2011年9月8日
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「サクサク感」が最大の特徴、ソフトの作り込みで実現
ソニーがタブレットを出した、といっても、それほど驚く人はいないでしょう。それよりむしろ「まだ出していなかったの?」と感じる人の方が多いかも知れません。iPad初代モデルが出たのはもう1年半も前のこと。すでに市場には二世代目のiPad 2が登場しています。Android搭載タブレットにしても、市場にはすでにたくさんの製品があります。Honeycomb世代のAndroidを搭載したタブレットも、すでに4万円以下で販売される商品が出ているほど「当たり前」になりつつあります。
確かに、ソニータブレットに「画期的なところ」はさほどありません。折りたたみのPこそ、デザイン的にはちょっと変わっているものの、他に折りたたみのタブレットがないか、というとそうでもありません。
そんな市場に、今頃ちょっと高い価格の製品で参入してどんな意味があるの? そう思う人がいても不思議はありません。
でも、違うのです。確かに劇的なところはない製品なのですが、ソニータブレットは、他のAndroidタブレットとはちょっと違うレベルの製品になっています。
理由は「操作性」と「反応」の良さです。
iPadは快適に動作しますが、残念ながらAndroidタブレットは、すべてが快適な製品ばかりとは言えません。特に気になるのはタッチセンサーの精度です。残念ながら、最初のタッチ操作が微妙にずれて感じる製品や、指の動きに対する追従度が悪い製品の方が多い、というのが実情です。また、スクロールやウェブの読み込み速度も快適でない製品があります。iPadがこれらの点でほとんど問題を感じないことを考えると、「Androidタブレットはまだ完成度が低い」ともいえます。
ソニータブレットは、そういった点に大きく手が加えられています。採用しているLSIは、他のタブレットでも使われている「NVIDIA Tegra2 1GHz」であり、極端に高速ではありません。しかし、タッチの精度がしっかりしていて、スクロールがなめらかで、ウェブの表示も高速です。こういった一連の改善を、ソニーは「サクサク・エクスペリエンス」と呼んでいます。細かくソフトウエアのチューニングを施すことで、ぐっと完成度を上げたAndroidタブレットがソニータブレット、といっていいかも知れません。筆者の主観ですが、ようやくiPadと並列で評価しうる製品が出てきた、という印象です。(誤解のないように補足しておくと、サイズ違いや採用しているLSIの能力などの点では、ソニータブレットよりも優れたAndroidタブレットもあります)
特に注目は、「ウェブの表示速度」と「タッチ精度」です。
ウェブの表示速度については、ウェブブラウザーで時間がかかる処理を後回しにして、表示処理を優先することで、表示が始まるまでの時間を短縮する工夫が盛り込まれています。最終的にウェブページのすべてをダウンロードするまでの時間は変わらないのですが、表示がされはじめるまでの時間が早くなります。特に3G回線のように、通信が遅い環境で快適に感じるようになっています。
スクロールがなめらかで「タッチ精度」がいいと述べましたが、ソフトウエアキーボードでも「タッチ精度」の良さが感じられます。実はソニータブレットのソフトウエアキーボードは、他のタブレット用ソフトウエアキーボードと大きく違う点が一つあります。一般的なソフトウエアキーボードでは、文字が「パネルを触り、指を離した」時に入力されます。これはタッチ位置のズレが原因である入力ミスを防ぐための仕組みですが、最初に使うと違和感があるもの。パソコンなどのキーボードはスイッチなので「押した瞬間」に文字が入力されるからです。ソニータブレットの場合には、ソフトウエアキーボードでありながら、「パネルを触った瞬間」に文字が入力されます。そのため、位置さえ間違わなければ、普通のキーボードに近いフィーリングでタッチタイプできます。ただしこのような使い方を実現するには、タッチセンサーの精度が高く、「触れた位置と入力位置がずれない」ことが重要になります。センサー精度のチューニングがしっかりしていないと、このような構成は採用できません。
これらのことから、ソニータブレットは、Androidタブレットとしては珍しいほど「サクサク」動く製品になっています。この点は高く評価していいでしょう。
他方、ハードウエアとしての工夫は意外と少なく、驚きは小さい製品です。二つ折りのPも、二画面であることを生かしたソフトはまだまだ少なく「省スペース性」が中心の製品でしかない、という印象です。サイズ重視ならPもいいですが、実用性ではやはりSの方が上だと感じました。意外なほど軽く持てるので、「10インチクラスは大きい」と敬遠している人も、Sは一度試してみる価値のある製品といえそうです。
実は、SとPはほぼ同じ中身で、速度などの性能面は同じです。Sは内蔵フラッシュメモリーの容量が大きく、SDカードのスロットは「デジカメから写真を取り込むため」のものと規定されています。他方、Pは内蔵フラッシュメモリーがアプリ用の4GBしかなく、コンテンツは別途microSDカードを差し込んで保存します。こちらは頻繁にとりはずすことを想定しておらず、実質的に「ストレージ増設用」よいえます。
ですからSとPは、本体サイズと内蔵のフラッシュメモリー容量で選んでいい、といういい方もできるでしょう。

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(ビジネスファミ通)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新書)がある。