DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル
2020/02/19

「Guessイイ(下水イイ)!!」プロジェクト (下水道から考える未来の防災プロジェクト) 高校生に下水道の大切さを知らせたい
大学生と企業が授業案をつくってみた

【PR】 株式会社明電舎、東亜グラウト工業株式会社

地下に埋まっていて見えないけれど、下水道は24時間365日、私たちの生活を支えているインフラです。台風などで家屋が浸水したり、交通が遮断されたりすると、にわかに注目を浴びますが、普段は「縁の下の力持ち」で目立ちません。

そんな下水道の重要性をもっと若者に知ってもらうため、下水道事業に携わる明電舎と東亜グラウト工業は、朝日新聞DIALOGとコラボして、高校生向けの出前授業を企画しています。その授業案をつくるためのセッションを2019年12月に開催し、両社の専門家と教育実習経験のある大学生8人が活発に意見交換しました。さて、どのようなアイデアが生まれたのでしょうか。

下水道の重要性は災害が起きてはじめて分かる

電力や水道などの社会インフラを支える重電メーカーである明電舎は、上下水道の水処理関連設備の制御システムに強みを持ちます。下水道については、下水道内の水位をリアルタイムで監視するマンホールアンテナなどを使って、水害のリスクを低減させる取り組みをしています。下水道管の修繕を手掛ける東亜グラウト工業は、老朽化した下水道を掘り起こさずにリニューアルする光硬化管路更生工法や、シャーベット状の氷を入れてパイプの中の汚れを洗浄するアイスピグ管内洗浄工法 などで下水道管のメンテナンスをしています。

下水道の重要性や課題について多くの人に伝えるとともに、目に見えないものへの想像力を働かせることの大切さを若者たちに知ってもらいたい。そうした思いから、普段は直接の取引はないという両社が、今回タッグを組みました。これをきっかけに、下水道事業にかかわる多くの会社にも呼びかけ、下水道の大切さを啓発するプロジェクトを一緒に進められればと考えています。

セッションの冒頭、東亜グラウト工業執行役員の南洞誠さんが、授業案を考えるにあたって押さえておかなければいけない下水道の基礎知識について、以下のようなオリエンテーションをしました。

下水道は生活排水(汚水)を処理し、排除する役割を担っています。公衆衛生を保ち、街を浸水から守っているのです。地震や台風、大雨で下水道が被災すると、トイレが使用できなくなったり、汚水があふれて街が汚染されたりします。災害が起きてはじめて、下水道は私たちの生活になくてはならないものだと実感することができます。

一方、近年は下水道資源の有効利用が注目されています。下水熱や汚泥を活用し、融雪や農作物の栽培などに利用しています。南洞さんによると、「下水は宝の山」なのだそうです。

最大の課題は老朽化です。下水道は高度経済成長期以降に急激に整備がなされたことから、今後急速に老朽化した管路の増大が見込まれています。手入れが不可欠ですが、予算が足りません。また、近年は想定を超える規模の豪雨災害が頻発していて、下水道の排水能力を超えることもしばしばあります。こちらも深刻な課題です。

続いて、明電舎上席理事の横井学さんが、水資源をめぐるいくつかの論点を紹介しました。

横井さんによると、近年、日本の山林が外国企業に買われるケースがあるそうです。そこに工場などができると、水源が汚染されてしまう恐れがあります。また、最も深刻な問題は、気候変動による災害の激化です。地球上の水循環(*1)は10日から14日のサイクルで繰り返されていますが、近年の気候変動によって変化が生じ、極端な豪雨や渇水が起きています。「氾濫危険水位を超過した河川数は年々増加傾向にあり、浸水被害を最小化するハードとソフト両面の対策の必要性が高まっている」と横井さんは指摘しました。

*1水循環……地球の水は、①雨が降る→②川に流れたり、地下に染み込んだりする→③浄水場できれいな水になり、家庭や工場で利用される→④利用された後の汚水は下水道を通って下水処理場へ→⑤そこで処理され、川や海へ→⑥蒸発した水が雲をつくって再び雨に、という循環を繰り返している。

下水道を大切にすることは、水を大切にすること

オリエンテーションを受けて、大学生と両社の社員が四つのグループに分かれ、授業案の検討に移りました。大学生たちは社員たちに質問しながら、どんな授業を展開すればよいか、案を出し合います。

東京学芸大学4年の別木萌果さんは、「災害のときに、電気と食べ物に困ることは想像しやすいけれど、下水道がダメになることは想像しにくい。災害時に下水道が機能不全になった場合のことを高校生たちに想像させ、自分たちの生活がいかに下水道に支えられているかを気づかせたい」と話しました。下水道の身近さに気づき、自分ごととしてとらえてほしいとの指摘は、どの班からも出ていました。

また、東京学芸大学3年の柳澤佑乃輔さんは、「下水道を大切にすることは、水を大切にすることにつながる」と 指摘しました。

ディスカッション後に各グループが授業案を発表しました。

授業案①-東京の地下を描いてみよう

東洋大学4年の菅将大さんと東京都市大学2年の佐々木健太さんは、「地下がどうなっているのかを描いてみる」という授業を提案しました。ワークシートを用意して、高校生たちに東京の地下の様子を想像して描いてもらいます。それから両社の担当者が正解を示し、なぜそのような仕組みになっているのかを説明するとともに、近年の災害ではどこが機能不全に陥ったのかを、具体的な事例を交えて紹介します。

授業案②-下水道から、災害に強い街づくりを考える

別木さんと学習院大学3年の正生雄大さんは、100年前に計画された下水道が今の私たちの暮らしを支えている事実を知り、「私たちの想像力が100年後の生活をつくることを授業で伝えたい」と考えました。導入部ではまず、震災が起きたらどんなことで困るかを高校生たちに想像させます。電気や食べ物、飲料水はよそから運んでこられますが、下水は逆に、今あるところからどこかへ持っていかなくてはいけないことに気づかせます。高齢者がトイレを我慢して病気になったり、汚水があふれて悪臭が広がったりした事例を紹介し、下水道の役割を考えます。そのうえで、現在の下水道には、老朽化と、想定を超える災害に見舞われかねないという二つの大きな課題があり、災害に強い街をつくるにはどうすればいいかを考えさせる、という構成です。

授業案③-下水道を維持するために、付加価値を考える

東京学芸大学大学院2年の多胡遥南さんと日本大学2年の五十嵐悠真さんは、高校生が下水道について学ぶ意味は、「下水道が生徒の身近にあり、災害があったときには、より大事になる存在だから」だと考えました。グループワークで明電舎宣伝課の馬淵沙織さんから、「下水道を維持するにはコストがかかるため、下水処理場を防災拠点にするなど、付加価値をつけることが必要になっている」と教わりました。そこで授業では、下水道にどんな付加価値がつけられるかを一緒に探っていきたいと考えました。

授業案④-災害時の被害は、下水道が原因の場合もあることを知ろう

柳澤さんと東京学芸大学2年の加藤那実さんは、災害時に下水道の問題がきっかけでトイレが使えなくなるなどの被害が起こることに注目しました。下水道に問題がなければ、雨はただの雨として処理され、自分たちはもっと安全に暮らせるのではないか。それを高校生に知ってもらい、下水道の重要性を考えてもらうことを提案しました。

啓発プロジェクトのネーミングも多彩に

セッションの後半では、両社が中心になって立ち上げる、下水道の大切さを啓発するプロジェクトの名称についても、いろいろなアイデアが出ました。

下水道は汚いというイメージを払拭したいと、「下水道イメージ向上委員会」「下水道、名前変えるってよ」。もっと下水道に興味を持ってもらいたいという願いを込めて、「告白。~下水道と言われて~」。また、下水道だけにとどまらず、「地下」に関心を持ってもらおうと考えて、「地底人を探そう。東京地下探検隊」「地下から考える街づくり」。さらに、「日本に生まれてよかった。今だから」「自分たちでつくる街づくり」といった案や、GUESS(考える・推測する)という英語と「下水」を掛け合わせた「GUESSイイ!!」という案も出ました。

さらに、今回検討した高校生向けの出前授業以外に、このプロジェクトでやってみたいプランも募りました。「高校生だけでなく中学生にも出前授業をしたい」「朝日新聞DIALOGで下水処理場と浄水場の職員にインタビューして記事にしてほしい」「街づくりという観点から、地上と地下の比較をしたい」「下水道をより身近な存在にするために、VRを使って下水道をのぞいてみる体験会を実施したい」「そもそも『下水道』という言葉に汚いイメージがあるので、呼び名を変えたい」といった案が出ました。

セッションを振り返って、東亜グラウト工業の南洞さんは、「われわれ企業の人間とはずいぶん発想が違うなあ、と率直に思いました。大きな違いではなく小さな違いですが、僕にはまったく思いつかない違いがありました」と笑顔で話しました。明電舎宣伝課長の村松尚子さんは、「若者たちがこんなに下水道について語り合い、盛り上がっている。下水道愛に満ちあふれた姿を見られただけでうれしかった。(下水道の大切さを啓発する)このプロジェクトも一気にできそうだなと思いました。みなさんの知恵に感謝です」と締めくくりました。

この日のセッションを受けて、後日、両社が協議し、プロジェクト名は「Guessイイ (下水イイ)!! プロジェクト」に決まりました。学生たちがセッションを通じて提案したアイデアを踏まえ、まずは出前授業の実施に向けて、授業案をさらにブラッシュアップさせていきます。

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