DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2018/02/01

「イツモ」防災

Written by 古井康介(POTETO)

1月19日、「災害イツモフォーラムTOKYO」が東京・有楽町で開催され、渥美公秀・ 大阪大学教授(ボランティア行動学)が「阪神・淡路大震災から私たちが学ぶこと」と題した講演を行った。華の金曜日の夜にもかかわらず、およそ500人の聴衆が集まった。

阪神・淡路大震災が起きた1995年は「ボランティア元年」と呼ばれる。筆者を始め、ミレニアム世代の多くはまだ生まれていない。それまでボランティアといえば、途上国への海外支援などが主流だったという。渥美教授は神戸で被災した自らの経験を踏まえ、特定非営利活動法人日本災害救助ボランティアネットワークを立ち上げ、様々な被災地支援を行なってきた。

被災地の現場で何が起こるのか、学ぶべきことは何か。阪神・淡路大震災を知らない世代にこそ知ってほしい話が、そこにはあった。

ボランティアを自己目的化しないことが大切

被災地には多くのボランティアが集まる。しかし現場では様々な課題が山積しているという。例えば、2016年4月に起きた熊本地震。現地では災害ボランティアセンターが設置された。他地域から来たボランティアを受け入れるための組織だ。このセンターでは、被災者が行政に要請したボランティア派遣の「ニーズ」に基づき、ボランティアの人々を求められた場所に割り振って派遣する。熊本地震当初は、毎日100〜200名にものぼるボランティアの人々が、センター前に列を作ったという。

そんな災害ボランティアセンターでは「ボランティアの都合」が被災者を振り回すこともあったという。多数のボランティア志願者を裁く業務はそう簡単なことではない。長い列に並ぶことにしびれを切らした志願者から、「遅い。被災者のことを考えてるのか!」といった怒号が飛ぶこともあったそうだ。とはいえ、仕事の割り振りをしている地元の行政職員は、被災者でもある。

ボランティアセンターでの人員の割り振りは、寄せられた「ニーズ」に基づいて行われる。それ故、センターに届いている「ニーズ」が満たされると、余ったボランティア志願者は帰宅を促されたという。しかし、実際に街を歩けば、できることはいくらでもあった。例えば、水を汲みに行きたいけど重くて持てないと言うおばあちゃん。犬の散歩をしてほしいと言うおじいちゃん。そんな日常のちょっとした、でも生活の根幹に関わる「ニーズ」は、いちいち行政へ要請されることもなく、結局、ボランティア志願者には届いていなかった。

「街を歩けば、ニーズに溢れています。ボランティアは、わざわざボランティアセンターに行かなくてもできる。被災者が少しでも救われることが本来の目的。そうであるならば、ボランティアをすることを自己目的化せず、マニュアルに縛られることなく臨機応変な動きをすることが大切なのです」と渥美教授は語る。

自発的に防災意識を高められる工夫を

渥美教授は「防災と言わない防災」が重要だと言う。
彼が関わる「小学生のぼうさい探検隊マップコンクール」では、全国の約20000人の小学生が、自分たちの住む町の防災マップを作成する。そのクオリティーは非常に高いという。渥美教授曰く、小学生のお母さんたちが子どもの宿題を手伝うような意識で取り組むからだ。

子育てなどで忙しい20〜30代の母親層に、地域の防災訓練などへの参加を呼びかけても、実効性に乏しい。「防災」を前面に掲げるよりは、こうしたコンクールに楽しんで参加してもらうことのほうが、防災意識の啓発につながるのではないか。自発的に防災に取り組んでもらえるような仕掛けが大切だと渥美教授は力説した。

イツモ防災

渥美教授が最も重要視すること。それは、普段の地域との関わりが最大の「防災」だ、ということだ。常日頃から防災について考えておくことは現実的ではない、と渥美教授は語る。犬の散歩で会う人やゴミ出しの時に挨拶をする隣人など、いざという時に「あの人は、どうしているのだろう」と思い出してくれる人が近くにいることが「防災」になるという。

実際、約3万5000人が生き埋めになった阪神・淡路大震災では、住民による救出が77%(27000人)だったという。震災後すぐに、生活の実態を知る人が助けに行くこと。これが大切なのだ。

被災した時、必要なものを「イツモ」

阪神・淡路大震災から23年。天災は忘れた頃にやって来るというが、時を経ても歴史から学ぶことをやめなければ、「イツカ」来る被害を少しは抑えられるのかもしれない。

被災経験から学び、被災者の声を生かした教訓を日常生活に生かすこと。
そして、そんな声を集めた防災セットを「イツモ」携帯しておくこと。
そういった、ちょっとした取り組みこそ、僕らに必要なことなのかもしれない。

災害イツモマインドセットプロジェクトについて
https://saigai-itsumo.com

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