2018/12/04

「マニフェスト大賞」最優秀賞を受賞
復興を支えたNPOが感じた行政の役割の変化とは

Written by木村聡(NPO法人SET)with 朝日新聞DIALOG編集部

日本最大の政策コンテストである「マニフェスト大賞」(マニフェスト大賞実行委員会主催)の授賞式が11月9日に行われました。全国の2000を超える応募の中から、「政策提言」「コミュニケーション戦略」など七つの部門で選ばれる最優秀賞のうち、私たちNPO法人SETが「シティズンシップ推進賞」の最優秀賞を唯一、NPO法人として受賞しました。その背景などについてご報告します。

マニフェスト大賞は、地方自治体の議会・首長や、地域主権を支える市民の優れた活動を表彰することを目的とし、今回で13回目の開催になります。シティズンシップ推進賞の評価項目には、「公民教育・主権者教育や投票率向上に関する活動や政策提言、選挙における広報・啓発等」が挙げられています。SETは東日本大震災の被災地の支援活動をしてきたので、公民教育とは一見、そぐわない気もしますが、委員会の方々は、どこを評価してくださったのでしょうか。

SETは、東日本大震災の2日後の2011年3月13日に任意団体として発足。以来、岩手県陸前高田市広田町と、その周辺地域で、災害支援活動や既存の産業の発展、新しい産業の創出、国際協力、外部人材との協力態勢の構築などに取り組んできました。13年6月にNPO法人化し、現在は、関東出身の13人の現地メンバーに加え、180人の大学生、社会人メンバーで構成されています。当初の「復興支援」を主眼とした活動から、現在は「人口減少社会における町づくりや人づくり」をメインのテーマに据えて活動を続けています。

授賞式で。左から、SETの篠原準哉広報部長、審査委員長の北川正恭氏、筆者=東京・六本木ヒルズに

今回の受賞に際して評価されたのは、「決して減らない活動人口」を生み出し続けるSETの「Change Maker Study Program(CMSP)」の取り組みでした。このプログラムは、主に関東圏在住の有志の大学生を広田町に招き、町のためになるアクションを1週間で企画、実行し、報告までしてもらうというものです。学生たちは約8万円を払ってCMSPに参加します。これまでに38回開催され、年間約200人が参加しています。参加者の多くは、1週間のプログラムが終了した後も継続的に活動に訪れます。その数は毎週10~20人にも及び、町内への新たな人の流れをつくりました。また、参加者のうち3割弱が運営スタッフに回るようになり、新たなプロジェクトを町内で始めるだけでなく、移住者まで生まれているのも特徴です。これらの点が「本格的、継続的、発展的」であるとして評価されたのですが、そこには一つの背景があると思います。それは人口減(=税収減)による、行政の力の低下です。それに伴い、地域コミュニティーにも変化が求められています。

CMSPの様子=陸前高田市

行政と地域コミュニティーの関係を親子関係に例えてみると、分かりやすいかもしれません。親(≒行政)が働き盛りの時は給料も上がり、子ども(≒地域コミュニティー)に多くの物を買い与えることができましたが、今や親は引退間近、あるいはすでに年金生活に入っています。となると、親の役割は子どもの自立を促すことではないでしょうか。人口減・税収減時代になり、行政もまた、地域コミュニティーの自立を求めているのです。実例も増えています。例えば長野県下條村では、村民自身で道路工事をする制度があります。修理が必要だと思う箇所を自分たちで見つけて、必要な経費を村に申請。工事は自分たちで行います。村の支出は抑えられ、共助の慣行も復活したそうです。

本題に戻りますと、町のために何ができるのかを考え、自ら動く。そういった人たちが、今後ますます必要になります。税金を払っているのだから行政に任せておけばいい、とはもうならないのです。だからこそ、住民以外の活動人口、交流人口がカギになってきます。SETは様々な事業を通じて、人口3000の広田町に、年間延べ1000人の活動・交流人口をもたらしました。彼らは単なる観光ではなく、交流や活動を目的に訪れます。当然、町の人とのかかわりも深くなり、受け入れてくださる町の方々も、外から訪れる若者たちが町のためになると実感します。町の内外に活動人口が生まれ、「できることは自分たちでやっていこう」という機運が醸成されていくのです。こうした点が、今回、広義の公民教育として評価されたのではないかと感じています。助け合いと「ありがとう」が循環するコミュニティーのあり方に、私は豊かさを感じます。

私は現在、陸前高田の地域交通に関心があります。「交通弱者」の問題が、今後ますます深刻化していくと思うからです。そこで、町内移動限定の住民同士によるヒッチハイクを提案したいと考えています。自治体による地域交通政策は従来、民間のバス会社などへの運行委託が多く、ヒッチハイクは行政が介入する領域ではないと思われるかもしれません。しかし、前述の下條村の例と同様、行政は自ら移動サービスを提供する代わりに、車に乗りたい人が集まる停留所を設け、乗せてくれる人とマッチングするICTのシステムを整備し、住民同志がヒッチハイクしやすい環境整備を進めればよいのです。これも一つのコミュニティーの自立促進につながっていくのではないでしょうか。こうした取り組みが、町のにぎわいや住民同士のコミュニケーションなど、地域交通という枠を超えた様々な課題の解決や価値の創造につながっていくと感じています。来春、大学院を修了したら、私も広田町に移住する予定です。

AUTHOR…木村聡(きむら・あきら)1993年生まれ。東京都出身。慶應義塾大学大学院システムデザイン・マネジメント研究科2年在学中。2014年からNPO法人SETで活動を始め、現在はCMSPの運営と、事業拡大するSETの組織開発プロデューサーを務めている。
ブログ:それはついさっきまでの話 https://blog.goo.ne.jp/kimaki2_0

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