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佐賀県武雄市に見る「行政」と「ツイッター」の関係(2/3ページ)

2010年9月16日

  • 筆者:斎藤幾郎・西田宗千佳

写真拡大画像1:佐賀県武雄市・樋渡啓介市長。後ろにあるのは「日本Twitter学会」第一回総会で使った垂れ幕。実は職員の手弁当によるお手製で、予算ゼロ円だ

写真拡大画像2:樋渡市長のTwitter。アカウント名は「hiwa1118」。行政に関する情報も「ダダ漏れ」されていて、別の地域に住む人々にも参考になる

市役所職員全員でTwitter、行政相談に活用へ

「なんだ宣伝か」

 そう思った方、ちょっと違うのです。確かに、武雄市の狙いに「認知度向上」があるのは事実。でも、それがメーンではないのです。

 武雄市は9月1日より、市のほとんどの職員にあたる390人がTwitterのアカウントを取得し、市民に対しての行政サービスへの応用をはじめました。日本Twitter学会の設立は、それにつながる動きです。市の職員にTwitterの利用を促進する一つの流れとして、Twitterのフラットな世界を見せる、ということもあったようです。

 Twitterを使うといっても、別に日常の雑談をするわけではありません(場合によっては、それもアリなのですが)。普段は窓口に行かねばわからないことなどを、市民から直接、市の職員に尋ねたり、市の職員同士での業務連絡の一部をTwitterで行うことで外部に「可視化」したりする、といった形で使われています。

 例えば9月5日には、同市での「防災訓練」にTwitterが使われ、各担当者や地域の間での情報交換に使われました。災害時にTwitterが確実に使えるか、という疑問はともかくとして、「災害時の情報の流れを可視化する」という意味では、非常に興味深いものとなっていました。

 Twitterを行政に使う良さを、樋渡市長は次のように話します。

「市長といっても、1人ではできることは小さいんです。でも、390人が利用するならば、すごくいろんなことができるはずだと思っています。僕たちは行政相談などしか思いつきませんが、また別の使い道が出てくるかもしれませんから。そういう期待感・わくわく感も、行政の道具として使えばいいと思っているんです」

 樋渡市長がTwitterの活用を思いつくには、ある出来事が関係していました。

 ある時、樋渡市長は、難病患者さんからの悩みの相談を受けました。「難病申請はあちこちの窓口に行かねばならず、大変。申請だけで病気になりそうだ」と。ところが、行政の仕組み上、手続きの一元化は無理でした。樋渡市長は職員との間で策を練り、市側で「代行申請」をする仕組みを整え、その患者さんの悩みに応えた、といいます。

 ところが、そのことはそれで終わりませんでした。喜んだ患者さんは、Twitterでその情報を書き込みました。すると、そのことがリツイート(書き込みを他人に転送する仕組み)され、ものすごい勢いで広がっていったのです。

「ああこれならば、行政相談もできるし、きちんと対応することそのものがとても良い広告になる」

 そう樋渡市長は感じたと言います。電話や窓口での相談とは違い、実際に「Twitter上で行った相談」の情報が、まとまった形のまま、「リツイート」という形で広がっていくことが、行政にとっても、行政サービスをうける市民にとっても大きな価値を持つ、と樋渡市長は考えたのです。

「私にとっては、リツイートの形で感謝されたことがすごくうれしかったんですよ。行政って、『感謝』されることは意外と少ないんです。この『感謝される』ということを、職員にも体感してもらいたい、という気持ちもあります」

 もう一つ、Twitterの魅力を樋渡市長は「上書き」だと言います。

「仮に僕がなにか間違った情報を伝えてしまったとしても、より正しい情報を持つ担当者から『訂正』のツイートが発せられ、上書きされていきます。それでいいんだ、ということになれば、一つの完成形ですね」

プロフィール

斎藤幾郎(さいとう・いくお)

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」(朝日新書)、「美学vs.実利『チーム久夛良木』対任天堂の総力戦15年史」(講談社)がある。

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