2008年6月5日
東芝の液晶テレビ「REGZA ZH500」シリーズの本体背面にあるHDMI接続端子
薄型テレビやパソコンに接続する液晶ディスプレーの説明書や仕様書を見ていると、機器を接続するインターフェースとして、「HDMI」という名前をよく見かけます。今回はデジタル機器を接続するときに欠かせない「HDMI」について、解説しましょう。
私たちにとって、もっとも身近なAV機器と言えば、テレビです。家庭で利用するテレビは放送波を受信し、画面に番組を映し出すという構造のため、初期の頃はあまりほかの機器を接続することが考えられていませんでした。しかし、VHSのビデオデッキやレーザーディスクなどの機器が登場してきたことにより、多くのテレビにビデオ入力端子やステレオ音声入力端子が装備され、外部から入力された信号を画面上に映し出せるようになりました。
1987年にS―VHS方式のビデオデッキが登場した当時、映像信号については新たに「S端子」が利用されるようになりました。S端子は通常のビデオ入力の信号(コンポジット映像信号)のうち、輝度を表す信号(Y)と色を表す信号(C)を分離して出力する方法で、S端子の「S」は分離を表す「Separate(セパレート)」が語源とされています。
その後、ハイビジョンテレビやDVDプレーヤーが登場し、コンポーネント端子やD端子を装備するテレビやAV機器も登場し始めました。コンポーネント端子はコンポジット映像信号をRGB信号や輝度信号、色差信号などに分離し、より劣化の少ない信号の伝送を可能にしたもので、テレビとは映像信号だけで3本のケーブルで接続する仕様になっています。D端子は名前に「D」という文字が含まれているため、デジタル信号を扱うための端子というイメージを持たれがちですが、実はコンポーネント端子と同じように、分離したアナログ信号を扱う仕様になっており、それをひとつの端子で接続できるようにしています。端子の形状がアルファベットのDの形になっているため、「D端子」と呼ばれています。
このように、AV機器では高画質かつ高音質の信号を伝送するため、インターフェースの仕様が徐々に拡張されてきたわけですが、ひとつの機器とテレビを接続するために、何本ものAVケーブルを接続しなければならず、接続が複雑になるうえ、テレビの後ろでAVケーブルが邪魔になるといった事態が起きるようになってしまいました。また、デジタル放送で伝送される信号を劣化させることなく、デジタル信号のまま、出力できるインターフェースも求められるようになってきました。
こうした背景から生まれてきたのが「HDMI(High―Definition Multimedia Interface)」という端子です。HDMIはパソコンのディスプレーの接続で採用されているDVIをベースにしたもので、高品質な映像と音声のデジタル信号を同時に1本のケーブルで伝送できるようにしています。著作権保護技術にも対応し、解像度やアスペクト比などの情報も映像を出力する機器からテレビに伝送できるため、デジタル放送についても番組の仕様に合わせた表示や出力が可能です。ブルーレイディスクレコーダーから出力された信号をテレビに映し出し、音声についてはテレビのHDMI端子に接続された5.1チャンネルのサラウンドスピーカーから出力するといった使い方もできます。このほかにも電源操作を連動させたり、テレビのリモコンでサラウンドスピーカーの音量調節や信号切り替えができるなど、さまざまな操作も可能になります。
今後、デジタル放送やブルーレイディスクレコーダー、IP―TVサービスなどがより普及すると予想される中で、HDMIはテレビと他のAV機器を接続するためのインターフェースの主流になると言われています。当面はD端子やS端子などと併用する期間が続くことが予想されますが、家庭用のテレビは長期間、利用するものなので、北京オリンピックなどを控え、今夏に薄型テレビの購入を検討しているのであれば、複数のHDMI端子が装備された製品を選ぶことをおすすめします。

ITジャーナリスト。パソコンや携帯電話など、幅広いデジタル製品の試用レポートや解説記事を執筆。携帯電話関連では業界No.1サイト「ケータイ Watch」にも連載中。「できるWindows Vista」「できる入門 今日からはじめるパソコン Windows Vista 対応」(インプレス刊)など著書も多数。ホームページはPC用の他、各ケータイに対応。