。そういう姿を目の当たりにして、私も両立できそうだなと思えたことは、すごくいい経験でした。

安野:就活の時期は留学中で海外にいたので、企業のサイトを見ていました。帰国後は、興味を持った企業のダイバーシティーの担当者に実際に会って、お話を伺いました。両立も、子育てだけではなく、介護などいろいろな事情があるときに、どれくらいフレキシブルに働けるのかということを意識して聞くようにしました。

越智:私も両立は意識していました。OG訪問の相手が、育休から復帰して管理職になった女性だったんです。育休を取ってもマミートラックというわけじゃないんだということが分かってよかったです。

新居:皆さん、実際に両立している社員の方に会ったというのがポイントになったようですね。manmaが大学生100人に調査をしたところ、OG訪問で「両立している女性社員」に会えた学生は5人しかいなかった、という結果が出たんですね。これだけ、働き方改革や女性活躍が世の中の話題になっているのに、実際にはそういう社員になかなか会えないのはなぜなのか。

越智:入社2、3年目の先輩を訪問することが多いと思うのですが、私はその年次の先輩に、さらに年上の同僚を紹介してもらうようにしていました。

白河:私は「30歳前後の人に聞くといい」とアドバイスしています。その人自身が両立している可能性もあるし、周りにそういう人が増えてくる年齢でもあるので。ある学生が言っていて、うまい聞き方だなと思ったのは「子どもができた後の方ってどんな雰囲気ですか?」って。つらそうだとか、楽しそうに働いているのか、とか。

新居:雰囲気が伝わってきますよね。でも、なぜ皆さん、就活する時から両立をここまで意識したんでしょうか。

浅川:母は専業主婦で、周りにロールモデルがいなかったことが大きかったと思います。

越智:父がずっと単身赴任と長時間労働をしているようなタイプで、ずっと家にいない。こういうのはいやだなと。高校生の時に、過労死とかうつといった、働き方に関する様々なニュースを見聞きしたことも影響したと思います。

安野:両親は共働きなんですが、母は仕事も家事も両方やる感じで。大変そうで、いつか母が倒れるんじゃないかと心配しながら受験勉強していたんですね。協力し、支え合える家庭を持ちたいと思って、そういうところを重視した就活をしていました。

新居:とはいえ、両立って少し先の未来だと思うんです。それを、就活の時点から意識していたのはなぜですか?

越智:私自身は5年スパンでファーストキャリアを考えているので、実際に子どもを持つときに、来春就職する会社にいるかどうかは分からないのですが、その会社は評価基準が労働時間の長さではなく、時間当たりの成果なんです。だとすれば、子どもがいないうちから、短期間で、どんどん成果を出していけば、早く成長できるのではないかと考えました。

浅川:私は長く働いて両立したいと思っていたので、それができる会社かどうかをよく見極めたいと考えていました。

安野:3年くらいのスパンで、ファーストキャリアを選びました。25歳くらいで最初の子どもを持てたらいいなと。両立できる環境があるというのは、生きたいように生きられる、働きたいように働けるということかなと思ったので、そういう観点で選びました。

白河:「最初の会社で10年修業して」とは考えないんですね。女性の場合は、ライフイベントを考えると、さらに早回しに成長したいという思いがある。

新居:短期的なスパンでキャリア形成を考える背景には、テクノロジーの進歩とか、グローバル化とか、社会の変化がすごく速いことも影響していると思うのですが、いかがでしょうか。

越智:テクノロジーの進化は気になります。よく、「5年後には今ある仕事の60%がなくなる」などと言われているので、「5年以上先の社会は見えないんじゃないか」ということを考えましたね。

安野:変化が大きい社会では、「自分にしかできないことをつくる」ことが大事なのかなと思いました。どんな場所でも働ける自分をつくりたいと考えていました。

新居:皆さんたくましいですよね。今ある仕事がなくなったとしても、スキルを身につけながらチャレンジを繰り返していく。そういう指向性が女性を中心に出てきているなと感じています。

白河:お話を聞いていて、企業の経営者がミッションやビジョンがすごく大事だとおっしゃる理由が分かる気がしました。先々どうなるか、経営者自身も分からない。確約できない。じゃあ何を信じてもらうかというと、その企業のミッション、ビジョンを信じて、共有してもらうしかない。以前、マサチューセッツ工科大学(MIT)のメディアラボ出身の石戸奈々子さんに、未来予測をしてもらおうと、講演にお招きしたことがありました。でも、「もう未来は予測できない。つくっていくものなんだ」とおっしゃっていたのが、大変印象的でした。キャリアもしかりで、これだけ変化が大きい社会では、先々を予測して、がちがちに固めるキャリアはもう不可能。偶発的なことに乗っていけるように無意識的に準備していく、それが普通になっていくのかもしれません。

新居:時代の変化を察知し、それぞれの判断基準を持ちながら就活していったのかなと思います。白河さんが考える、これからの若者が就活や仕事をする上でのポイントって何でしょうか。

白河:働き方も暮らし方も「脱・昭和」の方向に向かっていますよね。そうしないと新しい時代のビジネスができないと思うので。流れを受け入れて、そっちの方向に向かっている会社かどうかがポイントになると思います。意外にも老舗の企業が頑張っていたりして。危機感を持っている人は変わろうとしているんですよね。でも、大きな企業は「まだ大丈夫だよね」となかなか変われない。

日本の企業は45歳以上の男性で構成されているところがほとんどなんです。働き方改革の裏テーマは「おじさん改革」だと思う。生き生きと働いているおじさんが多い会社は、たとえ老舗でも良い会社じゃないかなと。逆に、あまり抵抗勢力がいない、若い人の多い会社に行くという選択もあるでしょうし。

幸せな社員が良い成果を出す、といった方向に向かっていくと思うんですよね。日立がAIでチームの幸福度を測った際に、チームの幸福度が高いと成果も高い、という結果が出ました。Win-Winを目指そうとしているところ、経営者がメッセージを発信している会社は注目に値します。就活サイトばかり見ていると、こういう企業はなかなか見つけられないので、「働き方改革」といったワードでも検索してほしいですね。社長も忙しいので、こういうテーマでわざわざインタビュー動画などをサイトに載せている場合は、発信したい強いメッセージがあるんだと受け止めて、ぜひ見てほしいと思います。

新居:家族留学で伺うご家庭って、すごく仕事を頑張っていて、夫婦のコミュニケーションもある。でも、活躍している女性でも、家では全部一人でやっている、みたいなケースも少なくないんですよね。

浅川:長期インターンのときの女性上司が「育児や家事に積極的な相手を選ぶことが大事」と言っていたのは印象的でした。

越智:OB訪問で、パパの方からお話を伺う機会がありました。社内結婚で、お子さんの保活中でした。来年、保育園に入れなかったら、夫婦どちらかが育休を延長するとおっしゃっていて、女性だけが家事や育児をするという意識とは違った価値観を持つ男性がいることが分かったのはよかったです。

白河:男子学生に授業をすると、最初は両立の観念はゼロなんですね。でも、「奥さんの働き方で家計が変わるよ」と言って、ファイナンシャルプランナーが作った表を見せると、顔色が変わるんです。家計的な損失が1億円から2億7千万円と知ると、ハッとなる。ただ、彼らの仕事観は「滅私奉公」。共働きしていくって大事なんだな。でも、自分も家事や育児をしなきゃいけないとなると、仕事がおろそかになる。じゃあ、今の彼女と結婚しないほうがいいんじゃないか、とか悩んでいる男子学生は、結構多いと思います。いやいや、そうじゃないよ、その仕事観を変えていこうよ、という話なんですけど。

新居:男性の友人で、新入社員のときから定時で帰る人がいます。そうしておけば、子育ても介護も乗り切れるという考え方なんですね。では、最後に、未来の働き方についての希望を聞かせてください。

越智:自分の展望としては、いずれは大学院に行きたいなと。「働く」と「学ぶ」と「子育て」が融合したら面白いなと考えています。社会の展望としては、たとえば5年後、仕事と家庭の両立なんて当たり前になっていて、いちいちOB・OG訪問で「両立できますか」などと尋ねなくてもいいようになってほしいと思います。

浅川:人の心を動かす「ものづくり」に関わりたいです。結婚や出産といったライフイベントごとに、気づきや視点も変わっていくでしょう。私たちの世代が変わっていけば、下の世代は意識せずに仕事を選べるようになると思っています。

安野:今は男性の生き方に注目していて、お父さんになるためのサポートをしていきたいです。官公民で連携できるやり方を模索していきたいと思っています。

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