DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2019/12/13

朝日新聞✕CISCO サイバーセキュリティ出張授業@芝浦工業大学学ぶべきは、サイバー空間に潜む脅威にどう立ち向かうか
――セキュリティの専門家に学ぶ

Written by 藤崎花美 with 朝日新聞DIALOG編集部
Photo by 佐々木謙一

私たちの生活に深く浸透しているインターネットを介した攻撃は日々急速に進化し、世界でも大きな脅威とされています。しかし、その対策は十分ではありません。日本では2020年にサイバーセキュリティを担う人材が約19万人、不足すると言われています。そこで、朝日新聞社と、アメリカに本拠を置く世界最大のネットワーク機器会社・シスコシステムズは共同で、未来のサイバーセキュリティを担う学生に向けた「出張授業」を実施しています。今回は、11月28日に芝浦工業大学工学部情報工学科(東京都江東区)で行った出張授業の模様をお伝えします。講演と対談、模擬体験からなる3部構成で、同学科准教授・福田浩章さんの講義を受講する3年生を中心に、約20人が参加しました。

第1部 シスコシステムズ キーノート講演

「サイバーセキュリティ情勢と求められる人材」

仲間力さん

「人生ばりばり、サイバーセキュリティです」と自己紹介をするのは、講師を務めた仲間なかまちからさん(42)。シスコシステムズのチーフ セキュリティ アーキテクトです。防衛大学校理工学研究科で情報工学を学び、以来ずっとサイバーセキュリティに携わっています。自衛官として培った「日本全体を守りたい」という気持ちが動機となっているそうです。2014年に自衛隊を退官し、内閣官房内閣サイバーセキュリティセンター上席分析官などを経て現在に至っています。

サイバーセキュリティ情勢を通して重要性と面白さを理解

仲間さんは講演で、標的型メール攻撃の基本や、近年のセキュリティ事案などについて解説しました。標的型メール攻撃とは、狙った相手にウイルス付きのファイルやリンクをメールで送りつけ、感染させることです。攻撃者は相手のシステムに侵入するために、思わず開きたくなるようなメールの文面を練りに練って考えるそうです。そして、1台のPCへの侵入に成功すると、そこから管理者権限のパスワードなどを解析し、他のPCやサーバにも侵入を試みるとのこと。2015年にはウクライナの電力システムが停電し、23万人に影響が及んだという事件がありましたが、これも標的型メール攻撃によるものとされているそうです。

学生たちも積極的に質問していました。中には、「どう侵入者を捕まえるのか」という質問も。仲間さんは、侵入経路を逆にたどっていく手法と、その限界について説明した上で、逆探知機能のついたファイルを開かせるといったトラップ(わな)を仕掛け、侵入者の端末を特定する方法について説明しました。

第2部 対談「セキュリティに精通した人材になるためには」

福田浩章さん

第2部では、仲間さんと、同大学工学部情報工学科准教授の福田浩章さんによる対談が行われました。

福田さんは「学生は、サイバーセキュリティに関わる用語について概念的には知っていますが、機材に多額のお金がかかるため、実践的な学びの機会がなかなかない。良い方法はないでしょうか」と質問しました。それに対して仲間さんは「ネットワークとOSの理解のために、実機演習は非常に効果的だと私も思います。実機がない場合は、仮想環境を利用した操作演習をお勧めします。例えば、ネットワーク学習のための仮想環境は、シスコのスカラシッププログラムで無料で提供しているので、ぜひ利用してください」と回答。このプログラムで基礎を学んだ後、セキュリティに精通したエンジニアを目指す場合は、ネットワーク全般の知識が身につく「CCNA」という資格を取得することを勧めました。これは、シスコシステムズが設定したネットワークエンジニアの技能を認定する資格だということです。

第3部 体験「サイバーセキュリティ スカラシップ プログラム入門コース」

見松利恵さん

第3部は体験型のセキュリティ講習でした。シスコシステムズは人材育成の一環として、学生を対象に無償で「スカラシップ プログラム」を実施しています。その入門コースにあたるオンラインコースの一部が紹介されました。同社マーケティング本部の見松利恵さんの進行に沿って、学生たちはウェブサイト上でハッキングに関するクイズに答えました。

授業後のアンケートでは、学生から様々な意見が寄せられました。「セキュリティ系の技術者を目指す上で重要な心構え、今からやっておくべきことが明確になり、とてもよかった」「第一人者の話が聞けたのはとても貴重だった」「スカラシップ プログラムの内容が面白そうなので続けていきたい」「技術者を目指す私たちが少しでも多くの知識・技術を身につけ、サイバー攻撃から人々を守らなくてはならないと思った」といった内容です。授業後も仲間さんを囲んで熱心に質問する学生たちの姿も見られました。

授業の後は、キャンパス1階に停められた「シスコネットワーク体験車 CNEV」の見学会もありました。CNEVは「Cisco Network Experience Vehicle」の略で、シスコシステムズの様々なソリューションを紹介する、いわば「動くショーケース」です。この日は出張授業に合わせて、キャンパスにやってきました。キャンピングカーを改装した車内ではネットワーク運用管理のデモ、悪意あるサイトへのアクセスをブロックするセキュリティのデモ、IoTのデモ、ビデオ会議の体験など、さまざまな最新テクノロジーに触れることができました。授業の受講生をはじめ、ネットワークの研究者の方など、大学全体から多くの学生や教職員が見学に来て、関心の高さが伺えました。

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