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メルマガで自殺防止策発信 映画批評と絡め人気に

2007年05月12日

 毎年、3万人以上が自ら死を選ぶ「自殺大国ニッポン」を救うにはどうするか――。札幌市出身の精神科医、佐々木信幸さん(41)が、その処方箋(せん)を米国映画の批評とからめた異色のメールマガジンと著書で平易に解き明かそうと懸命だ。「自殺は病」と訴え、「例え医師でも自らが自殺するのを防げないが、家族や職場の仲間の自殺は止められる」と説く。

写真米国で著名な映画監督と懇談する佐々木信幸さん(左)=佐々木さん提供
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 名付けて「シカゴ発 映画の精神医学」。札幌医大で学んだ佐々木さんは3年前から自殺研究で知られる米国・シカゴのイリノイ大に研究留学している。学生時代から映画好き。インターネットで届くメルマガは最新の米国映画の批評に精神医学の知識を織り交ぜて説く異色の構成だ。

 「樺沢紫苑」のペンネームで米国映画の批評にうんちくを傾け、話題の映画監督らのトークイベントをルポする。滝川市をはじめ日本で「いじめ自殺」が相次ぐと「いじめられても、親に迷惑をかけたくない、と我慢する」と、自殺予備軍の心理を分析。「本人からの相談を待つのでは手遅れ」と指摘して見せる。

 第1号の発行は、留学直後の04年夏。その年の「メルマガ」サイトの「新人賞」を獲得。いまでは約5万人が愛読する人気メルマガとなった。

 映画にからめたメルマガを発行するのは「精神医学に関心を持って欲しい。『精神科にかかったら人生の終わり』という精神病への差別、偏見が米国の2倍とされる日本の自殺率の高さの背景」と考えたからだ。

 イリノイ大では自殺者の脳の分析を手がけるが、「実験を続けて論文を書くまでに2年、3年。治療の役に立つ薬の開発には早くとも10年かかる」。そこで精神科医の経験にメルマガの読者から届いた体験談を交えて「自殺という病」(秀和システム刊)と題した著書を4月に発行した。

 佐々木さんは同僚の医師が「仕事に疲れただけ。精神科は絶対に受診しない」と治療を拒み、結局、自殺した生々しい実例をつづった。

 「自殺は自分の意志で命を絶つのではない。自殺者の90%以上はなんらかの精神疾患にかかっている。認知障害を起こし、脳は否定的な考えを導く。精神科医でも自らの自殺を防げない」

 それゆえ、「自殺を病」ととらえることを提唱。精神科の受診を促したいという。

 「自殺を防ぎたい」との思いは家族や職場の仲間の自殺を防ぐ手だてにこめた。「自殺する人は、死への恐怖や不安から自殺の可能性をほのめかす。例えば用件はないのに突然、電話をかけてくる」。精神科を円滑に受診させるための手法にも言及している。

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