2018/01/15

おこげから豚肉のショウガ焼きまで…… 「防災食」を食べ比べてみた!

呉本謙勝(POTETO)with 朝日新聞DIALOG編集部

「非常食」と聞いて、どんなことを連想しますか?

マズそう? パサパサしてそう?
もしかすると「カンパンと水」みたいな、おいしさや彩りは度外視した、空腹を最低限満たすための食べ物、といった印象かもしれません。

実はいまの非常食、調べてみると、僕らのイメージとはかけ離れて、めっちゃ進歩していました。「非常食 おいしい」で検索すると、いろんな非常食が出てくる出てくる。

しかし、ここで芽生えるのが「でもこれ、ほんとにおいしいの?」というギモン。本当においしければ、災害用に限らず、日常のストック食材としても使えます。食品メーカーの公式サイトなどによると、備蓄食料として大活躍する袋めんでも、賞味期限は約8カ月、カップめんでも約6カ月程度とのこと。ゆえに、賞味期限が3年以上ある非常食が自宅にあれば、かなり助かること間違いなしです。

今回は、非常食の中でも「防災食」というジャンルに絞り、「ほんとにおいしいのか」を確かめるべく、料理のプロを交えて試食会を行いました!

防災食とは?

防災食って、ご存じでしょうか。
栄養バランスや食べやすさなどに配慮し、非常時でも普段に近い食生活ができるように工夫された、インスタント食品です。バリエーションが豊かな点が特徴で、例えばカレーやさばの味噌煮、ぜんざい、おでん、野菜ジュース、そしてチョコレートケーキなど。メインディッシュやご飯ものだけでなく、飲み物やデザートまで幅広くあります。

そしてもちろん、防災食は、非常時で社会インフラが機能しなくなる事態を想定しているため、常温で長期保存ができ、基本的にはそのままか、水を加えるだけで食べられます。レトルト食品との違いは、防災食には保存料が入っていること。微生物の増殖を抑制するための食品添加物である保存料は、実はレトルト食品には入っていないのだそうです。

2人のプロによるレビュー

防災食はプロやツウの目にどう映るのかを検証するため、以下のお二方に試食会に参加していただきました!

①柳谷晃子さん【料理のプロ】
料理研究家。日仏両国の料理技術を学んだのち、イタリアへ料理留学。トスカーナ州ルッカでリストランテを経営するマンマのもとで修業し、イタリア文化に触発される。料理教室やケータリングを通じて、心を元気にする食のあり方を提案。民俗学に造詣が深く、上智大学大学院神学研究科で「食と身体と霊性の関係」を研究中。

②武田彩さん【防災食のツウ】
関西大学社会安全学部4年。高校2年生の頃から東北の被災地支援にかかわり、大学では「防災・減災」を軸に、安心と安全について多角的に学んでいる。特に、「食」を通じた防災教育を熱心に研究中。

今回は、防災のプロを目指す武田さんに、「おすすめ防災食」を30種類以上選んでいただき、2017年12月上旬、柳谷さんがプロデュースするレストラン「もうひとつのdaidokoro」(東京都豊島区)にて試食会を開きました。

今回のラインアップはこちら。

実際に並べてみると、防災食とは思えない「ごちそうテーブル」らしきものができあがりました。

実食!

約30種類の防災食をテーブルに並べ、いざ実食。

まずは目を引くご飯ものから。
袋状のパッケージに水を注ぎ、袋の中に入っているスプーンを使ってそのまま食べることができます。しかも、水の量次第で、リゾットやおかゆにもなる優れもの。すばらしい機能性です。

そして次に目を引いたのがパスタ。これもご飯と同じく、水を加えるだけで、そのまま食べられるタイプです。それでは気になる肝心のお味は……?

料理のプロによるお味の評価はなかなか厳しいものでしたが、「非常食」としてはアリ、ということでした。

他の食品へのレビューはこんな感じでした。

いろんな防災食の中でも、武田さんのイチオシは「あんこ餅」

これはパッケージの中に水も容器も入っていて、何も用意する必要がありません。手順通りに作っていくタイプなので、避難生活の中でも遊びを求める子どもにはぴったりです。

食感は餅というより白玉のようでしたが、食べ物の少ない避難所ではホッと一息つける「いやし効果」がありそう、という意見が多く出ました。

とても評判が良かったのはこちら、おこげです。

これは調理の必要がまったくないライスクラッカーで、袋を開けてそのままボリボリ食べられます。その手軽さと香ばしい風味が好評で、試食会では皆、口直しにちょくちょく手を伸ばしていました。

逆に評判が悪かったのが、ビーフシチューとリゾットです。
ビーフシチューは何かとても大切な調味料を入れ忘れているような味で、おいしそうな見た目と、においからは、想像もつかないインパクトでした。

トマト味のリゾットは、とにかく甘い! 保存性を高めるために味を濃くしているのか、常軌を逸した甘ったるさが口に残る1品でした。

この二つは「出されても、おそらく食べきれない」「口に入れてから、『どうしよう』ってなった」という辛口のレビューを全参加者からいただきました。

料理のプロの目に、防災食はどう映る?

約30種類の防災食を試食した後、料理研究家の柳谷さんにインタビューしました。

Q率直に言ってどうでしたか?
Aおいしいかどうかで言えば、そうではないですね。非常事態ではどうかというと、私の場合は「食べるとかえって疲れるかなあ」というのが率直な感想。全体的に味が濃いため、食べた後もずっと口の中に味が残っている感覚と戦わないといけない。そこにエネルギーを使うぐらいなら、アーモンドのようなものを食べているほうが体は楽。そもそも、これだけたくさんの防災食をそろえておくことに、精神的負担を感じます。持っていると安心する人もいるだろうけど、保管しておくだけで、「食べなきゃいけない」って思うし、私にはそれがプレッシャーになる気がしますね。

そう語る柳谷さんに、あえて「おいしさ」の観点からトップ3を選んでもらいました。挙がったのは「サバイバルパン」、「おこげ」、「グリコのカレー」でした。

さらに、私たちが普段食べているもので、いざというときの非常食になり得るものはあるのでしょうか。柳谷さんに聞いてみると、意外な答えが返ってきました。

柳谷さん
私は「干し大根」の常備をお薦めしています。被災地では不足しがちな野菜を摂取できるうえ、「噛む」ことで、ストレスを緩和できるからです。腐らないし、軽いし、普段からお味噌汁の具などとしても使えますよ。

東日本大震災のとき、体に野菜が不足していると感じました。避難生活では胃腸の動きが鈍くなり、便秘になることが多いと言われます。そうなると毒素が出ず、体調も悪化します。

干し大根を食べると、腸の動きがよくなります。また、噛むことで精神的なイライラが緩和されます。人間は、ものを噛むとすごく安心するんですね。干し大根以外だと、アーモンドやクルミ、梅干しなんかもいいと思います。

しかし、この「干し大根」というジェネレーションギャップを感じる提案に、現役女子大生の武田さんは「待った」をかけました。

武田さん
若い人は、干し大根だけではさみしすぎます。非常事態では、若者や体力のある大人たちのパワーが必要になってきます。そのエネルギー源になり得るのが防災食。乾物だけでは足りません。もし自分が被災者になったとき、干し大根やナッツ、梅干しを手渡されて、「はい、今から頑張ってください」って言われたら、「あ~、私って被災者っぽい」って思います。「被災者なう」ってSNSにあげたくなるレベル(笑)。そんなときに、今日試食した防災食の、このボリュームとバリエーションがあれば、多少味はよくなくても、とても助かります。

柳谷さん
それって、その人の普段の食生活の影響が大きいかも知れませんね。例えばドライカレーなどは、食べ慣れてないと体に負担になるけど、いつも食べている人だったら「やった! ドライカレーだ!」となって元気になる。被災地でキッチンもレストランもないような時は、バリエーション豊かな防災食があると、どの世代も助かりますよね。

つまりは、こういうことかもしれません

期待に胸を膨らませて臨んだのに、「あれ? そんなにおいしくない……」となってしまった防災食試食会。しかし、防災食の存在意義は「味」ではなく「バリエーション」にあるのだと分かりました。

普段の食生活や年齢、体調によって、「食べたい」や「食べられる」の個人差は大きいもの。だからこそ、選択肢の多さが、非常時には何よりの「安らぎ」になるのかもしれません。

取材後…

保存料山盛りの防災食をたくさん試食した後は、柳谷さんがプロデュースした、とっても体に優しい自然食ランチをいただきました。

そのおいしかったこと……。レストラン「もうひとつのdaidokoro」自慢のランチは、化学物質に疲れた身体を全部解毒してくれるような感じがしました。
「食」で身体をいやしたい方は、ぜひお店へ足を運んでみてください。

「もうひとつのdaidokoro」
ホームページ:http://daidokoro.wacca.tokyo
facebook:facebook.com/daidokoro.wacca
instagram:instagram.com/daidokoro.wacca/
住所:〒170-0013 東京都豊島区東池袋 1-8-1 wacca池袋 5F

AUTHOR…呉本謙勝/1994年生まれ。大阪市出身。慶應義塾大学法学部政治学科3年。専攻は国際関係論。米国に留学し、大学院で学生研究員を務めた。現地のテレビ局でトランプ政権の報道に従事した経験から、メディアの情報発信の手法に興味を抱く。帰国後、POTETOに参加。

POTETO…「政治をわかりやすく伝える」学生のチーム。2016年末に発足し、2017年末に株式会社「POTETO Media」に法人化。「リテラシーインフラの整備」をミッションに掲げ、①日々のニュースや、様々な社会的トピックを動画やイラストで伝えるメディア事業②社会課題をテーマにした出前授業を行う教育事業③NPOや政治家など、ソーシャルな活動を行う主体の情報発信のサポート事業などを展開。

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