DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル

自分に素直になって、答えを見つけよう
彩さん

Text by 黒澤太朗 with 朝日新聞DIALOG編集部 (写真は彩さん提供)

「2030年の未来を考える」をコンセプトとする朝日新聞DIALOGは、様々な社会課題に取り組む若者に注目しています。アーティストとして活動する彩さん(23)は、単純性血管腫という病気で、顔にあざがあります。Instagramで病気を公表したのは2年前の春。以来、様々なメディアに出演してきました。Instagramを中心に発信を続ける彩さんに、現在の活動や、公表に至った経緯、コンプレックスとの向き合い方などを聞きました。

Q: 今はどんな活動をしているのですか?

A: 大学2年生のころから、GoPro(小型・軽量のデジタルビデオカメラ)を使って旅先で写真を撮り、Instagramに上げ始めました。GoProを持って世界一周をしている人をInstagramで見つけ、自分ももっと違う世界を知りたいと強く思うようになりました。現在は、フィリピンのセブ島にある語学学校でスタッフをしながら英語を勉強しています。

今は症状についての活動は特にしていませんが、お声がけいただけたら、とりあえずイエスと答えるようにしていて、メディア出演やアートモデルなどを経験させていただきました。今後は様々な形で自分を表現することに携われればと思っています。

Q: 子どものころは、どのように過ごしていましたか?

A: 生まれたときから単純性血管腫の症状がありましたが、普通に学校に行って、部活して、勉強して、という感じでした。周りの人に恵まれていたので、いじめを受けたり、嫌な思いをしたりした経験もあまりありません。

レーザー治療をやめたのは、中学1年生のとき。生まれてからずっと治療していましたが、私の場合、治療すると1週間くらい跡が残るんです。小学校の友達とは、そういうのが気にならない時期に知り合ったので、特に何も聞かれませんでしたが、中学に入ると新しい友達も増えて、やっぱりみんな、治療の跡を気にするようになる。そのことについて、会う人ごとに説明するのは面倒だったし、ここまでやって治らないなら、おそらく死ぬまで完全には治らないんだろうな、と思ったんですね。

治療して、かえって説明しなきゃいけないことが増えたり、気まずくなるきっかけを作ったりするくらいだったら、もうやらなくてもいいんじゃないかと思って、親にきっぱり言いました。親も理解してくれたので、そこでやめました。

Q: 2年前の春、Instagramで病気を公表しました。きっかけは何でしたか?

A: それが旅の話とリンクしてくるんです。海外に行くと、自分のことを説明しなければいけないことが増えます。でも、ゼロからいちいち説明していたら、周りの人の理解が追いつかない。「じゃあ、自分の見た目については、今、言ってしまおう」と思って公表しました。今の時代って、ネットに顔やプロフィルを出してるほうが、安心感があるじゃないですか。それを先に出しておけば、これからつながっていく人たちも見てくれるから、話も進みやすいと思ったんです。

Q: 病気を公表して気づいたことはありますか?

A: 誰でもコンプレックスを持っているということです。公表後、障害や病気のある方、地元の友達など、いろんな人からメッセージをもらう機会が増えました。私に悩み相談をしてくる人の中には、すごくかわいい子とか、どこにコンプレックスがあるんだろうって子もいるんですよね。そんな人でもコンプレックスを持ってるんだなあと。やっぱり、思い込みの部分が大きい。

Q: コンプレックスの原因は、そもそも何だと思いますか?

A: 人と比較することじゃないですかね。あとは、小さいころからどこかで「普通」を刷り込まれている影響もあると思います。例えば、私は小学生のころからリーダーになることが多くて、表に出ることが「普通」でした。でも、自分は表に出るタイプじゃないと思っている人もいる。そうした人が、自分と、表に出ている人たちとを比較したら、表に出ている人のほうがキラキラ輝いて見えてしまうでしょう。

大人になれば、自分がかかわるコミュニティーは自力で増やせます。でも、小中学生だと、行動範囲が家と学校くらいしかないから大変です。日本には、人と違うことに対して否定的なところや、みんなで足並みをそろえようとする傾向がある気がします。そうなると、自分が違っていることがいけないんじゃないか、と思ってしまいがちです。

私も高校までは、周りのみんなと同じように過ごしていました。大学生になって、周りと違うことをやりたいなと考えだしたときに一番困ったのは、身の回りに相談相手がいないことでした。そこで私は、それまでの日常生活の外に出て、人と会うようにしました。それによって自分のことを肯定できたし、背中も押してもらえたし、考えがアップデートされていきました。

Q: 世間では、「自分らしく生きよう」とか「ありのままに生きよう」といったフレーズをよく聞きます。

A: そうなんですけどねえ(苦笑)。伝えたいのは、まずは自分に素直になるべきだということです。自分の素直な気持ちを認識していない人って多いと思うんですよね。

「やりたいことがあるけど、事情があってできない。どうしよう?」と相談されることがよくあります。そういうとき、私はまず、「できないなら、しなきゃいいじゃん」って言うんですよ。そうすると、だいたい反論してくる。そこで、「そんなにやりたいなら、やってみれば?」と言うと、「でも、こういう事情があって……」と続く。

両方とも自分の素直な気持ちだと思うんですけど、じゃあ、そのどっちの部分が大きいのか。そういう問答を繰り返すことで、自分の本当に素直な気持ちを引き出せると思うし、私も引き出してあげたい。それが結局、自分らしく生きることにつながるんじゃないかなって思います。

Q: 「見た目問題」で悩んでいる人にアドバイスはありますか?

A: 相談されると、私は最近、「何でもいいんじゃない」って言うんです。それは「適当」っていう意味じゃなくて、どうしても無理だと思ったら無理でいいし、変えたいと思ったら変えればいい。すべての人が、自分なりの答えを自分で出せるようにしたいんです。

「私だったらそんなに悩まないよ」と言って、軽く捉えてもらえるようにするときもあります。「それが自分にとって本当に重い問題なのか」という問いに、自分で考えて答えを出し、決断し、その責任は自分が負う。そのことの大切さを伝えたいです。

Q: 2030年の未来はどうなっていると思いますか?

A: 今よりも、もっとスローペースでシンプルになるんじゃないでしょうか。ここ10年くらい、変化のスピードがすごく速くなっています。そういう時代だからこそ、私も発信するきっかけをもらいましたが、グルッと1周回って、表現やアートの一つひとつを大事にする時代、長く時間をかけて作られてゆっくりと消費されていく、もしくは長く残るものが評価される時代になっていくような気がします。

もうそろそろ、時代との追いかけっこをやめてもいいんじゃないかな。私はちょっと先回りして、スローペースで生きていこうと思っています。

彩(あや)
1997年、千葉県出身。女子栄養大学栄養学部卒。単純性血管腫であざがある自身の顔をInstagramで公開したことをきっかけに、新聞やネットニュース、テレビに出演。アートモデルなども務める。写真を撮ること、話すことが好き。

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