2008年5月29日
画像1:パソコンのUSBポートに接続するタイプの地デジチューナー「DT―H30/U2」(バッファロー)。出力解像度を落としHDCP非対応製品やアナログRGB方式での映像出力を可能にしている
画像2:「GV―MVP/HS」(アイ・オー・データ機器)はパソコン本体内部のPCI Express x1スロットに装着するタイプの地デジチューナー
地上波や衛星放送など、テレビ放送はアナログ方式からデジタル方式へと移行が進められています。あと約3年後の2011年7月24日には、アナログ方式によるテレビ放送が終了し、完全にデジタル放送に移行する予定です。こうした動きを受け、家庭用テレビやHDD/DVDレコーダー、パソコンなど、テレビ放送が視聴できる機器は、デジタル放送対応のものへと急速に移行が進んでいます。
ところが、パソコンについてはメーカー製パソコンでデジタル放送対応テレビチューナーを搭載した製品が販売されているものの、パソコンの周辺機器としてはデジタル放送対応テレビチューナーが販売されていませんでした。これはデジタル放送対応テレビチューナー製品のみではデジタル放送の視聴や録画に必要な著作権保護技術が実現できないとされていたためでした。しかし、デジタル放送対応テレビチューナー製品のガイドラインが策定され、パソコンの周辺機器メーカー各社から対応製品が発売されることになりました。製品によって、利用できる機能は異なりますが、地上デジタル放送を受信できるだけでなく、BS/110度CSデジタル放送を受信できる製品もありますし、録画が可能な製品も販売されます。自分のパソコンに対応製品を装着し、今夏の北京オリンピックをパソコンで視聴することも可能になるわけです。
ただ、デジタル放送対応テレビチューナー製品をパソコンで利用するには、いくつかの条件があります。前述のように、デジタル放送対応テレビチューナー製品には視聴や録画に必要な著作権保護技術のガイドラインが定められており、製品を利用するパソコンを構成する機器やパーツがその条件を満たしている必要があるわけです。もちろん、地上デジタル放送を受信するためのアンテナなども必要ですし、パソコンもCPUや搭載メモリー、ハードディスク容量など、ある程度のスペックが求められます。
まず、DVIやHDMIといったデジタル方式でパソコンから画像を出力する場合、ディスプレーとグラフィックアダプター(ビデオカード)がHDCP(High―bandwidth Digital Content Protection)という規格に準拠している必要があります。HDCPは映像を出力する機器と映し出す機器を接続するとき、信号を暗号化し、コンテンツを不正にコピーされないようにする技術です。比較的、新しいディスプレーやグラフィックアダプターであれば、対応していますが、非対応の製品では何も映像が映し出されなくなるので、取り扱い説明書やメーカーに問い合わせるなどして確認する必要があります。アナログRGB方式で接続した場合は映像が出力されませんが、一部のデジタル放送対応テレビチューナー製品では解像度を低くした「SD解像度(720×480ピクセル)」での出力に限り、HDCP非対応製品やアナログRGB方式での映像出力を可能にしています。(画像1)
もうひとつの条件はパソコンのグラフィックアダプターを動作させるドライバーと呼ばれるソフトウエアが「COPP(Certified Output Protection Protocol)」という技術に対応している必要があります。COPPはパソコンで動作するソフトウエアとグラフィックチップの間でやり取りする信号を暗号化し、他のソフトウエアからの不正コピーを防ぐ技術です。これも比較的、新しい製品であれば、対応していますし、グラフィックアダプターのドライバーを最新版に更新することで、対応できることもあります。ただ、取り扱い説明書などにも明記されていないことが多く、対応/非対応がわかりにくいため、デジタル放送対応テレビチューナー製品を販売する周辺機器メーカーでは、対応をチェックできるアプリケーションを各社のWebページで配布しています。製品を購入する前に、それらで自分のパソコンの環境をチェックしてみることをおすすめします。
この2つの条件を満たしていれば、パソコンにデジタル放送対応テレビチューナー製品を装着することで、デジタル放送を楽しむことができますが、パソコンの環境が条件を満たしていないときはディスプレーやグラフィックアダプターを買い替える必要があります。そのため、デジタル放送対応テレビチューナー製品を購入して、自分のパソコンに装着するよりもデジタル放送対応テレビチューナーを搭載したメーカー製パソコンを購入した方がかえって割安になったり、手間も省けるケースが考えられます。また、デジタル放送については、録画した番組をDVDなどへのコピーする際の規制を緩和する「ダビング10」が6月2日から開始される予定でしたが、残念ながら、延期されることになってしまいました。デジタル放送対応テレビチューナーは魅力的な商品ですが、導入の手間や費用を考慮しつつ、ダビング10の動向なども見ながら、購入を検討するのもひとつの手でしょう。

ITジャーナリスト。パソコンや携帯電話など、幅広いデジタル製品の試用レポートや解説記事を執筆。携帯電話関連では業界No.1サイト「ケータイ Watch」にも連載中。「できるWindows Vista」「できる入門 今日からはじめるパソコン Windows Vista 対応」(インプレス刊)など著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。