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2012年6月14日
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斎藤・西田のデジタルトレンド・チェック

これからのiOSは「位置」がカギ! 新プロ向けマックは「レティーナ」対応に

筆者 斎藤幾郎・西田宗千佳

【動画】iOS6の新しい地図機能をデモ

写真:画像1:WWDCが開かれた、米・ロサンゼルスのモスコーン・ウェスト。会場には基調講演を聴く為に、朝から長蛇の列ができた(撮影:西田宗千佳)拡大画像1:WWDCが開かれた、米・ロサンゼルスのモスコーン・ウェスト。会場には基調講演を聴く為に、朝から長蛇の列ができた(撮影:西田宗千佳)

写真:画像2:米・アップルCEOのティム・クック氏。ディベロッパーに対してビジネスへの協力を呼びかけた(撮影:西田宗千佳)拡大画像2:米・アップルCEOのティム・クック氏。ディベロッパーに対してビジネスへの協力を呼びかけた(撮影:西田宗千佳)

写真:画像3:新しいMacBook Proには、解像度が縦横2倍になった「Retinaディスプレイ」が搭載(撮影:西田宗千佳)拡大画像3:新しいMacBook Proには、解像度が縦横2倍になった「Retinaディスプレイ」が搭載(撮影:西田宗千佳)

写真:画像4:新しい次世代型MacBook Proである、「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」。日本では18万4800円から(撮影:西田宗千佳)拡大画像4:新しい次世代型MacBook Proである、「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」。日本では18万4800円から(撮影:西田宗千佳)

写真:画像5:マックの画面を、無線LANを介してApple TVでテレビに表示する「AirPlayミラーリング」。これまではiOS向けの機能だったが、マックも標準対応に(撮影:西田宗千佳)拡大画像5:マックの画面を、無線LANを介してApple TVでテレビに表示する「AirPlayミラーリング」。これまではiOS向けの機能だったが、マックも標準対応に(撮影:西田宗千佳)

写真:画像6:新しい「Map」の2D表示(左)。以前よりスピードなども増しているという。航空写真を使った、とてもリアルな「3D」マップも実現(右)。これがリアルタイムで、グリグリと回る(撮影:西田宗千佳)拡大画像6:新しい「Map」の2D表示(左)。以前よりスピードなども増しているという。航空写真を使った、とてもリアルな「3D」マップも実現(右)。これがリアルタイムで、グリグリと回る(撮影:西田宗千佳)

写真:画像7:Passbook。チケットや会員カードなど、「バーコード」で管理されている情報を、1つの窓口で管理する(撮影:西田宗千佳)拡大画像7:Passbook。チケットや会員カードなど、「バーコード」で管理されている情報を、1つの窓口で管理する(撮影:西田宗千佳)

 アップル関連製品向けのソフト開発者は毎年、6月のサンフランシスコに集合します。この時期に、開発者向けの国際会議「World Wide Developer's Conference(WWDC)」が開かれるからです(画像1)。今年も6月11日から15日までの5日間、開催されています。

【写真特集】新マックや新OSが発表されたWWDCを写真で

 この場では毎年、その後に発表される「新OS」の概要や、新方針が公開されます。今年は「iOS 6」「新マックOS」「新MacBook」という3つの柱が発表されました。いったいどのような発表だったのか、その概要を見ていきましょう。(西田宗千佳)

新CEOは「デベロッパーとの関係」をまず重視

 今回のWWDCは、アップルにとっても特別な意味があります。それは、創業者で現在の黄金期を築き上げた人物でもある、スティーブ・ジョブズ氏が亡くなってから、初めてのWWDCである、ということです。現CEO(最高経営責任者)であるティム・クック氏(画像2)は、長くジョブズ氏の片腕であり、すぐにアップルが変わってしまう、と考える人は少ないのですが、それでも、「クック氏がなにを言うのか」に注目が集まっていました。

 壇上に現れたクック氏が行ったのは、デベロッパーの心に「火を付ける」ことでした。

「私は、あなたの夢を実現できるプラットフォームをご提供できることを、ほんとうにうれしく思います。そしてアップルのチームは、さらにハードワークを重ね、あなた方の夢をさらに未来へ向かわせるためのイノベーションをお届けすることになりました」

 すなわち、アプリを作る「デベロッパー」によって変革がもたらされ、それを後押しする技術をアップルが提供する、という関係である、という宣言です。

 現在、アップルのiOS向けアプリストア「AppStore」には、4億を超えるアカウントが存在します。しかもそれらは、クレジットカードにひも付けられ、ワンクリックで買い物ができるものです。AppStoreには65万のアプリがあり、そのうち22万5000がiPadに最適化されたもの。そしてアプリの総ダウンロード数は「300億回」(!)を超え、アップルからデベロッパーに支払われたアプリの売上の総額は、50億ドルを超えています。

 ビジネスとして大きなパイがあり、それが人々の生活を変える可能性がある。物心両面でデベロッパーの心をくすぐろう……、それがクック氏のスピーチの狙いです。それは、開発者会議という場では正しいものです。いかに良い物を作ってもらい、それを起爆剤にしてアップルの製品を売るのか。良い関係を築くことこそが、アップルだけでなく、デベロッパーにとっても良い未来につながっているからです。

最大のトピックは「レティーナ対応MacBook Pro」

 さて、今回、まず目を惹いたのは新「MacBook」の発表です。同社のノートパソコンは、現在日本でもシェアを伸ばしています。価格の割に仕上げと性能が良く、満足度が高いためです。その新機種となると、もちろん注目の製品といえるでしょう。今回は3機種・5モデルが発表されましたが、すべて発表日である、6月11日から出荷が始まっています。

 ただし、結論からいえば、一般向けで、日本でも多く売れている「MacBook Air」の新製品は、デザイン変更を伴わない、中身の性能アップ的な改善でした。スピードはアップしますし、トータルでの完成度・お買い得度はアップしていますから、新機種もお勧めであることは間違いないのですが、「去年買ったばかりの人でもいますぐ買い換えを」という性質のものではありません。MacBook Proも同様です。順当な性能アップといえます。

 もちろん、これだけじゃ面白くありません。「次世代」もきちんと発表されています。

 次世代は「MacBook Pro」です。名前は同じですが、中身は全然別物。MacBook Airのエンジニアチームが、次世代の「プロ向けマックブック」を考えて作ったものです。

 まず、最大の違いはディスプレーです。次世代MacBook Proのディスプレーは、従来と同じ15.4インチなのですが、解像度は縦横倍(すなわちドット数では4倍)の「2880×1800ピクセル」になりました。1インチあたりのドット数(ppi)でいえば、220ppiとなります。これは、ノートパソコンとしては異例なほどの解像度です(画像3)。小型モバイルノートで、小さいが解像度が高い、というディスプレーはありましたが、15インチクラスでこれほどのディスプレーを搭載した例はありません。アップルは、第三世代iPadやiPhone 4以降と同じく、「Retina(レティーナ)ディスプレイ」と名付けています。網膜が認識しうる最小の点よりも小さい……というイメージからの命名です。ですから、新世代MacBook Proの画面も、まるで印刷物のようになめらかで見やすく、美しい表示が特徴です。そのため、新世代MacBook Proの正式名称は、「MacBook Pro Retinaディスプレイモデル」(以下レティーナモデル)と言います。

 レティーナモデルのもう一つの特徴は「薄く」「軽い」ことです。現行MacBook Proに比べ6ミリ薄い1.8センチになり、Airの最厚部と同等です。重量も2.02キロで、現行機種に比べ500グラム程度軽くなっています。モバイル機ほどは軽くないですが、性能を考えると、この薄さ・軽さは驚異的です(画像4)。

 もちろんそれには理由もあります。もっとも大きいのは、DVD(光学)ドライブとイーサネットコネクタを排除してしまったことです。「えっ!」と思われそうですが、イーサネットは無線LANで代替できますし、DVDドライブは、ソフト(後述するOS Xも含みます)がネット配信になっているので、使う機会が減っています。Airで外して成功したのだから、こちらでも思い切って! というのがアップルの発想で、確かにその分、かなりインパクトを感じるほど薄くなっています。

 他方、高性能かつ高画質になっているため、価格はそう安くはありません。最廉価モデルでも18万4800円という価格は、絶対値としては大きなものです。しかし、これだけの性能が詰め込まれているパソコンだと思うと、十分納得できる、かなりお値打ちなものと言えます。「パソコンで行った仕事でお金を儲けられる人(中身は、別にITでなくてもかまいません)」、すなわち「プロ」向けのマックといえるでしょう。

 ただし、このまま量産が進めば、2年もしないうちに、低価格なマックに同等のディスプレーが搭載されるようになるでしょう。そういう意味で、レティーナモデルは「未来の先取り」でもあります。

7月に登場する新マックOS、「iOSとの連携」を強化

 新MacBook発売に近い、7月に、新しいマックOSが登場します。その名は「OS X Mountain Lion」。今年2月に概要が公開され、この連載でもご紹介しているので、「なんとなく覚えている」という方もいるかも知れません。

 基本コンセプトは「マックにiPadの良さを」。iOSに搭載されている、「通知センター」「iMessage」「GameCenter」「iCoud連携」といった機能が、マックOSにも搭載されることになります。例えば、メールやTwitterのダイレクトメッセージ、さらにはOSのアップデートの警告などは、画面右に出る「通知センター」に表示されます。iPhoneで、メールなどの告知が「通知センター」にまとまるのと同じ感覚です。iMessageとの間で、無料でメッセージを送りあえる「Massages」も使えます。

 便利な機能としては、「AirPlayミラーリング」(画像5)もお勧めです。元々はこれも、iOS機器でApple TVと連携し、ケーブルで繋がなくても、LAN経由で画面をテレビに表示できる、というものだったのですが、Mountain Lionに搭載され、「マックの画面を、Apple TV経由でテレビに表示」できるようになります。Apple TVを買わねばいけない分、HDMIケーブルなどでつなぐよりコストはかかりますが、ケーブルのない気軽さは魅力ですし、複数台のマックやiPhoneなどを、好きな時に切り替えて表示できるは、学校やオフィスなどでは便利でしょう。普通の画面だけでなく、ゲームや映像配信なども表示できますから、「大きいテレビで迫力を出して見たい」時に有効です。

 いままで公開されていなかった、初お目見えの機能として興味深いのは「PowerNap」です。これは、マックがスリープしている間にも、メールの受信やカレンダーの同期、果てはOSのアップデートなども、自動的に行ってくれるもの。いままでのパソコンでも「タイマーでの自動起動」を使えば、似たようなことはできました。しかし、PowerNapはマックを完全に立ち上げてしまうのではなく、できる限り小電力で、静かな状態で動くので、より消費電力が少なく、自然です。しかもこれで、アップデートもサイレントに、自動で行われるようになるので、常に最新の状態で、待たされることなくマックが使えます。

 ただし、この機能を使うには、どうやら最新の、特別な省電力コントロールが必要であるようです。Mountain Lionを入れてもすべての機種で動作するわけではなく、2010年10月に発売された通称「第二世代MacBook Air」以降のMacBook Airか、MacBook Pro Retinaモデルのみが対象となる、とアナウンスされています。

 このような新機能のあるOS X Lionは、すでに述べたように7月に発売の予定。アップグレード対象は、Snow Leopard(Ver 10.6)とLion(Ver 10.7)の利用者で、価格は1700円と格安です。ただし、基本は「Mac App Store」からのダウンロード販売となり、DVDの形では配布されません。6月11日以降にマックを購入した方には、無料で提供されるそうです。

iOS 6では「地図」が大幅刷新! 3D地図がスイスイ動く

 より大きな変化を遂げるのは「iOS」です。新しいバージョンは「6」。愛称も「iOS 6」となり、2012年秋に提供が予定されています。

 iOS 6のポイントは、「地図の刷新」と「位置情報の活用」、そして「Siriの強化」です。

 これまでiOSでは、地図機能でグーグルと協力し、地図情報もグーグルから得てきました。しかしiOS 6では、アップルが地域の地図会社と協力して地図データを作成し、iOS向けとしてはまったく新しい地図機能を作りあげました。2D表示も美しく、動作速度が速いのですが、まず目を惹くのは「3D表示」が可能となったことです。ヘリコプターで世界中を飛び回り、建物など「地形」の航空写真を撮った上で、そのデータから「立体地図」が作られています(画像6)。なにより、写真と動画をご覧ください。

 この地図機能は、見た目だけではありません。地域情報とルート情報を備えており、近くのレストランを検索したり、移動したい場所までのルートを表示したりもできます。いままでの地図機能と違い、ルート検索機能から、普通のカーナビのような「Turn-by turn」ナビも可能となりました。しかも、渋滞情報は、そこで利用されているiOS機器から取得された「リアルタイムでの情報」を生かしたもので、その時間に合わせて「より早い経路を指示する」ことも可能といいます。

 そうした時に活用できるのが、音声認識によるサポート機能「Siri」です。Siriは3月に日本でも使えるようになったため、みなさんにももうおなじみでしょう。iOS 6では、さらに対応言語が増え、全部で15の言葉が使えるようになります。声で操作し、声で聞くことで、ハンズフリーならぬ「アイ(目)フリー」を実現しようとしています。

 特にこれが重要なのが、自動車の運転をしている時。視線がずれるのは危険ですし、走りながら携帯を操作するなどもっての他です。しかしSiriなら、操作は「声」ですから問題は少なくなります。アップルは、ホンダやトヨタを含む9つの自動車メーカーと提携し、12カ月の間に、それらメーカーの自動車のステアリングに、押すとSiriが働くボタンを用意する、としています。

「会員カード」「チケット」よさようなら 「Passbook」で「会員登録」の革命が?

 筆者がよりインパクトを受けたのは「Passbook」(画像7)という機能です。

 現在我々は、色んな「チケット」や「会員カード」を使っているのではないでしょうか。その多くは、表面にある「バーコード」で本人の情報を呼び出す構造です。例えば、チケットの代表格である「航空機の搭乗券」は、日本でもアメリカでも「バーコードによる発券」が一般的になっています。

 でも、それをいちいち印刷して持ち歩くのは大変。プラスチックのカードで発行される会員券は、サイフの中で邪魔になります。もちろん、スマートフォンを活用すれば解決できるのですが、いまひとつ「スマート」ではありません。飛行機に乗る時になってスマートフォンを持ち出してウェブにアクセスしたり、会員カードを使う時にアプリを立ち上げたりと、操作がバラバラで煩雑だからです。

 そこで登場するのが「Passbook」。アップルがサービスのまとめ役になり、各社のチケット・会員カード・クーポンなどの情報を、iPhoneに「仮想のカードフォルダー」があるような感じで利用するのです。Passbookにまとまっているので、呼び出しも管理も簡単です。

 しかもです。Passbookの情報は、ネットやGPSデータと強く連携します。

 スターバックスに入ってプリペイドカードを出そうとすると、すでに画面にはそのカードの「通知機能」が表示されています。あとは通知をスワイプし、直接起動するだけです。秘密はGPS。自分が地図上の「スターバックス」に近づいた時、「この人はすぐにカードを使う可能性がある」と判断し、ロック中の画面に表示するのです。

 また、航空機の搭乗ゲートが途中で変更になった場合には、ネット経由でPassbook内のチケット情報が書き換わり、新しい搭乗ゲートとバーコードを「自動的に配信」してくれます。アメリカは飛行機の時間・カウンターが頻繁に変更になるので、こういうサービスはとてもありがたいものです。

 この種のことがうまくいくには、「関連メーカーと連携がとれていること」「地域の店舗情報などがしっかりとれていること」が重要です。アップルは、SiriやMapでも活用する目的で、様々な地域情報を扱っています。iOS 5まではアメリカ国内が中心でしたが、iOS 6では「全世界」に広がります。

 日本でも、Siriや新Map、Passbookなどが活用できれば、どれだけ便利になるでしょうか?

 現時点では、それらは「基本的に日本も対象」とされているものの、どのくらい充実した情報が、どのくらいの精度で提供されているかはわかりません。しかし、仮にアップルが「ちゃんとした密度・確度の情報」を提供するのであれば、新しいサービスやビジネスのチャンスとなるでしょう。

 冒頭で述べたように、アップルはデベロッパーを大切にしています。今回は特に、「ソフト開発者」という意味でのデベロッパーだけでなく、「情報」を扱う人々の注目も集めています。新しいOSとハードの力が、デベロッパーとの良い関係によって「何倍にもなって帰って来る」ことを期待しておきましょう。

プロフィール

斎藤幾郎(さいとう・いくお)

1969年東京都生まれ。主に初心者向けのデジタル記事を執筆。朝日新聞土曜版beの「てくの生活入門」に寄稿する傍ら、日経BP社のウェブサイト日経PC Onlineにて「サイトーの[独断]場」を連載中。近著に「パソコンで困ったときに開く本」(朝日新聞出版)、「すごく使える!超グーグル術」(ソフトバンククリエイティブ)などがある。

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「形なきモノを売る時代 タブレット・スマートフォンが変える勝ち組、負け組」(エンターブレイン)、「メイドインジャパンとiPad、どこが違う? 世界で勝てるデジタル家電」(朝日新書)がある。

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