DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/03/25

「大学SDGs ACTION! AWARDS 2019」
熱気に満ちた最終選考会の模様をリポート

Written by 高田彬 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 松本哉人(POTETO)

国連は貧困や格差、環境など17分野で2030年までの達成を目指す「持続可能な開発目標(SDGs)」を掲げています。この目標達成へ向けて活動する大学生を支援する「第2回 大学SDGs ACTION! AWARDS」(朝日新聞社主催)の最終選考会が2月20日、東京・有楽町で開かれました。登壇したのは、約80件の応募の中から1次選考を通過した12チーム・個人の学生プレゼンターです。SDGsの達成にかける熱意やオリジナリティーの高いアイデアを、堂々と披露しました。当日の模様をお伝えします。

オープニングで登場したのは、吉本興業の河本準一さん(次長課長)と、くまだまさしさんです。吉本興業は国連広報センターと連携し、「笑顔」をキーワードにSDGsの啓発活動に取り組んでいます。その縁もあって、2人が応援に駆けつけてくれました。「SDGsについて考えることは素晴らしいことだと思います。ぜひ頑張っていただきたい」と河本さん。くまださんは得意のネタを披露し、学生プレゼンターたちの緊張をほぐしてくれました。

12組のプレゼンがスタート

選考委員の紹介の後、早速、12組の学生プレゼンターによる発表が始まります
それぞれが7分間の持ち時間を使って、工夫を凝らしたプレゼンを競いました。

① 徳島の藍染め技術とカンボジアのクロマーを掛け合わせた新たな商品開発

最初のプレゼンターは、徳島大学の奥村光さんと四国大学の髙橋歩睦さんです。

カンボジアの伝統的な織物のクロマーというスカーフは、高品質なのに安く買いたたかれてしまっているそうです。徳島県内の大学に通う2人は、地元に古くから伝わる藍染めの技術とクロマーを組み合わせて新たな付加価値を生み出せば、カンボジアの村はもっと多くの収益を上げられると考えました。販路については、「日本のハンドメイド作品の人気が高いヨーロッパ市場への進出を目指す」と話しました。藍の生産量が日本一の徳島県の強みを生かした今回の取り組みによって、カンボジアの村の人々に安定した収入をもたらすことを目指しています。

②明るい未来を切り開く、私たちのSDGs教育パッケージの展開

2番目のプレゼンターは、金沢工業大学の島田高行さんと亀田樹さんです。

日本では、未来が良くなると思っていない若者が多いと言われています。そこで、SDGs教育を通して、「誰もが未来に希望を持てる社会の実現を目指します」と島田さん。若者が楽しめるコンテンツ開発、若者中心のプラットフォーム構築、教育パッケージの展開という三つの軸を持って活動しています。特にコンテンツ開発では、楽しみながらSDGsを理解できるカードゲームを開発し、500件以上もダウンロードされています。インドやカナダでもすでにワークショップを開催しており、日本国内のみならず海外での活動にも力を入れていくと語りました。

③SDGs移動仮設カフェ「出張タルタルーガ」の展開

3番目のプレゼンターは、滋賀県立大学の上田健太郎さんです。

上田さんがかかわる「とよさと快蔵プロジェクト」は、空き家になっている古民家を何とかしたいという思いから2004年に発足し、学生が中心となって活動しています。これまでに滋賀県豊郷町内で13件の古民家を改修。設計、デザイン、施工のすべてを学生が担当しました。そのなかに、06年に築80年の蔵を改修してオープンし、学生が運営を担う「タルタルーガ」という日本酒BARがあります。上田さんは、古民家の廃材を使用して、持ち運び可能な移動店舗「出張タルタルーガ」をつくることを考えています。そこで提供する料理には豊郷町の特産品を使い、よその地域でも豊郷の味を知ってもらいたいと意気込んでいます。

④環境負荷と農家の無賃労働を低減するために

4番目のプレゼンターは、近畿大学の監物杏菜さんと奥野人美さん、島添眞輝さんです。

3人は薬学部の同じ研究室に所属しています。今まで廃棄されていたものに新たな価値を見いだすことによって、環境負荷と農家の無賃労働を減らす方策を発表しました。和歌山県では、梅干しを製造する際、高濃度の塩分を含む梅酢が大量に排出され、環境に負荷をかけています。この梅酢を再利用するため、梅酢から抽出した梅塩を使った塩分補給タブレットを開発。「梅塩ちゅあぶる」として商品化に成功しました。ほかにも、近大マグロの皮から抽出したコラーゲンを使った化粧品の開発や、干し柿を生産する際に廃棄される柿の皮の活用事例などが紹介されました。

⑤新しい就活の形とその先の中小企業後継未定問題

5番目のプレゼンターは、福岡大学の荒巻光生さんと藤井佑弥さんです。

2人は、中小企業の後継者不足を解決する新しい就活の形を提案しました。日本の全企業の3分の1にあたる約127万社の中小企業が後継未定問題を抱え、2025年には経営者の6割が70歳以上になるそうです。黒字でありながら後継者がいないために廃業する企業は少なくありません。2人は計30社を訪ね、社長にインタビュー。後継者選びでは、スキルの高低より、社長の思いや考え方、企業理念を理解している人かどうかが重視されていることに気づき、「新就活経営塾」を立ち上げました。この塾では、従来の就活とは異なり、学生と企業がお互いのことを深く知ったうえで就職活動を行うことができるそうです。

⑥「協力者カミングアウト」で、「違いが互いの力になる」社会を

6番目のプレゼンターは、東京大学の町田紘太さんと田村明日香さんです。

これまで電車やバスの中などでは、妊産婦や障害者など、支援が必要な側がマタニティーマークやヘルプマークを付けて周囲に協力を求めてきました。「協力者カミングアウト」では発想を逆転し、座っている人が「マゼンタ・スター」のバッジをつけて、「協力が必要なときはお声をかけてください」と意思表示をします。「協力したい気持ちはあるけれど、恥ずかしくて声をかけづらいと思う人が多い日本にはもってこい」と町田さんたちは訴えます。体調が悪いときなど、自分に余裕がないときはバッジを外すことができるのも便利です。

⑦浜頓別町・まち・ひと・活き生きプロジェクト

7番目のプレゼンターは、酪農学園大学の清水日香里さんです。

清水さんは大学の研究室で、北海道全体のフィールド観測をしています。今回は、大学の地域社会への貢献をテーマに発表しました。北海道北部の浜頓別町の人口は、2月現在で3615人。この1年で102人減りました。このままのペースで人口減少が続くと約50年後には消滅してしまいかねないほど、過疎問題は深刻です。一方で、ラムサール条約登録湿地のクッチャロ湖など、豊かな自然に恵まれた町です。酪農学園大学は浜頓別町とパートナーシップを組んで、子供たちにサマーキャンプなどの環境教育を実践するほか、研究成果を町に還元する環境サミットなどを行いました。

⑧SDGsレンズで海から水源まで水の循環をみる! ESDキャンプで流域交流

8番目のプレゼンターは、麻布大学の小稲香穂さんと杉森天真さん、山林亮太さんです。

神奈川県民の約8割が水源として利用している相模川。麻布大学環境科学科では、都市部に住む小学生と保護者を対象に、相模川流域をめぐるESD(持続可能な開発のための教育)キャンプを実施したいと考えています。キャンプでは、麻布大学が作ったSDGsレンズを使って自然環境を学びながら、地元の人たちとも交流します。SDGsレンズとは、ルーペの外周にSDGsが目指す17分野の目標のロゴをつけたものです。このレンズで地域を見ると、17分野に関連した地域の課題や資源と、その関連性に気づきやすくなるほか、SDGsを自分の問題として考える手助けにもなるそうです。

⑨Plushindo:チャンスを作り出し、視点を変える

9番目のプレゼンターは、立命館アジア太平洋大学のディッサ・シャキナ・アーダニサさんです。

ディッサさんは「finger talk」という団体をインドネシアに設立し、これまでに1000人以上のろう者に働く機会を提供してきました。ディッサさんはこれをさらに発展させた「Plushindo」というプロジェクトを発表しました。Plushindoでは、インドネシアに生息する絶滅危惧種の動物をモチーフにしたプラッシという人形を作り、主にインドネシアの国立公園で販売します。プラッシは低コストで作れるうえ、国立公園は月に20万人が訪れるため、需要も十分に見込めます。「ろうの人々に作り方やオンライン販売の方法を教えます。それによって、ろうの人々が収入を得て、家族の生活を支えられるようになります」と語りました。

⑩原因不明の言語障害である吃音症を改善する世界初のVRプロダクトを実現する

10番目のプレゼンターは、立教大学の梅津円さんです。

吃音症は発達障害の一つで、2~5歳の幼児の5%が発症し、その75%は成人するまでに改善しますが、成人の吃音は治りにくいと言われています。梅津さん自身も吃音に苦しんだ経験があり、それがこのプロジェクトの原動力になっています。吃音を改善するには、吃音が出やすい場面で練習することが効果的ですが、今までは、そのような場面を再現することが難しかったそうです。梅津さんの開発しているトレーニングVR動画では、吃音者が苦手な場面を選択し、何度でも練習することが可能です。将来的には、吃音症以外にも応用し、障害で自分の可能性を諦めなくていい社会を実現することが目標だそうです。

⑪3Dプリンターによる「どこでもトイレ」の開発

11番目のプレゼンターは、東京工業大学の藤田創さんと東京農工大学の両角光平さんです。

2人は3Dプリンターによる「どこでもトイレ」の開発について発表しました。1月までインドネシアに留学していた両角さんは、手を汚さずに使えるトイレがまだ普及していない現場を見てきました。そこで、藤田さんと協力し、環境と経済性の両方に配慮した製品を開発しました。それが3Dプリンターで作製した「どこでもトイレ」です。持ち運び可能な「おまる」のようなこのトイレには袋が付いています。横のひもを引っ張ると、巾着のように袋が閉じ、袋を落下させることで、手を汚さずにトイレを済ますことができます。簡単で、環境にも配慮した、安価なトイレの普及を目指します。

⑫ 車いすユーザーのための海外旅行「ペガサス・ボヤージュ」モニターツアー

最後のプレゼンターは、九州国際大学の衛藤羽篤さんと遠藤廉さんです。

同じゼミに所属する2人は、車いすユーザーが観光旅行で行ける場所が限られている現状を打開するために、三つの「道具」を考えました。まず、ゼミのメンバー全員がサービス介助士の資格を取得しました。そして、旅行先で山道に行くことを可能にする牽引式車いす補助装置「JINRIKI」と、美術館に行った際、健常者目線で鑑賞できる昇降式電動車いす「ペガサス」を用意しました。これらの道具を生かして、車いすの人と一緒にオーストラリアへ行くモニターツアーを考案しました。「この取り組みが、障害者の楽しみにイノベーションを起こすと確信しています」と力強くアピールしました。

12チーム・個人のプレゼンテーションが終了し、選考委員による最終審査が始まりました。会場の参加者の投票で選出されるオーディエンス賞も設けられ、多くの参加者がもっとも良かったと感じたアイデアに投票しました。

企業の課題解決策を考えるSDGsワークショップも開催

選考委員が別室で審査をしている時間を利用して、日本航空株式会社と住友金属鉱山株式会社によるSDGsワークショップが開催されました。両社から参加者全員に課題が与えられ、一人ひとりが自分の意見を付箋に書き出し、ボードに貼って、意見を集約しました。

日本航空が出した課題は、「飛行機に搭乗する際、楽しみながらSDGsを体験できる取り組み、商品、サービスについてのアイデアを出してください」というもので、「食器まで食べられる機内食」といったユニークな意見が出ました。
住友金属鉱山が出した課題は、同社のニッケル資源開発について「SDGsのどのゴールに注目し、社会に対して何をアピールすべきか」でした。「ニッケル開発に着目した『森の工場の絵本』を出版する」といった意見などが、会場で注目を浴びていました。

受賞者の発表

そしていよいよ、「大学SDGs ACTION! AWARDS 2019」受賞者の発表です。 グランプリを獲得したのは、ディッサ・シャキナ・アーダニサさん(立命館アジア太平洋大学)の「Plushindo:チャンスを作り出し、視点を変える」というアイデアでした。

選考委員を代表して、朝日新聞社の石田一郎マーケティング本部長が、「誰一人取り残さない包摂性や優しさなど、社会の意識改革を進めていけるという評価になりました。SDGsのフレームがあるからこそ、この取り組みはグローバルに広がっていく可能性があると思います」と授賞理由を述べました。
受賞したディッサさんは、「心から感謝します。これが社会の不平等をなくす一歩になります。これから日本とインドネシアの架け橋になって、Plushindoの影響を与えたいと思います。頑張ります」とスピーチしました。

そのほかの受賞者は以下のみなさんです。

〇準グランプリ 住友金属鉱山賞
「環境負荷と農家の無賃労働を低減するために」
監物杏菜、奥野人美、島添眞輝(近畿大学)

〇オーディエンス賞
「『協力者カミングアウト』で、『違いが互いの力になる』社会を」
町田紘太、田村明日香、飯山智史(東京大学)

〇スタディーツアー<下川町×JAL>賞
「SDGs移動仮設カフェ『出張タルタルーガ』の展開」
上田健太郎(滋賀県立大学)

〇スタディーツアー<瀬戸内町×JAL>賞
「車いすユーザーのための海外旅行『ペガサス・ボヤージュ』モニターツアー」
衛藤羽篤、遠藤廉(九州国際大学)

〇審査員特別賞
「原因不明の言語障害である吃音症を改善する世界初のVRプロダクトを実現する」
梅津円(立教大学)

〇ファイナリスト賞
「徳島の藍染め技術とカンボジアのクロマーを掛け合わせた新たな商品開発」
奥村光(徳島大学)、髙橋歩睦(四国大学)

「明るい未来を切り開く、私たちのSDGs教育パッケージの展開」
島田高行、亀田樹(金沢工業大学)

「新しい就活の形とその先の中小企業後継未定問題」
荒巻光生、藤井佑弥(福岡大学)

「浜頓別町・まち・ひと・活き生きプロジェクト」
清水日香里(酪農学園大学)

「SDGsレンズで海から水源まで水の循環をみる! ESDキャンプで流域交流」
小稲香穂、杉森天真、山林亮太(麻布大学)

「3Dプリンターによる『どこでもトイレ』の開発」
藤田創(東京工業大学)、両角光平(東京農工大学)

若者のチャレンジを応援したい

最後に、朝日新聞社の渡辺雅隆社長が閉会のあいさつをしました。
「朝日新聞社は『ともに考え、ともにつくる』という企業理念を大切にしており、今回のようなリアルなイベントを通じて、SDGsの活動を広めていきたいと思っています。今日ここに登壇されている皆さんは、2030年のSDGs目標達成のころには、社会を牽引している世代です。今日の活動報告、研究報告を出発点として持続可能な未来を実現するために、これからも知恵を絞っていただけることを期待しています。若い人たちの力を信じ、若い人たちを支援していこうという企業の皆様とともに、これからも若い人たちのチャレンジを応援していきたいと思います」

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