2018/02/09

【日本の未来を語ろう in school vol.1】テクノロジーで政治を可視化、投票の「質」向上も目指す
NPO法人Mielkaの選挙の授業@東京都立高島高校

古野香織(POTETO Media)with 朝日新聞DIALOG編集部

新企画「日本の未来を語ろう in school」がスタートします

朝日新聞DIALOGは、2030年の日本がどのような社会になるのかを考え、そうした2030年視点から現在の様々な社会課題について、若者を中心とした「対話の場」をつくる目的で始まりました。そしてこのたび、学校や教育現場との連携を深めるため「日本の未来を語ろうin school」という新企画を始めます。

世の中が大きく変わるなか、教育現場もまた、変革を迫られています。アクティブラーニングやプロジェクトベーストラーニングなど、子どもたちが身近な問題について考え、議論し、アクションを起こす、新しい学びが広がりつつあります。朝日新聞DIALOGは、先進的な授業や取り組みを実践している学校や教員、教育関連機関を取材し、随時発信していきます。

今回の教室は……

今回取材したのは、東京都立高島高校3年生の「政治・経済」の授業です。担当しているのは、公民科の大畑方人先生(41)。18歳選挙権の導入以前から、「主権者教育」を積極的に実践しています。授業では、企業やNPO法人、学生団体、弁護士など、数多くの団体・個人とコラボ。新学習指導要領が示す「社会に開かれた教育課程」に向け、第一線でチャレンジを続けています。

ゲストティーチャーはNPO法人「Mielka(ミエルカ)」のお二人

講師には、関西を拠点に活動している「NPO法人Mielka(ミエルカ)」から、立命館大学の東大地さん(26)と、京都大学3年の山本大地さん(20)が来校しました。

(左から山本さん、東さん)

NPO法人Mielka(ミエルカ)って?

Mielkaは関西の学生中心のNPO法人です。前身は、学生団体「ivote関西」。2016年にNPO法人格を取得しました。「中立公平」の立場から、ラボ事業や教育事業などを通じて、「若者の政治参画の促進」、中でも特に「投票率と投票の質の向上」を目指して活動しています。

どんな授業をしたの?

今回の授業は、以下の三つの内容に分かれています。

<1時間目>(50分)
1.自分の投票を振り返ってみよう!

最初のワークは、「私のモノサシ」ワークです。生徒は、自分が行った直近の選挙を振り返り、投票のときに重視したポイント▽情報収集のために何をしたか▽考えを深めるために何をしたか――などを書き出します。

ワークシートはこちら。

2.JAPAN CHOICEを使ってみよう!

JAPAN CHOICEとは?

次のワークでは、Mielkaの選挙情報サイト「JAPAN CHOICE(ジャパンチョイス)」を使います。各党の政策、選挙の争点、選挙区、候補者の情報など、選挙関連の大量の情報を一つにまとめることで、まさに「見える化」したサイトです。2017年10月の衆議院解散・総選挙の時期に公開され、「見やすく、オシャレ」なことで話題を呼びました。

膨大な量の情報が一気に報じられ、錯綜する選挙期間だからこそ、「有権者が頑張って情報収集をしなくてもいいサイト」を目指したとか。Mielkaが若者をメインターゲットに据えていることからも、このコンセプトは納得です。

生徒の皆さんからの反応は?

生徒は自分のスマホから「JAPAN CHOICE」のサイトにアクセス。まずは自由に操作してもらいます。スマホのない生徒は、学校のノートパソコンからアクセス。その後、班のメンバーで分担してこちらのシートを埋めていきます。

① サイトの項目ごとに担当者を決める

マップ、政策比較、投票ナビ、記事、選挙カレンダーの五つの中から、1人1項目を担当します。

② 項目に載っている情報や、その情報がサイト内でどのように表示されているかを調べる

例えばサイト内の「マップ」にある日本地図から自分の住んでいる区を探してクリックすると、選挙区の候補者情報が表示されます。これらの内容をワークシートに記入していきます。

③ 調べた結果や使ってみた感想を、班のメンバーで共有する

実際に使ってみて、「ここがわかりやすい!」「ここが使いづらかった」という部分などを、班で共有します。

ある男子生徒は、「『道州制に賛成ですか?』という質問があったけれど、そもそも『道州制』という言葉が高校生には難解」と指摘しました。これを聞いたMielkaメンバーは、「高校生にはハードルが高い質問項目があった」ことを再認識。このように、授業が利用者、制作者双方にとって気づきや学びの場になっていきました。

<2時間目>(50分)
3.友達が投票するときに役立つサービスを考えてみよう!

ここからがいよいよ本番。ワークで考えたり話し合ったりしたことをもとに、「政治の授業を履修していない高校生」向けの、投票に役立つ新サービスを考えてもらいます。

実はJAPAN CHOICEは、「普段から政治にある程度、関心のある人」向けに作られたサイト。でも、そうではない有権者も多いなか、政治にあまり詳しくない高校生にターゲットを絞り、どんなサービスがあれば投票の「質」が向上するのかなどについて意見を出し合い、最後にクラス全体へ発表してもらうことになりました。

グループでアイデア出し

生徒には、
① 選挙・投票に関する情報を洗い出す
② 政治を履修していない高校生に必要な情報を選び出す
③ 選んだ情報の伝え方を考える
④ サービスを使ってもらうにはどうしたらよいかを考える
という手順で考えるように指示。

行き詰まっているグループには、大畑先生やMielkaメンバーが声をかけ、みんなのアイデアを少しずつ形にしていきます。

全体へ発表!

各グループからは、以下のような案が出ました。

・若い世代や他の世代に関連している政策をまとめて動画にしたものをYouTubeで公開し、芸能人に拡散してもらう
・ツイッターやインスタグラムなどで、政治家の評価がわかるようにする
・政治のゲームを開発する
・特設サイト上に日本の課題をピックアップし、その課題に熱心に取り組んでいる政治家や所属政党などを明記し、政策ベースで候補者や政党を選べるようにする。また、そのサイトのアクセスを伸ばすため、高校生がよく使うSNSを連携させる
・「若者のための政策」を掲げている政治家をリストにしてサイトにまとめる。それぞれの政治家のページに飛ぶと、詳しい政策内容や経歴などが調べられる仕組みにする
・人気YouTuberに、政治や選挙のことをわかりやすく伝える動画を作ってもらい、発信してもらう。その動画を高校の授業で使ってもらうなどして波及させる
・大ヒットしたゲーム「どうぶつの森」などに、消費税など「現実社会のシステム」を取り入れる。それによって、小さい頃から税金や政治の仕組みについて慣れ親しんでもらう

SNSやYouTuberの活用など、「高校生ならでは!」といった提案が多く飛び出しましたが、その一方で、戦略はかなり現実的という印象でした。次の選挙からさっそく実現化できそうなアイデアも。

この授業で伝えたかったこと

授業の終わりに、Mielkaの2人は「みなさんに考えてもらったサービスは、投票の量(=投票率)ではなく、『質』を高めることが目的です」と語りかけました。投票の質を高めるとは、多くの情報を比較し、自分の頭で考えて判断をすること。それは選挙に限らず、これからの社会で生きていく上で、欠かせない能力でもあります。「政治に関心のあるみなさんが、そうではない周りの友達も巻き込んで、ぜひMielkaと一緒に『若者の政治参画の促進』の担い手となってほしい」。2人はそう語って、授業を締めくくりました。

次回のテーマは…

【日本の未来を語ろう in school vol.2】では、
「もし、チア部に男子が入りたいと言ってきたら……」。2018年1月に東京都立高島高校でPOTETO Mediaが実施した、「ジェンダー平等」を考える授業をリポートします。

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