2018/07/17

遺伝情報とAIは我々の社会をどのように変えるのか
~ビジネスを変えるフルゲノム情報~
AIフォーラムレポート

朝日新聞DIALOG編集部

宮原 武尊
(ジェネシスヘルスケア株式会社 取締役CTO)

かつてヒトの全遺伝子情報の解明には、膨大な費用と期間を要しました。ところが、近年、そうしたコストは大幅に下がり、2030年にはフルゲノムを対象とした遺伝子検査が1万円ほどで可能になると予想されています。多くの人が当たり前のように遺伝子検査を受けることで、私たちの行動はどのように変容するのでしょうか。また、ビジネスや社会はどう変わるのでしょうか。ジェネシスヘルスケア株式会社取締役CTOの宮原武尊さんが展望を語りました。

AI×フルゲノム解析が、労働効率を上げるための一助となる

2003年に米国でヒトの全遺伝子情報の解明(ヒトゲノムプロジェクト)が終了しました。その翌年の2004年、遺伝子を調べると何が分かるかということがほとんど知られていなかった時代に、ジェネシスヘルスケア株式会社は誕生しました。自社による研究開発を経て、2008年に「GeneLife」ブランドを立ち上げ、民間向けの遺伝子検査キットの提供をスタートしました。遺伝子は「人間の設計図」と呼ばれているように、遺伝子の違いがヒトのさまざまな特徴を決定づけています。例えばヒトの遺伝子は99.9%が同じ構造ですが、残りの0.1%が個人を特徴づけるのです。こうした遺伝子の個人差を調べるのが遺伝子検査です。

遺伝子検査を受けると、自分がどんな病気にかかりやすいかなど、将来起こる可能性のある現象を予想できます。その現象を招かないように生活習慣を改善したり、保険に入っておいたりするなどの対策を取ることができます。遺伝子検査は今後、解析費用が下がっていっそう身近になり、解析需要が伸びることが予想されています。

弊社ではこれまでの検査を通じて、日本人を中心に60万人分の遺伝情報を保有しています(2018年6月時点)。また、食事の記録や歩数などの行動データを3万人分、家族の既往歴や自身の病歴、生活習慣、身長・体重といったデータも7万人分保有しています。こうしたデータを統計解析や機械学習にかけ、いろいろな側面からモデルを考えています。例えば、60歳で心筋梗塞を発症すると予測するモデル。また、いま何をすれば病気の発症を遅らすことができるか、行動変容を促すモデルなどです。

実績を一つ紹介すると、貧血についてはある程度のモデルができています。ある遺伝子に変異がある人に共通しているのですが、パンを週に2、3回食べる人は貧血になる確率が低い傾向があり、その予測精度は70%程度となっています。こうしたモデルをつくることで、それぞれの遺伝子型によって、どんな行動変容をすべきかをアドバイスすることが可能になります。

近年、フルゲノム解析のコストが下がってきているため、多くの人が当然のように遺伝子検査を行う時代が到来するでしょう。日本では今後、労働人口が減り、経済活動の低迷が予想されています。そうならないためには、AIなどを駆使して、一人ひとりの労働効率を上げていくことが重要です。

私たちは、AIとフルゲノム情報を活用することで、経済格差による健康格差を埋めたり、より個を重視したマーケティングを可能にしたりすることを目指しています。ヒトの行動、思考を予想することで、医療、職業適性判定、社会的信用調査、保険、広告マーケティング、介護などの分野で特に貢献できると考えています。

宮原 武尊
2005年株式会社エムティーアイへ入社しモバイルコンテンツを開発、その後株式会社ドリコムを経て、海外向けソーシャルゲームの開発をリードし2014年よりジェネシスヘルスケア株式会社へCTOとして入社。日本のみならず海外へも遺伝子検査を展開。東アジア最大級のゲノムデータベースを構築。遺伝子検査のパイオニアとして業界をリードする企業へと牽引した。執行役員を経て、2015年3月 同社取締役に就任。

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