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2012年5月31日
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斎藤・西田のデジタルトレンド・チェック

新規格「ac」も来年には国内お目見え?! 無線LANを「再入門」する

筆者 斎藤幾郎・西田宗千佳

写真:画像1:au(KDDI)が貸し出しをすすめている「HOME SPOT CUBE」。家庭内のネット回線に繋ぎ、無線LANルーターとして使う。本来は月額580円でのレンタルだが、スマートフォン利用者には、8月31日申し込み分まで、実質無料で貸し出される拡大画像1:au(KDDI)が貸し出しをすすめている「HOME SPOT CUBE」。家庭内のネット回線に繋ぎ、無線LANルーターとして使う。本来は月額580円でのレンタルだが、スマートフォン利用者には、8月31日申し込み分まで、実質無料で貸し出される

写真:画像2:バッファローの最新無線LANルーター「WZR-HP-G450HA」(定価1万2500円)。最大理論値450Mbpsでの通信に対応している拡大画像2:バッファローの最新無線LANルーター「WZR-HP-G450HA」(定価1万2500円)。最大理論値450Mbpsでの通信に対応している〈「WZR−HP−G450HA」を商品検索〉

写真:画像3:バッファローがアメリカ販売会社バッファロー・テクノロジー(USA)を通じアメリカで発売を開始した、[802.11ac」ドラフト規格対応無線LANルーター「WZR-D1800H」。最大1.3Gbpsでの通信が可能。日本では利用できず、購入もできない。日本では2013年以降に利用可能と思われる拡大画像3:バッファローがアメリカ販売会社バッファロー・テクノロジー(USA)を通じアメリカで発売を開始した、[802.11ac」ドラフト規格対応無線LANルーター「WZR-D1800H」。最大1.3Gbpsでの通信が可能。日本では利用できず、購入もできない。日本では2013年以降に利用可能と思われる

 パソコンを使うにしろスマートフォンやタブレットを使うにしろ、「無線LAN」「Wi-Fi(ワイファイ)」は欠かせないものです。日々使っている人にとっては当たり前のものではありますが、意外と、今起きつつある変化については知らないことも多いものです。今回は無線LANについて、最新事情も含めた上で「再入門」してみましょう。(西田宗千佳)

「携帯電話網」混雑回避に無線LANを

 無線LAN・Wi-Fiといえば、本来ケーブルを使わないとできない、機器とネットワークの間の接続を、無線で行えるようにするものです。

 無線LAN=Wi-Fi、と思っている方も多いでしょうが、厳密には違います。現在使われている無線LANは「IEEE802.11」という国際規格で定められているものですが、その普及を促進するために作られた業界団体「Wi-Fiアライアンス」によって相互接続認証が得られた機器に付けられるブランドの名前が「Wi-Fi」です。現在は、ほとんどの機器がWi-Fiアライアンスによる相互接続認証を受けるので、無線LAN機器=Wi-Fiと考えてもおおむね問題ありませんが、本来は分けて考えた方が正確です。

 携帯電話ネットワークと異なり、無線LANは機器同士の接続に使います。ですから当然、インターネットに接続する場合には、無線LANの先がインターネットに接続している必要があります。自宅では固定回線に接続する必要がありますし、持ち運んで使う「モバイル無線LANルーター」では、携帯電話回線などに接続して使うことになります。

 最近注目されているのは、携帯電話網の混み合いを緩和するために無線LANを使う、というパターンです。スマートフォンやタブレットには無線LAN接続の機能があります。インターネットととの通信をそちらに回し、携帯電話網への負担を減らすことで、ネットワークの信頼性を高めたい、というのが狙いです。

 例えばKDDIは、自社の契約者に対して「HOME SPOT CUBE」という無線LANルーターの貸し出しをすすめています(画像1)。自社のスマートフォン利用者で、スマートフォン向けの「ISフラット」もしくは「プランF(IS)シンプル/プランF(IS)」という料金プランを利用している人に対しては、8月31日までに申し込んだ場合、契約中は実質無料でこの機器をレンタルできるようになっています。一度も無線LANを使ったことがなく、携帯電話しか使ったことがない人には設定などが難しい、という難点があるのですが、携帯電話事業社側が多くのコストを負担してでも、無線LANを普及させたい、と考えているわけです。

802.11nを使うなら「5GHz帯」に注目

 とはいうものの、無線LANは最近「混雑」や「接続不良」が目立つようになってきたのも事実です。駅のように混み合う場所や、時には自宅などでも、無線LANでの通信がうまくいかない……ということもあります。

 理由は、無線LANが「自由に使えるもの」であるからです。

 機器を買ってくればすぐ使える……というのは当たり前の様に思えますが、こと「無線通信」においては、例外的なものです。一般に電波は、勝手に使うわけにはいきません。電波干渉が増えると正常な通信・放送ができなくなるため、厳密に法律で運用方法が定められています。無線LANが一般に使っている「2.4GHz帯」は、法律で「出力がごく弱い機器ならば、自由に使って良い」と定められている領域なので、無線LANのように自由な活用ができるのです。

 ただし、ここを使う機器は無線LANだけではありません。Bluetoothもおもちゃのラジコンも、電子レンジが加熱に使う電磁波も2.4GHz帯で、漏れてくる電波も同様です。使うものが多くなると正常な通信がしくくなるのは事実です。

 また、特に公衆の場にある無線LANの場合、残念ながら適切に運営されていない場合も多いようです。無線LANアクセスポイントの数を増やすためだけに、無線LANの向こうにあるインターネットが「携帯電話網」になっていたり(携帯電話網の混み合いをふせぐために無線LAN化するはずなのですから、これではなんの意味もありません)、不必要に強い電波を出力し、近隣の無線LANと干渉してしまっているものも少なくありません。特に都会の場合、自宅で無線LANの一覧を見たら、自宅のもの以外に5個も10個も見つかる、ということは珍しくないでしょう。

 そんな中でより安定した通信をするには、手持ちの無線LAN機器の設定を見直すのがいいでしょう。

 現在日本で売られている無線LAN機器では、「IEEE802.11n」という技術が使われています。802.11nでは、ここまで説明した「2.4GHz帯」の他に「5GHz帯」が使われています。802.11nに対応している機器はすでに多く売られていますし、その一方であまり5GHz帯が使われていないので、そちらを使うように設定を変えることで、より安定して高速な通信が行えるようになります。中には、設定によって空いている周波数帯を使うよう、自動設定される機器もありますが、可能であれば、5GHz帯を使うよう、設定を変更した方がいいでしょう。

 ただし、2.4GHz帯を使用するIEEE802.11bや802.11gにしか対応しない比較的古いノートパソコンや携帯ゲーム機などは、802.11nでサポートされている5GHz帯に対応しません。しかし、「最新のWZR-HP-G450HA」(画像2)などの無線LANアクセスポイントでは、802.11n対応機器では5GHz帯を、そうでない機器では2.4GHz帯を、といった風に、2つの無線LANネットワークを併用する機能を備えています。そういった機能を生かすと、安全性・安定性・速度のすべてで満足できる結果が得られるでしょう。

アメリカでは今年、日本では来年に新規格「ac」が登場

 現在、日本で利用できる無線LANは「802.11n」です。これは、日本国内の場合、理論値の最大で450Mbps(実効値では100Mbps以下)の通信を実現しています。しかし、データのバックアップなど、大容量データの転送では、これでも不足しはじめているのは事実。海外では、さらに高速な「802.11ac」という規格の準備がすすみつつあります。

 802.11acでは、2.4GHz帯でなく5GHz帯を使い、通信の規格上の最大値を3.6Gbpsにまで上げることを目標としています。802.11nでの規格上の最大値が600Mbpsですから、そのさらに6倍となるわけです。このため、802.11acは「ギガビットWi-Fi」などとも呼ばれます。802.11nが802.11b/gと互換性を持っていたように、802.11acも、802.11n以前と互換性を持ちます。ただし、利用は中心が5GHz帯になる、ということです。

 アメリカではすでに、バッファローのアメリカ販売会社バッファロー・テクノロジー(USA)が802.11acのドラフト(暫定)規格準拠の製品を発売しました。現状では、理論最大1.3Gbpsを実現し、802.11nの3倍の速度が実現できています(画像3)。

 ただし、日本ではまだこの規格は利用できません。電波利用に関する法令がまだ、802.11acでの利用に向けて改正されていないためです。今年度中には改正が行われるとみられており、実際に日本では、2013年半ば以降に商品として登場するのでは……と言われています。

 その頃には、パソコン・スマートフォン・タブレットなどでも802.11ac対応機器が出てくるとみられているため、ちょうど良い時期、ともいえるでしょう。

 いますぐに802.11acのことを考える必要はありませんが、いままでずっと使ってきた2.4GHz帯から5GHz帯へ移る時期が近づいている……というイメージだけは、もっておいた方がいいでしょう。

   ◇

無線LANルーター「HOME SPOT CUBE PXH11RWA」(プラネックス)製品情報 http://www.planex.co.jp/products/au/pxh11/

宅内向け無線LANサービス「Wi-Fi HOME SPOT」(KDDI) http://www.au.kddi.com/wifi/wifi_home_spot/index.html

無線LANルーター「WZR-HP-G450HA」(バッファロー)製品情報 http://buffalo.jp/product/wireless-lan/ap/nfinity-highpower/wzr-hp-g450ha/

次世代無線LAN規格「IEEE802.11ac」対応無線LANルーター「AirStation WZR-D1800H」(バッファロー・テクノロジー<USA>、英語サイト)製品情報 http://www.buffalotech.com/products/wireless/wireless-routers/airstation-ac1300-n900-gigabit-dual-band-wireless-router-wzr-d1800h/

プロフィール

斎藤幾郎(さいとう・いくお)

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新書)がある。

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