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2012年1月19日
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斎藤・西田のデジタルトレンド・チェック

「CES2012」から観る「新しい家電の時代」(1/2ページ)

筆者 斎藤幾郎・西田宗千佳

写真:画像1:サムスン電子が展示した55型有機ELテレビの試作機。ビビッドな発色とコントラストの良さ、本体の薄さが特徴だ(撮影:西田宗千佳)拡大画像1:サムスン電子が展示した55型有機ELテレビの試作機。ビビッドな発色とコントラストの良さ、本体の薄さが特徴だ(撮影:西田宗千佳)

写真:画像2:LG電子の55型有機ELテレビの試作機。薄さはなんと「4mm」。非常に薄く、いままでの薄型テレビより、さらにデザイン面での自由度が大きく上がるのが特徴。重量も7.5kgと軽くなる(撮影:西田宗千佳)拡大画像2:LG電子の55型有機ELテレビの試作機。薄さはなんと「4mm」。非常に薄く、いままでの薄型テレビより、さらにデザイン面での自由度が大きく上がるのが特徴。重量も7.5kgと軽くなる(撮影:西田宗千佳)

写真:画像3:ソニーの新ディスプレー技術「クリスタルLEDディスプレイ」。有機EL以上の画質が実現できるのが特徴。ただし現状では、商品化の時期などは未定(撮影:西田宗千佳)拡大画像3:ソニーの新ディスプレー技術「クリスタルLEDディスプレイ」。有機EL以上の画質が実現できるのが特徴。ただし現状では、商品化の時期などは未定(撮影:西田宗千佳)

写真:画像4:東芝が発売を予定している5.1型タブレット。縦横比が21:9と、いままでのものより大幅に横長なのが特徴。ウェブの閲覧に使ったり、画面を分割して操作画面を表示したりと、様々な可能性を検討中だという(撮影:西田宗千佳)拡大画像4:東芝が発売を予定している5.1型タブレット。縦横比が21:9と、いままでのものより大幅に横長なのが特徴。ウェブの閲覧に使ったり、画面を分割して操作画面を表示したりと、様々な可能性を検討中だという(撮影:西田宗千佳)

写真:画像5:パナソニックは、リチウムイオン電池を使った蓄電技術など「エネルギーの効率利用」に関する技術を積極展示。震災以降に日本で注目された可能性を世界に広げよう、と検討している(撮影:西田宗千佳)拡大画像5:パナソニックは、リチウムイオン電池を使った蓄電技術など「エネルギーの効率利用」に関する技術を積極展示。震災以降に日本で注目された可能性を世界に広げよう、と検討している(撮影:西田宗千佳)

写真:画像6:東芝の「Life Design Box」。外観はもちろんモックアップ。家庭内に置き、電力メーターや電力会社からの送電網と連携し、電力利用全体の効率化を目指す(撮影:西田宗千佳)拡大画像6:東芝の「Life Design Box」。外観はもちろんモックアップ。家庭内に置き、電力メーターや電力会社からの送電網と連携し、電力利用全体の効率化を目指す(撮影:西田宗千佳)

 1月10日から13日(現地時間)、アメリカ・ラスベガスで、今年も家電展示会「International CES」が開かれました。アメリカは家電にとって世界最大の市場ですから、2012年の家電業界になにが起こるかは、まずこのイベントから読み解ける、ともいわれています。今年は、テレビビジネスでの苦境が伝えられるなど、日本の家電メーカーにとっては逆風が強い中での開催となりました。では、本当に日本メーカーは韓国メーカーに「やられっぱなし」なのでしょうか? 新しいヒット家電の芽はどこにあるのでしょうか? CESから見た今後のトレンドを考えてみましょう。(西田宗千佳)

写真で見る「CES2012」

韓国メーカー強し! でもそれだけではない「新しい流れ」

 アメリカ市場では、韓国メーカー、特にサムスン電子とLG電子の勢いが強くなっています。今年のCESでも、その傾向は変わりません。2メーカーは巨大なブースを作り、たくさんの顧客を集めました。記者会見にも長い行列ができ、両社の勢いを感じさせる結果となりました。

 韓国系の2社が強くなった理由は、テレビにおける「低価格化」と「デザイン重視」の流れにうまく乗ったからです。また、両社は液晶パネルの製造においても大手であり、生産面で有利。しかも、ウォン安の現在、原材料費コストの面でも人件費・製造ライン構築コストの面でも、大幅に有利となります。さらにデザイン面でも両社が「アメリカ市場にあった製品」を提供、特にサムスン電子がこの数年、トレンドを引っ張る流れが続いています。

 その流れをさらに推し進め、液晶に続くテレビ技術として両社がアピールしたのが「有機ELテレビ」です。両社とも、55型の有機ELパネルを使ったテレビを展示し、2012年中の商品化を発表しました。有機ELは、現在携帯電話などのディスプレーに使われていますが、大型化は難しいと言われてきました。両社は液晶の製造技術をうまく生かし、すでに有機ELを使った小型のディスプレーを製品化していましたが、ついに大型のテレビへと広げてきました(画像1、2)。

 有機ELテレビの特徴は、とにかく薄いこと。薄さを公開しているLG電子の製品の場合で「4mm」と、液晶テレビに比べ劇的に薄くなります。また、液晶に比べコントラスト性能も圧倒的です。液晶は裏からバックライトを照らし、その光を見る、というある意味間接的な使い方をする技術であるのに対し、有機ELは素子そのものが発光するため、発光しない「黒」と発光した部分のコントラストがしっかり表現できます。コントラスト感が生み出す「くっきりはっきり」した映像は、確かにインパクトがあります。

 液晶に続き、いかにも「次世代感」のある有機ELテレビを商品化。

「ああ、もう日本はテレビで負けてしまったのか……」

 そんな報道も、日本ではあったようです。

 でも、ちょっとまった。確かに、韓国の2社が有機ELを商品化したことは高く評価すべきことですが、それを「日本のテレビビジネスの終わり」とみるのは、あまりに単純すぎる見方です。

 有機ELテレビは展示されたものの、「いくらで」「いつ」発売になるのかは公開されていません。また、コントラストはいいものの、画質面ではどうにも関心しません。本来有機ELは豊かな色域と自然な色表現も可能なデバイスなのですが、2社の有機ELテレビは色再現性・階調性が悪く、画質の面ではまだまだ課題があるように見受けられました。どちらかといえば「話題性」と「デザイン性」を重視しして展示したもののように思えます。

 テレビ用の技術という意味では、有機EL以上に画期的なものが今回発表されました。それが、ソニーの「クリスタルLEDディスプレイ」です(画像3)。この技術は簡単に言えば、照明にも使われている「無機LED」をとにかく小型化し、ディスプレーの表面にびっしりと並べたものです。展示された55型・フルHDの試作機で約660万個のLEDを並べている計算になります。特徴は、有機ELと同じく「コントラスト」。さらにそれだけでなく、色再現性・階調性もまったく問題ありません。それでいて、消費電力は液晶テレビに負けない。展示された試作機でも、パネルの消費電力は70Wを切るといいます。まだ商品化の予定は公開されていませんが、有機ELに勝るとも劣らない可能性を持つ技術といえそうです。

 また液晶であっても、現在のフルHDの縦横2倍にあたる「4K」解像度のディスプレーと、東芝やパナソニックが展示しています。

 そもそも、画質だけではビジネスが難しくなっている、というのが、現在のアメリカのテレビ市場の特徴です。2011年末の商戦期には、60型のテレビが1000ドルを切って売られることもあったといいます。急速な大型化と低価格化により、利益率が急速に落ちている、というのが、市場全体での問題です。

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プロフィール

斎藤幾郎(さいとう・いくお)

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(ビジネスファミ通)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新書)がある。

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