DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/11/29

朝日新聞✕CISCO サイバーセキュリティ出張授業@横浜市立大学サイバー空間に潜む脅威にどう立ち向かうか
――セキュリティの専門家に学ぶ

Written by 黒澤太朗、藤崎花美 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 佐々木謙一

私たちの生活環境のほとんどがデジタル化された現在、インターネットは欠かせない存在になっています。そんな中で求められているのが、インターネット経由の脅威を防ぐ「サイバーセキュリティ」であり、担い手の育成も急務となっています。朝日新聞社は、アメリカに本拠を置く世界最大のネットワーク機器会社・シスコシステムズと連携し、未来のサイバーセキュリティを担う学生に向けた「出張授業」を行っています。今回は、11月19日に横浜市立大学データサイエンス学部(横浜市金沢区)で行った出張授業の模様をお伝えします。講演と鼎談、模擬体験からなる3部構成で、1年生約60人が参加しました。

第1部:シスコシステムズキーノート講演

「サイバーセキュリティ情勢と求められる人材」

第1部の冒頭、スクリーンに自衛隊将校の写真が映し出されました。講師を務めたシスコシステムズのチーフ セキュリティ アーキテクト・仲間なかまちから さんのポートレートです。仲間さんは長らく、陸上自衛隊で指揮通信ネットワークの構築や管理、システム開発、サイバー戦の研究などに携わり、教育訓練の一環でホワイトハッカーを育成した経験もあります。2014年に退官後、コンサルティング企業や、内閣官房サイバーセキュリティセンターの上席サイバーセキュリティ分析官を経て、今年からシスコシステムズに勤務しています。異色の経歴ですが、「もともとは防衛大学校の数学物理学科で統計を専攻していました」と語り、学生たちの専攻と近い分野からキャリアをスタートさせたことを明かしました。

1日に検知する脅威事案は250万件

サイバーセキュリティは、多くの人にとって身近な問題であり、私たちが日々手にするモバイルデバイスを対象にした攻撃も広がっています。そのなかには、「国家支援型攻撃者」によるものもあります。2017年にはイスラエルの軍人が狙われました。スマホ上で女性と知り合ってメッセージのやり取りをしていたところ、一緒にゲームをするためのアプリのインストールを誘導され、その結果、スマホがハッキングされたのです。また、攻撃者の正体は不明ですが、ロサンゼルス周辺の空港内でUSB 電源を使用したところ、スマホから情報を抜かれたという事例が最近、報道されたそうです。

第2部:鼎談「セキュリティに精通した人材になるためには」

(左から)清見准教授、仲間さん、立川教授

第2部では、横浜市立大学データサイエンス学部教授の立川たちかわ仁典まさのり さん、同准教授の清見きよみまさし さんと仲間さんによる鼎談が行われました。

まず清見さんから、シスコシステムズや、他の外資系企業の研究チームにおける、海外と日本との関係性について質問がありました。これについて仲間さんは次のように答えました。
「シスコシステムズにはTalos(タロス)という、脅威分析を専門とするチームがあり、ビッグデータ解析を含む、様々な分析を実施しています。拠点はアメリカで、そこと認識を合わせながら日本で知識を広める、という形を取っています。シスコシステムズとして世界中で同じメッセージを発信するためです。逆に、一人一人のアナリストが個人の責任で、自由に考えを述べるアプローチを採用している企業もあります。」

時代にあった技術の選定としっかりとした基本・基礎を

学生からは「サイバーセキュリティの仕事に進むために、学生時代にどのような勉強をしましたか」という質問がありました。仲間さんは、防衛大学校の数学物理学科に在籍していた当時、「織田信長が鉄砲を導入して数々の戦を制した歴史に鑑み、これからの時代を制する技術は何だろう」と考え、コンピューターや統計、データ分析、セキュリティ、AIに興味を持ったそうです。大学の特性上、訓練や体力練成などに時間をとられ、思うように勉強できなかった反面、自分がやりたいことを強く意識できたため、卒業後も少しずつ勉強を重ねるモチベーションは保持できたそうです。そうした経験から「情報収集と分析は、データ分析を専門とする皆さんにとっての基礎・基本です。頑張って力を伸ばしてください」とエールを送りました。

第3部:体験「サイバーセキュリティ スカラシップ プログラム入門コース」

シスコシステムズの見松利恵さん

第3部は体験型のセキュリティ講習です。シスコシステムズは学生を対象に「スカラシップ プログラム」を実施していますが、その入門コースにあたるオンラインコースの一部が今回の出張授業で紹介されました。同社マーケティング本部の見松みまつ利恵りえ さんの進行に沿って、学生たちは提示されたウェブサイト上でハッキングに関するクイズに答えました。3種類あるハッカーのタイプを見分ける問題でしたが、なかには難問もあり、悩む学生もいました。

授業を受けた学生の一人、小田島洋斗さんは「サイバーセキュリティという言葉は知っていたのですが、具体的に学べて良かったです。仲間さんの講演では、学生時代に勉強されていたことなどを聞けました。見習っていきたいなと思いました」と語ってくれました。

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