2017/12/26

「男子のホンネ座談会」【後編】「家族が大事、だからこそ……」。働きたい女性のみなさん。バリキャリ男子のホンネ、知っていますか?

古野香織(POTETO)、呉本謙勝(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部

〈司会〉中央大学4年 古野香織(POTETO)
〈構成・執筆〉慶應義塾大学4年 呉本謙勝(POTETO)×朝日新聞DIALOG編集部

結婚しても、出産しても、働き続けたい大学4年の私・古野が、同世代の男子たちにライフ論やキャリア観を尋ねるホンネ座談会、【後編】のスタートです。

前編では、「仕事優先? 家庭優先?」「どんな人を彼女にしたい?」「共働きについてどう思う?」といったトピックをどんどん投げかけてみた。そこで見えてきたのは、理想を追い求める難しさや、家庭を大事にするからこそ生じる、葛藤の数々だった。
前回のダイジェストは以下の通りである。

次はどんな「男子のホンネ」が聞けるのだろうか。

キャリア志向型の女性って?

司会:じゃあ共働きするとして、キャリア志向の女性はどう?

パトリック:ぼくはまぁ、奥さんには家にいてほしい派なので、キャリア志向型の女性は選ばないと思います。そもそも、ここでの「キャリア」って、一般的に男性が歩んできたキャリアのことじゃないですか。そこが問題の本質であって、男性型のキャリア志向のレールに女性を乗っけようとしているから、ミスマッチが起こっているんじゃないですかね。男女は平等だけど、違いはある。だからこそ、違いに合わせたキャリア志向型を模索すればいいと思います。

ハカセ:でも、いま問題になっているのは、女性が男性型のキャリア志向を目指そうとしたとき、それを認めるかどうかってことですよね。つまりは、女性の選ぶ権利の問題。

パトリック:いや、おそらく問題は、仕事をしたいと思っている女性にとって「男性型キャリア」しか選択肢がないことだと思います。だから、「女性型キャリア」を考えていかないといけないんじゃないですかね。

イッセイ:結局、悩むときって、子どもができたタイミングじゃないですか。僕も長谷部くんも、ずっとお母さんが家にいて、それがすごく助かったとお互い、感じていると思うんですけど……。そんな長谷部くんに質問です。

長谷部:いきなりだな(笑)。

イッセイ:仮にお母さんが働き出すとして、どのタイミングならお母さんが家にいなくても大丈夫だった?

長谷部:大学、かなぁ…

イッセイ:ですよね! それくらいいきますよね。

長谷部:高校くらいまでは、いてもらわないと無理だった。正直。

イッセイ:僕も高校生まではいてくれないときつかった。家庭を持つにあたって、やっぱりまだ正解がないのかなって思ってて。キャリア志向型の女性がいっぱい出てきたという現状に、制度のほうが追いついてないのかなぁと。たとえば、育休がどれくらい必要かっていうのは、人によって全然意見が違いますよね。育休制度は素晴らしいと思うけど、自分が思い描く家庭にはならないような気がする。だから、キャリア志向型パートナーとは、子どもができたときにケンカしそう……。

長谷部:じゃあ、そうじゃない人と結婚するってことだね。

イッセイ:まぁ、それが理想です。

商社1年目が見た、ママさん社員の悲しい現実

ハカセ:現状をあまり知らないんですけど、今の制度は不十分なんですか? 一応、公的には「育休制度」というものがあって、それをどんどん利用していいよっていう社会の風向きもあるのかなとは思ってるんですけど……。

長谷部:それがいろいろと複雑で…。いま職場の同じ課に2歳のお子さんがいるママ社員の方がいて、隣の課にも同じく2歳児のママ社員さんがいました。会社の制度を使って時短勤務(11~17時)で働いています。とても意欲的で、「子育ても仕事もやってやるんだ」っていう気概に溢れています。短時間で結果を出して、家では子育てと家事。総合商社の総合職の女性は、みんな本気で子育ても仕事もしていると思います。でも、会社としては認めていても、個々の社員レベルでの理解度は低くて、それを認めないオッサンが、たくさんいるのが現実です。時短勤務というのは仕事をユルくするわけではないから、仕事が残っているのに「子育てのために帰ります」という論理を、認められない同僚や上司もいる。結局、周りからの圧力がすごすぎて、隣の課のママ社員さんは辞めてしまいました。「仕事終わってねえだろ。それなのに帰るのかよ」って職場で詰められすぎて、耐えきれずに。でも、それを見て心を痛めているのは、自分が新人だからなのかもしれないっていう思いもあって。正直なところ、オッサンたちの意見も分からないでもないかなぁと……。

ハカセ:まぁ、今までそういう形で働く人が少なかったから、制度として不十分なのは仕方ない。これから修正していけばいいんじゃないですかね。

長谷部:こういうのって、やっぱり時間が大事なのかなって思います。結局、どれだけ素晴らしい社会の潮流でも、すぐに変えられることでは多分なくて。だから、時間が結局は必要なんだと思います。

パトリック:でも、僕はこういう話をしていると、いつから「今までの制度がダメ」になってしまったのかなって思ってしまいます。今までの「男が仕事、女が家事・育児」という形は、効率の観点から言えば十分に機能してきましたよね。確かに、女性活躍推進の流れが出てきたので、「女性を家に閉じ込めていてはいけない」という論理は分かりますが、だったら、「女が仕事、男が家事・育児」という形でもいいじゃないですか。でも、どうして専業主夫が浸透しないのかを考えると、やっぱりそれは社会が男性に対して「男は働くべきだ」という期待を強いているからだと思います。女性への期待値は変化しているのに、男性への期待値は変わらないまま。本当に男女平等を唱えるんだったら、そのあたりまでしっかり踏み込んで考えるべきだと思います。

家事労働はどれくらい負担する?

司会:結婚したら、家事はどれくらいしますか? 育休は取りたい?

ハカセ:一人暮らしが長いので家事は普通にできますし、やります。適度に分業できたらいいかな。育休は取りたいです。まあ、研究職だと在宅でできることもかなり多いので、その辺は臨機応変にできるのかなぁと。

パトリック:育休は、取れるのなら取りたいです。でも、それで出世や立場に支障が出るのなら考えます。家事も同じで、できるけど、本当に仕事次第。お互いの時間のあり方の問題で、余裕のあるほうが家事をすればいいのでは。そもそも、家事労働でもめていたら、夫婦としてやっていけなくないですか?

イッセイ:育休は取りたい。家事労働は、奥さんが家庭にいるんだったら、結構な割合を任せたいです。でも、子どもができたら、自分にしかできないことも出てくると思っていて。例えば、家族を土日にどこかへ連れて行ってあげるとか。そういうところで分業できたらいいかな、と思っています。

長谷部:これは少し怒られてしまいそうですけど……。家事労働はあまり積極的には考えてないです。いま、働き始めて、めちゃめちゃ忙しい。正直、ワーク・ライフ・バランスは1年目では1ミリも感じないなぁっていうのが実感です。もちろん休日はできる限りの貢献はしたいけど、平日に家事をするのは絶対無理だなぁ、と……。朝6時に起きて、7時半には会社に行って死ぬほど働いて、残業もして、といった毎日。確かに夜8時退社はさせられるけど、仕事がなくなったわけじゃないので、家に帰ってまた仕事をしているのが現実です。異常に忙しい日々の中で「ふぅ」って一息つけるのは、正直30分もないかもしれない。この30分を家事に奪われてしまったら、多分死んでしまいます。今は社員寮で、寮母さんがご飯や洗濯も全部やってくれるんだけど、そうじゃないと無理なくらいの環境なので。本当に助けてほしい。そういった意味で、家事労働は想像ができないです。
育休は取りたいけど取らない。もちろん、育休を取りながら仕事ができるのが理想だとは考えています。でも、それが何となく難しいんじゃないかなって、周りのおじさんたちを見ていて感じます…。やっぱり男で育休を取っている人がいないんですよね。特に僕は、働きながら「生きがい」を見つけたいと考えているので、何か大きなことを仕事で成し遂げるためにも、できる限り仕事にコミットしていたい。そういった点で、育休制度には賛成だけど、僕は取らないと思います。

座談会を終えて

「これを読んで、血圧が30くらい上がりました」

当企画を監修してくださった担当の女性記者の方から、最初にいただいたコメントだ。

「ついに、“パンドラの箱”を開けてしまったのかもしれない……」とヒヤリとしたが、だからこそ、この座談会の模様を世に出す意味があるのではないかと思い直した。
本記事を読んで、血圧が上がってしまった方がいたらお詫び申し上げたい。

私・古野は22年間、共働き家庭で育った経験から、男でも女でも「好きな仕事をずっと続けられる」ことが当たり前だと思っていた。
だが、私のような「働きたい系女子」への風当たりは、どうやらまだまだ厳しいらしい。「仕事も結婚も子育ても、なんとなくうまくいくだろう」という見立ては完全に甘かった、と猛省した。

「男子のホンネ」を聞いてみて、一つ言えることは、「男子たちは多くの矛盾を抱えながら、自分も家族も幸せになれる方法を探し続けている」ということかもしれない。

男性側が育休を取らないから、仕事を優先するからといって、まったく家族のことを考えていないのではない。むしろその逆だった。
未来のパートナーや、子どもとの生活を考えているからこそ、「女性活躍」の風潮を疑問視したり、不安になってしまったり…

「女性にとって働きやすい企業も、制度も、もちろん重要。だが、最終的に、パートナーの理解がなければ『女性活躍』は実現し得ない」。少子化問題に詳しいジャーナリストの白河桃子さんの言葉が、急に現実味を帯びたものとなって降りかかってきた。

でも、挑戦はこれからだ。

数値や制度面の変化といったわかりやすい結果だけを求めるのではなく、こういった男性側の「ホンネ」もちゃんと引っ張り出して、「働き方改革」について根本から議論を深めていく必要がある。改めて、強くそう思った。

司会…古野香織/中央大学法学部4年。 大学2年生のときに中央大学の有志サークル「Vote at Chuo!!」を立ち上げ、大学内での選挙啓発や附属高校での主権者教育を行う。「生の政治」を扱った主権者教育・教科教育内での主権者教育実践などに関心あり。2018年度から東京学芸大学大学院 教育学研究科に進学予定。

構成・執筆…呉本謙勝/慶應義塾大学法学部政治学科4年。専攻は国際関係論で、ワシントンDC留学中は米大学院で学生研究員を務めた。現地テレビ局でトランプ政権の報道に従事した経験からメディアの情報発信方法に興味を抱き、帰国後POTETOに参加。

pagetop