DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2020/01/20

プラスチックの「海ごみ」はどうすれば減らせるか
荒川でフィールドワークをして考えた

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プラスチックの海ごみによる環境破壊が世界的な問題となるなか、東京都は、プラスチックごみを減らし、持続可能な利用を促進することを目指しています。その一環で2019年10月31日、都内の大学生が参加して荒川河川敷と臨海部でのフィールドワークを実施しました。その模様をお伝えします。

1日にジャンボ機137機分のプラごみが海に

フィールドワークに出かける前に、学生たちは、環境ナビゲーターで一般社団法人日本気象環境機関代表理事の井手迫いでさこ義和よしかずさんからレクチャーを受けました。井手迫さんは登録番号第5号の気象予報士で、世界気象機関(WMO)公認の気候キャスター。海ごみをテーマにした落語を企画するなど、海ごみ問題の啓発に取り組んでいます。

参加したのは、海ごみ問題に関心を持つ大学生12人。全員が自己紹介した後、スクリーンに大量のプラスチックごみ(以下、プラごみ)が打ち上げられた写真が映し出されました。「これは日本の写真です。スリランカの気象キャスターに見せたら、『こんなのいいほうじゃん。スリランカのほうがもっとひどいよ』という反応でしたが、結構ひどいですよね」と井手迫さんは口火を切ります。

続いて映されたのは、きれいな浜辺の写真。神奈川県の湘南エリアの海岸です。「ここは僕の地元です。きれいな海なんですよ。だけど、よーく見るとあるんです」。拡大された波打ち際の写真には、ペットボトルや漁業関係の廃材など様々なごみが落ちていました。一見、きれいな浜辺にもごみが隠れていることが分かります。

湘南エリアの海岸
波打ち際をよく見ると海ごみが

「こうした海ごみの発生源はどこが一番多いのか。海で捨てられたものが多いのか、山で捨てられて流れ着いたものが多いのか、街で捨てられたものが多いのか。さて、どこでしょう?」。大学でSDGsのゼミに入っているという学生が「街です」と答えると、「お、さすがですね」と井手迫さん。「そう、街なんです。街で捨てられたごみが、雨や風が強い時に飛ばされ、側溝に流れこみ、側溝から川へ行き、川から海にたどり着きます」

次は、川と海の境目あたりで撮った動画。とてもカラフルなプラごみが漂っていました。海ごみの半分以上は街で回収されなかったごみ。そう聞いてすぐに浮かぶ言葉は“ポイ捨て”でしょう。でも、ペットボトルなどをポイ捨てする人がそんなに多いとも思えません。「これは大雨直後の観測衛星から撮った写真です。川から濁った水がドーッと海に流れ出ているのが分かります。この時に濁った水だけでなく、街のごみ箱からあふれたプラごみなども一気に海に出ているんです」

世界中で海に流れ出るプラごみの量は、年間約800万トンと言われています。この重量を365日で割ると、1日当たりの排出量はジャンボジェット機だと約137機分。毎日それだけのプラごみを回収しないと、海の中のプラごみが増え続けることになります。「2050年には、世界中の魚の重さをプラごみの重さが上回ると言われています。プラごみの量は増え続けますが、魚の数は乱獲や温暖化の影響で減っていきますから」

井手迫さんから参加者にマグネットの付いた寿司のレプリカが配られました。「この寿司ネタのうち、2050年にも食べることができるのはどれでしょうか?」。ネタは、ウナギ、イカ、中トロ、タマゴ、ネギトロ、エビ、赤貝、ツナ、イクラ、タイ、ウニ。学生たちは悩みながら、残るものと残らないものに分けてレプリカをボードに貼っていきます。全体の半分は残るという想定でしたが……。「正解は三つ。タマゴ、タイ、ウニしか残りません。しかも、環境変化の影響で、ウニはあまりおいしくない種類しかとれなくなってしまいます」。2050年のお寿司屋さんは、このままでは様変わりしそうです。

世界平均の30倍のマイクロプラスチックが日本周辺の海に

テーマはマイクロプラスチックごみに移ります。「プラごみで特に問題になっているのはマイクロプラスチックです。砂浜に小さなプラスチックがたくさんあって、これを拾うのは大変です」。マイクロプラスチックとは、プラごみが海へたどり着く間に、川の流れや太陽の紫外線、海の波の力などで分解され、直径5mm以下の大きさになったもののこと。1枚のレジ袋から出るマイクロプラスチックは数千個に上るといわれています。日本周辺の海にはとりわけマイクロプラスチックが多く、世界平均の約30倍。2015年の東京農工大学の調査では、東京湾で採取したカタクチイワシの約80%からマイクロプラスチックが検出されたそうです。私たちへの健康被害はどうなのでしょうか。「我々の体内にも入りますが、基本は便として排出されます。人体への影響については、まだ研究段階です」

話題は地球温暖化にも広がりました。「温室効果ガスの影響で生じた熱のうち93%は海に吸収されるので、温暖化が進むと海が暖まります。水温はこの100年間で世界的に1度か2度上昇しています」。海水温が上がると大気が不安定になり、異常気象が多くなります。昨年は台風で甚大な被害が出ましたが、今後はもっと強い台風が数多く押し寄せてくるかもしれません。そうなると、街のプラごみが海に大量流出する事態も増えます。

アメリカ、中国、EU、インドと比べると、日本は、プラスチック容器包装の1人当たりの廃棄量が2番目に多い国です。リサイクルが進んでいると思っている人も多いでしょうが、プラごみを燃やしてその熱を利用する熱回収が約57%を占め、資源循環に直接貢献するリサイクル率は、日本では約25%しかありません。また、ペットボトルの日本での年間販売数は232億本。その約9割に当たる206億本は回収されていますが、残る26億本は行方不明になっているそうです。

河川敷には大量のペットボトル。燃料缶やタイヤ、ボールも

海ごみについて学んだ後、学生たちは井手迫さんの案内で、荒川河川敷に集まるプラごみの様子を見に行きました。

最初に訪れたのは江東区の小松川自然地周辺です。台風15号、19号、21号の大雨から、まだそれほど日がたっていません。到着すると、清掃活動をしているNPO法人が前日に収集したごみが詰まったごみ袋が40袋くらいまとめて置いてありました。なかでも多かったのはペットボトル。他にもタイヤなど様々なごみがありました。

学生たちもトングとゴミ袋を手に河川敷でごみ拾いをしました。NPO法人が拾った後だったので、見た目は比較的きれいでした。それでも、よく見ると、たくさんのごみが草木や泥の間に埋まっていました。ひざ上まである長靴を泥だらけにした学生は、「泥で足もとがとられて移動するだけでも一苦労なのに、ごみが深く埋まっていて掘り出すのが大変」とこぼします。

一通り拾い終えて、対岸の少し下流の河川敷に移動しました。こちらは最近清掃活動が入った様子はなく、ペットボトルをはじめとした大量のプラごみが散乱していました。また、その中には、河川敷でバーベキューをしたときに使ったと思われるカセットボンベの缶や、ボールなどの遊び道具も多く目にしました。学生たちのごみ袋は見る見るいっぱいになりましたが、それでも大量のごみが残りました。とても一度に拾いきれる量ではありませんでした。

マイクロプラスチックは回収が大変

次に訪れたのは、荒川河口部にある葛西海浜公園西なぎさ。ピンセットと小さな瓶を手にマイクロプラスチックを探しました。砂浜には貝殻の破片もたくさん落ちていて、見分けるのに苦労します。学生たちは砂浜とにらめっこしながらマイクロプラスチックを探しました。一つ一つは小さな断片ですが、瓶がいっぱいになる人もいました。

フィールドワークに参加した学生たちに感想を聞きました。環境問題に関心があるという学生は、「河川敷のペットボトルのごみは果てしない量で、ペットボトルは使わないのが一番だと感じました。マイクロプラスチックになってしまうと回収が困難なことも、身をもって体験できました。マイクロプラスチックになる前に回収すること、それ以前にプラごみを出さないことの大切さがよく分かりました」と言います。また、初めてマイクロプラスチックを拾ったという学生は、「1日にジャンボ機137機分のプラごみが捨てられていると言われても想像しづらかったのですが、お寿司の話はとても印象に残っています。今あるものがなくなるのは嫌。だけど、なくなる前に食べようじゃなくて、ずっと食べられるように何とかしたいと思いました」と語りました。

今、私たちが普通に暮らしているだけで、大量のプラごみが出ます。プラごみを減らす生活に変えてみませんか? 一人ひとりの日々の取り組みが、迫りくる地球の危機を救うことにつながります。あなたも、まずは河川敷や砂浜の現状を見てみてください。

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