DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/03/12

スポーツの力をSDGsに生かすには
大学生と考える「2020→30×SDGs会議」

Written by 関谷尚子(POTETO) with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 石黒シエル(POTETO)

いよいよ来年に迫った2020年東京オリンピック・パラリンピック。その有形・無形のレガシーをどのように共有し、持続可能な社会づくりに役立てればよいかをSDGsの観点から考える「2020→30×SDGs会議~大学生と考える次世代のレガシー~」が2月10日、東京・一橋講堂で開催されました。大学生約100人が参加した当日の模様をお伝えします。

スポーツでポジティブな社会変化を起こす

会議は2部構成。第1部では、東京2020組織委員会の伊藤学司・企画財務局長と国連広報センターの根本かおる所長がトークセッションに登壇。東京2020組織委員会の室伏広治スポーツディレクターが講演しました。

東京2020組織委員会の伊藤学司・企画財務局長

トークセッションの冒頭で伊藤さんは、「オリンピック・パラリンピックで、準備段階からSDGsの考え方を踏まえるのは今回が初めて」と紹介。「東京2020では、大会期間中の成功だけではなく、終了後もアクションが続いていくことを目指している。スポーツには世界と未来を変える力がある。東京2020をきっかけにポジティブな社会変化を起こしていきたい」と語りました。
東京2020に向けて、持続可能性に配慮した運営計画が発表され、使用済みのスマートフォンや小型家電からメダルを製作する「都市鉱山からつくる!みんなのメダルプロジェクト」なども実施されています。伊藤さんはこうした取り組みについて、「組織委がSDGsの17の目標を意識して運営することで、日本人はもちろん、世界中の人々にSDGsを意識してもらえるような大会にしたい。SDGsという視点を東京2020では世界に発信したい」と語りました。

国連とオリンピック・パラリンピックが共有する「平和」の理念

国連広報センターの根本さんは、国連とSDGsの関係について話しました。

国連広報センターの根本かおる所長

根本さんはまず、「国連とオリンピック・パラリンピックは、『平和』という共通の理念を掲げている」と説明。古代ギリシャには、オリンピック開会中はすべての戦いを停止する国際的な協定「オリンピック停戦」があり、選手や観客の安全な移動が保証されたそうです。国連総会でも1990年代以降、オリンピック停戦に関する決議が採択されています。根本さんは、「スポーツは極度の貧困や民族戦争を止める手段になり、和解できない民族に平和の大切さを気づかせる力がある」と指摘しました。
さまざまな人がかかわる東京2020は、多くの人に「気づき」と「行動」のきっかけを与えられる重要な場だと根本さんは考えています。「皆さんが、東京2020でワクワクしながら、気になるSDGsの課題を見つけ、それに対して行動を起こしてほしい」と参加者に語りかけました。

美しい地球があるから、スポーツができる

続いて登壇した室伏さんは、東京2020と次世代の子どもたちの関係をテーマに講演しました。

東京2020組織委員会の室伏広治スポーツディレクター

室伏さんによると、東京2020の選手のうち女性が占める割合は48.8%。オリンピック・パラリンピック史上、最大の参加率になるそうです。このことは、SDGsの「ジェンダー平等を実現しよう」という目標にも合致します。
オリンピックの競技には新たにスポーツクライミングやスケートボードなどが加わりました。若者たちの大会への関心を高めることが期待されています。サーフィンも新競技の一つですが、近年はマイクロプラスチックなどによる海水の汚染が大きな社会問題となっていて、「海の豊かさを守ろう」というSDGsの目標ともかかわります。室伏さんは、ビーチでゴミ拾いをするサーファーたちの活動を紹介したうえで、「きれいな環境でないと私たちはスポーツができない。光の当たる場所だけでなく、ステージの裏にも大切なものがある」と話し、SDGs達成には一人ひとりの意識を変え、身近なところから行動を始めることが大切だと強調しました。

デザイン思考で社会イノベーションが生まれる

第2部の分科会では、参加した約100人の大学生が三つのグループに分かれてワークショップを行いました。
分科会Aのテーマは「ユニバーサルデザイン」。大日本印刷ABセンター マーケティング本部オリンピック・パラリンピック推進室の武藤英樹さんが、「ユニバーサルデザインから考える次世代のレガシー」と題してレクチャーしました。

大日本印刷の武藤英樹さん

武藤さんは、「ユニバーサルデザインはあらゆる人の不満を解消し、安全に使ってもらうことが目的だが、消費者はそれだけでは魅力的に感じなくなっている」と課題を挙げました。そのうえで、「少数派の人々も含む、全ての人にとって便利なデザインを意味する『インクルーシブデザイン』をヒントにすれば、世の中に素晴らしいデザインの商品を提供できるのではないか。少数派の人と共に商品開発をしていくとイノベーションが生まれる」と語りました。
ファシリテーターを務めたSDGパートナーズ代表取締役の田瀬和夫さんは、「デザインとは、感性、直感、共感といった論理的でない心の動き」と説明し、「デザイン思考では、人間のありたい姿、本質的ニーズを理解する必要がある」と話しました。その後のグループワークでは、参加者は「2030年にはどのような社会になるべきか」について考え、グループごとに発表しました。

気候変動対策やダイバーシティ実現のためにできることは

分科会Bでは「気候変動」への取り組みを話し合いました。
地球温暖化については、世界中でさまざまな取り組みが行われている一方、いまだ解決への道のりは遠いのが実情です。そこで、SDGsの13番目の目標である「気候変動に具体的な対策を」に関連して、「脱炭素社会」に着目した対策案が紹介されました。具体的には、発電エネルギー源の低炭素化や、投資家による低炭素投資、生活者による低炭素製品の購入や公共交通の利用などが挙げられました。グループワークでは参加者が「脱炭素社会を実現するにはどうすべきか」について議論し、発表しました。

グループワークでは、アイデアを付箋に書いて出し合い議論しました

分科会Cは「ダイバーシティと街づくり」をテーマに進められました。
ジェンダーや人種などの違いを超えて、さまざまな人が共存する多様性のある社会の実現が、今後さらに重要になります。多くの外国人が来日する東京2020を通じて、2030年の日本の地域社会のために何ができるのか。参加者はグループに分かれて「ダイバーシティが活力を生む街づくり」について考えました。

ユニークなアイデアの発表に、思わず笑みが

イベント終了後、来場した参加者に感想を聞きました。
都内の大学に通う女性(20)は、「学生同士でSDGsについて話し合えたことが、とてもためになった。特定の人をターゲットにして世の中をデザインしていくという発想は新鮮だった」。都内の大学に通う男性(21)は、「ファシリテーターが丁寧に具体的に説明してくれたので、とても分かりやすく、勉強になった。将来の日本社会について、違った考えを持つ学生と話し合えたことが刺激的だった」と話しました。

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