2019/07/18

動画の力で世界をよりよいものに
学生対象の「国際平和映像祭」、今年も9月に開催

朝日新聞DIALOG編集部

「平和」をテーマにした映像コンテスト「国際平和映像祭(UFPFF)」が今年も9月に開催されます。応募資格があるのは世界中の学生たち。2011年から毎年開催され、これまでのファイナリストからは映像制作のプロも輩出しています。この映像祭を主催する一般社団法人国際平和映像祭の代表理事で、映画会社「ユナイテッドピープル」代表取締役の関根健次さん(43)に、映像祭にかける思いや目標について聞きました。

—— UFPFFは2011年から毎年開催され、今年で9回目です。始めたきっかけは何ですか?

9月21日は国連が定めた「国際平和デー」ですが、僕自身も10年前まで知りませんでした。日本では、この日のことがほとんど知られていないので、ぜひ広めたいと思ったのが、そもそものきっかけでした。そのために、僕ならではのアプローチとして、映像を通じて世界の様々な地域の学生が互いを知るきっかけになる映像祭を企画しました。

例えば、自分でシリアやアフガニスタンといった紛争地に行くことはなかなかできませんが、アフガニスタンからドキュメンタリーが出品されれば、その作家の思いが伝わります。映像表現を通じて、観客や映像作家が刺激し合ったり、世界観を広げたりしていく。また、映像祭の当日に出会う。そうしたところから、新たなつながりをもってほしいという願いを込めて始めました。

昨年開催された「国際平和映像祭2018」(写真はいずれも一般社団法人国際平和映像祭提供)

紛争地を歩いた学生時代の体験が原点

—— なぜ、学生を対象とした映像コンテストにしたのですか?

若いときに世界の情勢や様々な考えに触れると、その後の長い人生に大きな影響を及ぼしますが、社会人になると仕事が忙しくなり、世界を知る機会は得にくくなります。僕は学生のころに紛争地も含め世界数十カ国を訪れ、いろいろな体験をしました。パレスチナのガザ地区に行ったときには、紛争のなかで普通に暮らす人がいて、すごく優しくされたこともありましたし、夢が持てず兵士になろうとしている少年とも出会いました。みんなが紛争地に行くことはないですし、行くことを勧めもしませんが、世界を知ることはその人の人生にとってプラスになることが多い。世界観を広げる体験をみんなにしてもらいたいなあという思いも込めて、学生の映像祭を企画しています。

また、この映像祭をきっかけに、学生たちが映像のプロになっていく道筋をつけられればという思いもあります。出品者の中からNHKや朝日新聞といったメディアに就職する学生もたくさん出てきています。そうした人たちは、仕事をする中で、自分が平和についての映像を出品したことを思い出すこともあるでしょう。かつて自分が見たアフガニスタンの作品が忘れられず、今度は自分で取材してみたいと考える人も出てくると思います。

—— 学生なら誰でも出品できるのですか?

学生だったら、国籍、年齢に制限はありません。例年、50件程度の応募があり、ファイナリストを10作品選びます。年によってばらつきがありますが、応募作の6~9割を日本国内の作品が占めるのが一般的です。17年からは国連機関主催の映像祭「PLURAL+」と連携し、昨年はニューヨークで開催される「PLURAL+」に連れていったUFPFFの受賞者が、作品の上映とスピーチを行いました。今年もグランプリ受賞者などを連れていく予定です。

「国際平和映像祭2018」の授賞式

友達がいる国とは戦争したくない

—— 映像祭を続けるなかで、変化したことはありますか?

「PLURAL+」との連携が始まり、UFPFFは学生が映像作家として世界に発信できる登竜門的な存在に近づいてきました。それは大きな変化だと思います。また、世間でSDGsが浸透し始め、この映像祭もSDGs的な文脈で以前よりも注目を集めてきているように感じています。

いま世界では、他国や他者のことを知らないことから生じる恐れが原因で、戦争やテロが起きているように見えます。でも、友達がいる国とは戦争したくないですよね。日本だけでなく世界中の若者たちが、国籍よりもファーストネームで呼び合えるつながりを持つことができれば、暴力の連鎖は防げると思います。僕は、イラクで自爆テロがあり30人が亡くなったというニュースを見ると、30という数字ではなく、イラク人の友人は大丈夫だろうかと心配になります。世界中の人々が、アフリカであれ、南米であれ、中東であれ、どこであれ、そうした思いを馳せることができるようになればいい。どんなことも、思いから出発しますから。

分断された世界はたしかにありますが、テロに対して暴力、戦争に対して戦争で対抗するのではなく、時間はかかるかもしれないけれど、相互理解を深めていくことが根本的に大切です。UFPFFでは、映像を道具として人と人をつなぎ、長期的な視点で平和を構築していきたいと願っています。

「国際平和映像祭2017」の授賞式

大切なのはパッション、ミッション、思い

—— 動画にはどのような力があると考えていますか?

本や写真も人々の心に大きな衝撃や感動を与えますが、動画ではストーリーに音楽が乗ってくるので、人々の感情を揺さぶる要素が非常に強い。人は感動すると行動します。動画は、行動するきっかけとして非常に力があると思います。

ユナイテッドピープルで最初に公開した映画は、バングラデシュのストリートチルドレンがテーマの作品でした。これを見た学生たちが「自分にできることはないか」と考え、受け入れ側のNGOがパンクするほど大勢が現地へ飛んでいきました。そして、帰国後に報告会を開きました。そうすると、1人の体験が30人、50人、100人に追体験され、最終的には数千人、数万人に広がっていく。そうした光景をこの10年でたくさん見てきました。ですから、僕は動画の力を実感しています。

—— YouTuberブームが続き、動画を自ら制作する学生も増えています。

スマホなども含め撮影機材が身近になり、誰でも映像を作れる時代になっています。でも、重要なのは、何を伝えるのか。パッション、ミッション、自分の思いです。若者たちには、YouTubeで大食いを競うのではなく(笑い)、問題の多いこの世界をよりよいものに変えていくことにパッションを向けてほしい。

UFPFFを通じて、そうした変化をさらに大きくできればと思っています。「平和」がテーマと聞くと難しいと思うかもしれませんが、海外に目を向けなくても、自分がホッとする瞬間も平和でしょう。日常生活のなかで身近に感じる平和を映像化し、気軽に応募してくださるとうれしいです。

◇国際平和映像祭2019 は、学生を対象に、「平和」をテーマとした5分以内の映像作品を7月21日まで募集しています。応募作品の中から10組のファイナリストを選び、9月15日に横浜市で開催される国際平和映像祭2019で上映。最終審査を行う予定です。グランプリには賞金10万円と国連機関主催の映像祭「PLURAL+」への参加権が与えられます。詳細はこちらから→ http://www.ufpff.com/archives/15626

【プロフィル】
関根健次(せきね・けんじ)
一般社団法人国際平和映像祭代表理事/ユナイテッドピープル株式会社代表取締役/ピースデー・ジャパン共同代表。1976年、神奈川県生まれ。米ベロイト大学経済学部卒。2002年、ユナイテッドピープルを創業し、09年から映画配給事業を開始。11年から国際平和映像祭を開催。ユナイテッドピープルは今年、映画「もったいないキッチン」で初めて制作に進出した。

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