DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/03/27

学校で「観光」を教えるには?
現役教師と大学生が授業案を作ってみた

【PR】観光庁

子供たちが地域の魅力的な観光資源を理解し、発信できるようになることを目指す「観光教育」。実際の教育現場にどのように取り入れればよいかを考える「観光教育勉強会」(観光庁主催、朝日新聞社メディアビジネス局運営、日本教育新聞社協力)が3月1日、東京・築地で開かれました。参加者は現役の教師と大学生たち。オリジナルの授業案を全員が持ち寄り、熱のこもった議論が繰り広げられました。その模様をお伝えします。

アクティブラーニングでインバウンドを考える

勉強会には小学校から高校までの現役の教師6人と、教師を志す大学生4人が参加しました。
最初に、観光庁観光産業課の田口壮一課長補佐が、松江市へ出張した際の体験を交え、観光教育の意義について語りました。

「昨年のインバウンド(訪日外国人)が3000万人を超えたと報じられています。しかし、私が先日、松江で泊まった旅館では『閑散期になると20室あるうちの1割程度しか埋まらない』と従業員の方が嘆いていました。 華々しく語られているインバウンドの効果も、地域によってはまだまだ届いていないのだと実感しました。とはいえ、インバウンドの経済効果はやはり大きく、1人あたりの支出額は約15万円と言われています。定住者1人あたりの年間の平均消費額が約120万円ですから、インバウンド8人で定住者1人分に相当します。人口減少社会のなか、特に地方では、定住者人口を増やしていくことと同じくらいインバウンドを増やすことが重要性を帯びてくると思います」
「教育的観点から見ると、現在、学習指導要領の改訂が行われ、生徒が能動的に学習に取り組むアクティブラーニングに注目が集まっています。そのなかで、観光教育は題材として非常に興味深いものだと考えています。身近にある素材を使いながら、地域や国のことを知ることができる。そして同時に、語学学習や相互理解への動機付けにもなります」

岡山県と山梨県を想定した授業案を発表

続いて、この日のメイン企画である「指導案プレゼンとディスカッション」が始まりました。

参加者は、「岡山チーム」と「山梨チーム」の2組に分かれ、総合的な学習の時間で行うことを想定した観光教育の2時限分の授業指導案を事前に用意してきました。自分がつくった指導案を、チーム内で発表。その内容について意見を交換します。授業内容は、それぞれの地域に対する理解を深めながら、外国人観光客をどのように増やすかを考えるというもの。観光庁が、訪日外国人受け入れ数や地元の観光資源の豊かさなどを踏まえ、西日本からは岡山県、東日本からは山梨県を今回の授業案づくりのモデル地域として選定しました。

キーワードは「#映え」

岡山チームでは、東京学芸大学教育学部3年の羽角里咲さんが、岡山県のいいところと悪いところを生徒にあげさせるゲームを考案。「理想の岡山県」を実現するためにはどうすればいいかを班ごとに議論し、そこで出た意見をポスターにまとめるという授業案を発表しました。それに対して、現役教師からは、主観的に岡山県のいいところと悪いところをあげるだけでなく、具体的なデータを提示し、それを読み取らせるほうが生徒の資質を伸ばすことができるのではないかといった指摘がありました。

また、東京都世田谷区立経堂小学校の吉岡泰志さんは、岡山県が、写真映えするスポットや産品の情報を住民や観光客から集める「おいでんせぇ#映えの国」という広報活動を行っていることに着目。生徒に「映えカード」を作らせ、それらをまとめた「◯◯小おいでんせぇ映えの国」を小学校のウェブサイトで発信するという授業案をプレゼンしました。このアイデアには、他の参加者から、「ただアクティブラーニングをさせるだけでなく、成果を社会に向けて発信することで、生徒は強い達成感を得ることができる。また各校から出てきた『映えの国』のデータをまとめて外部に発信すれば、地域の活性化にもつながる」など絶賛する声が上がりました。

微博を使って子どもたちが発信

山梨チームでは、早稲田大学教育学部2年の間宮秀人さんが、中国版ツイッターである微博(ウェイボー)を活用する授業を提案しました。

間宮さんは、インバウンドで最も多い中国人が何を求めて山梨に来るのかを探ることを通じて、生徒たちに山梨の魅力を深く理解させたいと考えました。そこで、5人ずつのチームに分かれて、中国人がもっと山梨に来たくなるような文章(140字以内)と写真を考え、優勝したチームは実際に微博に投稿してみるという授業案を作成しました。他の参加者からは「とてもおもしろい。微博で発信することが生徒の意欲付けにつながる」「140字に収めるには、しっかり文章を組み立てる力も必要になる」といった感想が出ました。

このほか、富士吉田市の名物である「吉田のうどん」を題材にして地域の地理的・文化的な特徴を理解する授業案や、県内各地の「ゆるキャラ」に込められた思いや意味を調べてから、その地域をアピールするキャッチフレーズを考えてみる、などのアイデアも出ました。

その後のディスカッションでは、教える側からの一方通行にならず、生徒に能動的に取り組ませるための工夫などについて話し合われました。

使いやすい補助教材がほしい

授業案のプレゼンとディスカッションが終わった後は、チーム編成を変え、観光教育の普及を加速させるためにはどうすればいいかについての意見交換会が開かれました。

実際に授業案を作成し、議論した現役の教師たちからは、まず共通して「今回は、総合学習の時間の2時限分の授業案を作るという設定だったが、指導項目との兼ね合いも含め、総合学習の時間に組み込むには調整が必要だ。加えて、2時限で観光教育を生徒に行うのは無理がある。時間が足りない」との声が強く上がりました。

東京都世田谷区立等々力小学校の田内利美さんは、「世田谷区の場合、そもそも総合学習の全授業時間数の半分は『日本語』という教科に割くことになっている。そこからさらに、指導要領で定められている『資質・能力』という項目を授業で達成することが求められており、観光教育を取り入れるのは難しい。そうしたなかで観光教育を普及させるには、授業に必要な資料やデータをまとめたものを観光庁が用意するなど、教師がすぐに授業を行える体制を整え、ハードルを低くすることが重要だと思う」と、教育現場の現状を踏まえた感想を述べました。一口に資料やデータをまとめると言っても、すでに公表されている資料・データが教材として使いやすいとは限りません。子どもたちがすぐに使えるような、教育現場の実情に即した補助教材作りが必要になりそうです。

観光の視点から郷土の魅力を学ぶ

観光教育そのものについては、「あまり知らなかった地域のよさを生徒が知ることができる」「他の地域と比較して自分の地域を客観的に見ることで、より地元への関心が増す」「生徒に楽しく学習させることができる」といった肯定的な意見がたくさん出ました。さらに、「総合の時間に何をすればいいかわからなくて困っている学校や教師は少なくない。観光教育の明確なガイドラインや教材が用意されれば、ありがたいと思う現場の人間も多いのではないか」「総合学習の時間ではこれまで、『郷土に対する愛情を育む』などを実践してきた。そこに観光の視点を入れて郷土の魅力について学んだり、発信したりといった味付けをすれば、観光教育は成り立つと思う」「探究活動のきっかけ、課題設定の題材を観光の視点で準備できれば、教員に特別なスキルや知識は必須ではなく、普段と同様の学習過程で進められると思った」などのコメントがありました。

勉強会での議論を踏まえ、参加者全員が後日、自分の授業案をブラッシュアップしました。その完成版はこちらからご覧ください↓

学習指導案(岡山県) 羽角里咲さん
学習指導案(岡山県) 東京学館 島本優朗先生
学習指導案(岡山県) 東京都新宿区立鶴巻小学校 糟谷友子先生
学習指導案(岡山県) 東京都世田谷区立経堂小学校 吉岡泰志先生
学習指導案(岡山県) 東京都世田谷区立等々力小学校 田内利美先生
学習指導案(山梨県) 間宮秀人さん
学習指導案(山梨県) 佐藤日向さん
学習指導案(山梨県) 倉嶋結実子さん
学習指導案(山梨県) 東京都新宿区立戸塚第一小学校 渡部裕也先生
学習指導案(山梨県) 東京都世田谷区立多聞小学校 鈴木芳美先生

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