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「いい体験」を確約する熱意が生む「プロダクト」の強み(1/4ページ)

2011年12月8日

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写真:米アップル上級副社長で製品開発責任者のフィル・シラー氏拡大米アップル上級副社長で製品開発責任者のフィル・シラー氏

 iPhoneやMacBook Airなどのヒット商品を連発し、今年も元気だったアップル。その元気の秘密はなんでしょうか? アップルの製品開発責任者であり、上級副社長であるフィル・シラー氏に話を聞きました。そこでは、成功の秘密だけでなく、「ジョブズ氏亡きアップル」の姿、ライバルとの関係などについてのヒントも見えてきています。(西田宗千佳)

サービスと商品は「手に手をとって」動くもの

――特に今年、アップルが好調を維持できた理由はなんだと考えていますか?

フィル・シラー氏(以下、シラー) ありがとうございます。おっしゃる通り、今年のビジネスは非常に好調に推移しています。その理由をシンプルな言葉で表すなら「プロダクト」の一言です。いままで以上にすばらしい商品を提供することができて、それぞれのカテゴリーで横断的にすばらしい商品が用意できました。iPodからiPad、iPhone、マックに至るまでです。それぞれのカテゴリーで最も良い製品を提供し、それぞれがシームレスに連携することこそが、大きなポイントかと思います。

――アップル製品を買っている方の傾向を教えてください。以前は「iPhoneだけ」「マックだけ」という風に、単独の商品で使っている方が少なくなかったはずです。現在の傾向として、複数のアップル製品を連携させて使う方が増えている、という流れは見えてきているのでしょうか?

シラー 技術的に、新しい流れができはじめています。現在、iCloud(アイクラウド)が登場したことによって、デバイスをすべて横断的に使えるようになってきています。それぞれの商品はすばらしいものだと自負していますけれど、コンビネーションによってもっとすばらしいことができます。それこそが、アップルの大きなイノベーションと言えるのではないでしょうか。

――iCloudの位置づけについてうかがいます。iCloudのような優れたネットワークサービスは、それ自体でも利益を生めるものだと感じます。しかし、アップルの強みは、いまおっしゃっていたように「プロダクト」です。アップルのプロダクトとiCloudの関係を教えてください。

シラー 我々はシンプルに考えています。それぞれの商品をベストにしようと考えているのです。iPadやiPhoneのような商品を今後より良いものにしていくにはどうしたらいいか、と考えた時、やはりiCloudのようなサービスが必要なのではないか、という発想になったのです。商品をより良くするために、iCloudを作ったのです。

――それぞれが連携しているのは大きな強みです。問題は、技術に詳しくない方々に「連携の強み」をいかに知っていただくのか、が、アップルにとっては大きなチャレンジになるかと思います。その点をどう考えていますか?

シラー アップルは、そういうことを上手にやってきた企業だと自負しています。新しい技術を簡単に、わかりやすく伝えていくのは非常に得意です。

 例えばiPhone 4SのテレビCMで、テーマとして挙げたのはiCloudでした。30秒の広告の中で、iCloudが生活をどう変えていけるかを説明しています。同様に、ウェブサイトでの解説も、Apple Storeでの解説についても、お客様とは色々な接点があると思うのですけれど、それぞれに適切な形で、簡単にご説明できているのではないか、と考えています。

――ライバルであるグーグルやマイクロソフトは、ネットサービス自身を一つの「製品」と捉え、機器とは切り離した形でも提供を行っています。それが彼らのビジネスだからです。それに対してアップルは、あくまで「プロダクト」そのものの一部としてネットサービスを捉えている。ネットサービスだけでビジネスをするつもりはないわけですね?

シラー サービスと商品は「手に手をとって」働くものだと考えています。iTunesはまさにそうですね。AppStoreもサービスですが、これはソフトをみなさんに簡単に提供するためのものです。各サービスには、機能性はもちろん、高い信頼性がないといけません。世界各国でご利用いただけないといけません。

 しかしなにより、プロダクトにインテグレーションされていないといけないのです。アプリケーションを使うためにどうすればいいんだろう? と悩むのではなく、「とりあえずAppStoreに行けばいいんだな」と思っていただく必要がある。そのためにも、サービスと商品は「手に手をとって」一緒に進む必要があるのです。

** こういった点について、アップル製品に詳しくない方には、少し説明が必要かも知れません。

 iPhoneに代表されるアップル製品は、単独に使っても便利なのですが、それ以上に「組み合わせ」で使うと便利になっています。例えば、iPhone 4SやiPad 2には「AirPlayミラーリング」という機能があります。テレビにつなぐ「Apple TV」と、同じ無線LANがある環境で使うと、iPhone 4SやiPad2の画面を、そのままテレビ側にも、まるで転送したように映すことができます。ゲームをやる時などは、ゲーム機的な迫力が生まれます。写真をみんなで見るにも向いているでしょう。なにより大きいのは、「無線」で「かんたん」につながることです。同じ事をパソコンや他の機器でやろうと思うと、技術的にも複雑になりますし、使えるアプリ・使えないアプリがでてきてしまいます。またネットサービス「iCloud」を使うと、出先でiPhoneで撮影した写真が、自分で同期する作業をしなくても、パソコンやiPadの中に転送されるようになります。こういったサービス・機能を一貫して「ハードを作っているメーカー」が提供し、多くの機器で簡単に使えるようにしているところが、アップルの特徴といえます。

 iCloudについて、より詳しくは本連載の「iPhone 4Sレビュー」をご覧ください。**

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プロフィール

斎藤幾郎(さいとう・いくお)

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(ビジネスファミ通)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新書)がある。

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