2019/03/06

アーティストと新米コレクターとの出会いを生み出す
「3331 ART FAIR 2019」 3月6日から開催

朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 石黒シエル(POTETO)

突然ですが、アートを買ったことはありますか。ないですよね、たぶん。アートを楽しむといえば、普通は美術館やギャラリーで「見る」こと。積極的な人ならワークショップなどに「参加する」かもしれません。美術書で「知る」楽しみにひたる人もいるでしょう。でも、「買う」こともアートの楽しみの一つです。3月6日から10日まで、東京・外神田で開かれる「3331 ART FAIR 2019」では、そうしたアートの幅広い楽しみ方を体験できます。

ファンの裾野を広げることを目指したアートの「お祭り」

会場は「アーツ千代田3331(3331 Arts Chiyoda)」。閉校になった中学校を活用して2010年に開設されたアートセンターです。展覧会や講演会、ワークショップなど幅広い活動を展開しています。その一環として13年から始まったのが「3331 ART FAIR」です。

アーツ千代田3331の入り口。右奥はカフェスペース。かつての校庭は小さな公園に変身し、近隣の人々の憩いの場になっています

アートフェアは一般的には、多数の商業ギャラリーが一堂に会してアート作品を展示・販売する場のことです。アートを買うことになじみが薄い日本では、あまり知られていませんが、欧米ではスイスの「アートバーゼル」を筆頭に各地で開催されています。

でも、3331 ART FAIRは、そうしたアートフェアとは一線を画しています。アーツ千代田3331は開設当初から「アーティストの支援」を活動の柱の一つとしてきました。アーティストに、作品発表の機会だけでなく、作品を購入する人との出会いを提供することも「支援」になります。

そのため、3331 ART FAIRは、アートに関心がある各界のキーパーソン約100人に「プライズ・セレクター」を委嘱しています。この人たちが会期中に作品を購入すると、その作品に購入者の名前を冠した「コレクター・プライズ」を授与する、という仕組みです。また、一般の来場者がアートを見て、参加し、知るためのイベントをいくつも設けています。アートファンの裾野を広げることが、ひいては購入者の層を広げることにもつながるからです。

昨年から全館をフェアの会場とし、地下1階から屋上までアート作品で埋め尽くしました。その結果、昨年は5日間で2万人以上が来場、前回の3.6倍という盛況でした。多彩なイベントでにぎわう様子を見ると、「fair(定期市)」を超えて「festival(祭り)」になっている、といえるかもしれません。

コレクター目線で会場を回る疑似体験ツアーも

では、今年のイベントをいくつか紹介しましょう。

「美術大学など幅広い団体が出店するのも、このFAIRの特徴」(彦根延代さん)

1階のメインギャラリーとパブリックエリアでは例年と同様に、新進気鋭の作家75組による先鋭的な作品が展示されます。同時に開かれる特別企画展「遊殺・以後」は、1960年代末から80年代にかけて、日本の現代美術を牽引した作家5人の作品やラフスケッチを展示・販売します(一部非売品)。作家の顔ぶれは、高山登、椿昇、日比野克彦、藤浩志、堀浩哉の各氏。「(5人の作品に)日本の現代美術の流れを見いだし、若手作家の作品との共通性や影響関係を探る企画展です」(3331 ART FAIR 2019マネージャーの彦根延代さん)。

「ツアー経験者が、いつか1点でも買ってくれるとうれしいですね」(玉置真さん)

一方、初心者を対象にしたイベントが「マイ・ファースト・アートを見つけよう」(7日18時30分、10日13時)。参加者は50万円を持っているとの想定でメインギャラリーをめぐり、どの作品を買いたいか、なぜその作品なのかを語り合います。「疑似体験でも、作品を買おうとすると、鑑賞の目線が違ってきます。昨年の参加者の満足度は100%でした」(イベント担当の玉置真さん)。その他にも、親子を対象にした鑑賞ツアーやビジネスパーソン向けのトーク&館内ツアーもあります。

においを感じる「こと」を作品化し、FAIRで販売

アーティストによるツアーもあります。

井上尚子さんは、古書を題材とした「匂いの図書館ワークショップ」(7日19時、有料)も、日本では初めて開催します

出展作家でもある井上尚子さんが案内する「くんくんウォーク@3331」(8日19時、9日15時、10日13時・16時30分、有料)です。井上さんは、人やもの、空間のにおいを嗅ぐことで起こる反応や、その体験を話し合うことで参加者が得る「気づき」そのものを作品とするアーティストです。「嗅覚は個人差が大きいので、反応はさまざまです。参加者はその体験を話し合うことで、自分を語るとともに、他者との違いに気づく。それが互いの違いを認め合うことにつながります」(井上さん)

ツアーでは参加者と一緒に館内を歩きながら、作品や空間のにおいを嗅ぎます。それによって参加者は、目で見るだけでは得られない鑑賞体験を記憶に刻むことになります。現代アートには、絵画や彫刻などの「もの」をつくるだけではなく、パフォーマンスやインスタレーションなど「こと」を起こして参加者(鑑賞者)を未知の体験に導く作品が少なくありません。その意味で井上さんのツアーは、「こと」を起こすアートが、「もの」としての作品販売を眼目としてきたアートフェアに新たな領野を切り開く試みといえそうです。

井上さんの展示の一つ、17世紀にドイツで刊行されたバイブル。歳月によって醸成されたにおいを放っています。右は嗅覚研究者の協力を得て、そのにおいを分析したチャートです

【会期】3月6〜10日 12〜20時(6日は17時から一般公開、10日は18時閉場。入場は各日閉場30分前まで)
【会場】アーツ千代田3331 東京都千代田区外神田6-11-14
【入場料】一般1500円/1700円(ガイドブック付き)、シニア(65歳以上)・学生1300円。高校生以下無料。会期中は複数回入場可 詳細は公式サイト(https://artfair.3331.jp)で

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