DIALOG 日本の未来を語ろう :朝日新聞デジタル

こだわり国産ジーンズ 職人の誇りとともに
山脇耀平さん

By 杉山麻子(DIALOG学生記者)
写真=山脇さん提供

 「2030年の未来を考える」をコンセプトとしたプロジェクト、朝日新聞DIALOGでは、社会課題の解決を目指す若きソーシャルイノベーターの活動を継続的に紹介しています。

 今回注目したのは、「EVERY DENIM」というデニムブランドを兄弟で立ち上げ、岡山県倉敷市の児島地区を拠点にデニムをデザイン、販売しながら、職人さんの思いや誇りを届けているEVERY DENIM共同代表の山脇耀平さん(27)です。

——EVERY DENIMがどんな活動をしているのか、教えてください。

 2015年9月に僕、山脇耀平と弟の島田舜介の兄弟で立ち上げたデニムのブランドです。

 4年後の2019年9月、岡山県倉敷市児島唐琴町に「DENIM HOSTEL float」という宿泊施設とカフェを併設したショップをオープンし、EVERY DENIMの製品を販売しています。

 製造は委託しています。自分たちでデザインした製品を製作するために、工場から素材を買い、縫製、加工をしてもらって、最終完成品を自社で販売しているという形です。値段はだいたい1本、2万円前後です。

——「DENIM HOSTEL float」をつくったきっかけは何ですか。

 2014年にEVERY DENIMという名前をつけたところから説明します。最初は、岡山や広島などのデニム産地の工場の職人、経営者に取材をして発信する活動をしていました。そのときは、単純に面白い、かっこいいと思っていましたが、話を伺っていく中で、工場の大変さや日本のものづくりが衰退していることを知りました。そこから、自分たちで製品を作って販売したい、国産のデニムを多くの人に知ってもらいたいと思いました。

 2015年9月に初めて商品を作り、ウェブで販売しました。最初はお店を持っていなかったので、週末になるといろいろな地域で移動販売を行いました。

 売る場所は、洋服店ではなくて、ゲストハウスとかコミュニティースペースといったいわゆる「地域のコミュニティー」になっているようなところです。「岡山から来ました。こんなものづくりをやっています」と伝え、同時に製品を届けていくスタイルでやっていました。

 ところが次第に、 週末だけ行って帰ってくるっていうことにだんだんモヤモヤし始めまして。せっかく北海道や静岡などに行っても、会場につきっきりで、その地域のことを知ることができずに終わってしまうからです。

山脇耀平さん(左)と島田舜介さん=岡山県倉敷市のDENIM HOSTEL float、山脇さん提供

職人を訪ね キャンピングカーで全国行脚

 そこで、キャンピングカーに乗って47都道府県を回るという企画を立て、クラウドファンディングでキャンピングカーを購入し、2018年の4月にスタートさせました。

 ずっと旅に出ているわけでなく、行って帰っての繰り返しをしていました。行くエリアを毎月だいたい3、4都道府県ずつ決めて、1年3カ月かけて回り切りました。

 訪れたのは「ものづくりをしている町」です。例えば福岡県では、博多ではなく久留米。伝統産業の久留米絣(くるめがすり)を見せてもらいました。

 食の生産者や、僕らのデニムのような工業製品、日用品を作っている人とか。あとはもう少し広く考えて、暮らしを作っている住宅系の人とかまちづくり関係の人とかにもお会いして、どういった思いでやっているのかを聞きました。

——47都道府県を回って気づいたことは何ですか。

 働いて、ものを作って届けていくっていうことが、自分の暮らしている地域のためになるというのを(作り手が)実感として持っていて、だからこそ頑張っているみたいなところが見えました。

 例えば、青森県の弘前のりんご農家さんとか、愛媛県の今治のレモン農家さん。やっている仕事がそもそも地域の資源を使っていて、そこから他の地域に届けて得た収入で自分たちが暮らして、地元に還元される。

 地域と密接に結びついた生き方が僕らにはかっこよく見えて、自分たちもこの旅が終わったら、自分たちが誇りを持てる場所に胸を張って拠点を持ちたいという思いが沸々と湧いてきました。

学生時代 ふとした縁で工場見学

——そもそも、デニムは小さい頃から好きなのですか?

 ちょうど父親がアメカジ世代で、とても身近なものでした。一消費者として、高くても良いものを買いたい、長もちして丈夫なものをはきたいとも思っていました。

 雑誌とかを見ていると、誌面の上では何の違いもないように思えるのに、なんで値段がこんなにも違うのだろうと疑問に思っていました。ユニクロは3000円とかで、高いのは2万円とかだったので。

——消費者が作り手に会うのは珍しいことだと思いますが、きっかけは何だったんですか?

 弟が岡山大に進学し、岡山でジーンズの職人さんに会ったのがきっかけです。


 同席していた、弟の舜介さんが詳細を語ってくれました。

(弟:舜介)僕が所属していたサークルでは、毎月経営者の人を呼んで講演会をしたり、ビジネスコンテストを主催したりしていました。その講演会は学生も社会人も参加することができて、そこに兄を誘いました。

(兄:耀平)講演後に懇親会もあって、そこで、ジーンズのデザイナーの方と親しくなりました。35年、デザイナーをしている人です。その人が「ジーンズに興味を持った学生が見学したいって言っているから、見学させてやってよ」と工場に掛け合ってくれたんです。

 そのときは、ただのジーンズ好きな学生でした。ただ見に行きたかっただけです。個人的な工場見学みたいなことですが、そのご縁がきっかけでした。


——出身は兵庫県加古川市と伺いました。縁もゆかりもない若者がここ(児島地区)でやる意味をどう捉えているのか教えてください。

 最初に入っていくところで、結構高いハードルがあるなと思われるかもしれませんが、僕らの場合はありがたいことに、紹介していただく形で関係性を築けたのでスムーズでした。

 地元出身者は、地元の工場や自分の会社に勤める人が多いんですけれども、彼らが見ている児島と僕らが見ている児島は全然違う。僕らは、本当に海がきれいだからこの場所に(DENIM HOSTEL floatを)作りたいという気持ちになりますが、地元の人はそんな期待してないし、いいとも思っていない。

 ピュアに価値を見いだすのは、外視点じゃないとできない、と今のところ認識しています。

DENIM HOSTEL floatから見える瀬戸内海の風景

幸せを届ける やっとスタートライン

——日本のものづくり産業は衰退しているとも言われています。打開策として、外から入ってきた人が、その土地の魅力に惚れ込んで、復活させていく。山脇さんがモデルケースになるのではないでしょうか。

 僕らもそんなにまだ何も成し得てないですけれども、この場所(DENIM HOSTEL float)ができて、スタートラインに立った感じがします。他の地域や産業にも当てはまることだと思うので、お互いに刺激し合えることはあるのかなと思いますね。

 だから今の僕らでいうと、ジーンズ産地に入って業界の力になっていきたいなって思います。そのためにも、お客さんをジーンズに詳しい人だけに特化していてはもったいないかな、と思っています。

 例えば、海のきれいさに魅了されてここに来る人を増やして、ジーンズにも触れてもらって、好きになってもらう。ジーンズに貢献するためにも、いろんな切り口から児島の魅力を伝えていきたいです。

——世間一般ではファストファッションが主流で、日本のものづくりは衰退し、グローバル化が進んでいると思います。このような現状をどう見ていますか。

 旅の話を絡めて説明しますね。昨年の夏、47都道府県の旅を終えての成果報告会を、東京・新宿の伊勢丹で行いました。3週間の展示です。各地で自分たちが出会って素敵だと思った人たちのことを紹介して、真ん中に製品をポンッておいて販売をしました。素敵な思いで生まれた製品がいろんな地域にいっぱいあるので、それを使ってみる暮らしとか、生活みたいなのを魅力として届けていけたらいいなって。

 ジーンズだと、普段1000円、2000円のものを買っていた人が、いきなり2万円のものを買うのは難しいかもしれない。けれども、例えば卵なら、普段買っているものより5倍ぐらい高いものを買ってみるっていうのはできると思うんですよ。

 いつもより少しいいものを買う、そういうこだわりとか時間をかけて選ぶことのきっかけを、僕らは提供していけたらなと思っています。それを使って得られる幸せとか、過ごす時間の豊かさみたいなものも僕らは届けたい。

 そしてジーンズも、いいものに替えてみたら楽しくなるんじゃない、みたいなところを謳っていけたらいいなと思っています。

 値段が高いか安いかというよりも、自分の中でその「もの」を大事にできていれば、買った値段は関係ないと思っています。自分が大切に思えるジーンズを購入し、長く愛着を持って使っていくことで、「持ってていいな」とか「いい時間を過ごしているな」と思ってもらえたら。

海外から来て 楽しめる場を

——EVERY DENIMの強みは何でしょうか。

 一つは作り手の誇りにフォーカスしていることですね。

 例えば今、上に着ているシャツはナイロン素材といって、今までインディゴの染料では染めることができなかったもの。染めと織りの工場が「今まで世の中になかったから作りたい」っていう、意地と誇りで作ったんです。売れるから作りたいというのとはまったく逆の発想で、去年の3月に開発が成功したので、それを届けていきたいと僕らに言ってくれて。じゃあ、ということでEVERY DENIMとして製品開発をすることになりました。

 新しい素材と、そこに関わった作り手の誇りと思いを一番大切にして、製品とともに思いを届けていくっていうところが僕らの特徴だと思います。お客さんが誇りを受け取ることによって、今度は自分の職業的な誇りって何だろうって考えてもらえるとか、感情的・感性的な部分に訴えかけるような製品を作って届けていくのが僕たちだなと思っています。

——最後に、2030年にどうなっていたいですか。

 実際に作っている現場の人たちと、買って着てくれる人たちの距離が縮まっていけばいいなって思っています。町には工場はたくさんありますが、工場の横を通っても工場だと気づくことができない。それは一般の人が行く場所じゃないからっていうのがあるんですけど……

 今後は、オープンファクトリーといって、普通に一般の方が足を運べて、製造の工程を見学できて、思いを体感できて、最後に製品をその場で買えるっていう仕組みを整えていきたいなと思っています。

 それを叶えるためには、単純に自分たちが儲かったらできるっていう話じゃなくて、既存の工場との関係がより大切になってきます。

 それこそ海外から日本の工場に来て、エンターテインメントとしてものづくりを見て、買うことが楽しいって思ってもらえるような地域づくり、そういう仕組みを作っていきたいなって思います。ここから、時間をかけてやっていきたいなと思っています。


■山脇耀平さんの歩み

2014年 岡山県倉敷市児島でデニム職人さんと出会う。
工場を取材し、発信する活動を始める。
2015年 デニムブランド「EVERY DENIM」を立ち上げる。
2015年9月自社製品を、週末に各地で移動販売する。
2018年4月47都道府県をキャンピングカーで回る旅を始める。
2019年9月宿泊施設&カフェ併設、初の直営店「DENIM HOSTEL float」をオープン。

インタビューを終えて

 DIALOG学生記者の杉山麻子です。今回は、岡山県倉敷市児島の「DENIM HOSTEL float」で取材をさせていただきました。海からすぐの小高い丘にあり、波の音を聞きながら坂を上りました。

 floatは、三つの「浮かぶ」から着想を得ているそうです。一つ目は、瀬戸内海に浮かぶ島々の美しさ。夕日が沈む様子は絶景で、まるで太陽が海に浮かんでいるかのよう。ぜひ体感してほしいとのこと。二つ目は、作り手を思い浮かべながらものを使ってほしい。そして三つ目は、ここに来て浮かれて、楽しんでほしいということだそうです。

 私は、絶景を前に心が澄みわたりました。山脇さんの行動力の源は、デニムの作り手さんたちです。私たちが日々使っているものもすべて、誰かの手によってつくられています。作り手のことを思い浮かべて、ものを大切に使う。ものがあふれすぎていて、つい忘れていたことを、ここで思い出すことができました。

 インタビューの後、floatのショップを拝見しました。ジーンズはじっくり選びたいので今回は断念し、floatで履いていたジーンズ生地のスリッパを、履き心地に惹かれて購入しました。紙袋の中には商品と一枚の紙が入っていました。「ジーンズは、地球着。」という手書きのコメントと写真がプリントされていました。兄弟と職人さん、ジーンズ工場が写っています。細部にもこだわるEVERY DENIMの姿勢を、一消費者として感じることができました。

山脇耀平(やまわき・ようへい)

 EVERY DENIM共同代表。1992年、兵庫県加古川市生まれ。筑波大学社会・国際学群社会学類卒。デニム産地の岡山県倉敷市児島地区に根ざし、自社で企画・デザインする国産デニムを届ける。Forbes誌が選ぶ「アジアを代表する30歳以下の30人」に選出された。

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