2009年11月4日
インターネット上の仮想空間の「土地」投資話をめぐり、マルチ商法(連鎖販売取引)で会員を募ったさいたま市の会社の事業について、全国の消費者窓口に「強引に勧誘された」などと千件を超す相談が寄せられている。約2万3千人とされる会員からは、同社が先月にネットで開設した仮想空間にも、「土地を売買できる機能がない」などと不満の声が出ている。
相談が寄せられているのはさいたま市大宮区の「ビズインターナショナル」。仮想空間「エクシングワールド」を開設するとして、今年5月ごろまで約2年間各地で説明会を開いた。
参加者によると、ビズ社側は、この仮想空間に参加すれば日本円に換金できる「イーエン」を使って買い物をしたり、電車に乗ったりできると説明。DVDなどが入った「ビジネスキット」を約40万円で買って会員になると、開設前に土地を先行取得する権利が得られ、開設後に土地を転売、賃貸すれば収入が見込めると説明したという。
会員向けに1冊1500〜2500円で売られたカタログには仮想空間上の土地の一覧表が価格付きで紹介されており、例えば東京・六本木ヒルズタワー前の4105平方メートルは11万5028円と表示されている。08年2月に東京都渋谷区などから販売が始まり、今年8月末までに4期にわたって東京では品川や新宿など9区が売り出された。
会員がビジネスキットを売って新規会員を集めると、1人当たり2万〜千円の報酬が入る仕組みもあってビズ社は会員を増やした。国民生活センター(東京)と全国の消費者窓口に10月29日までに寄せられた相談は1025件。相談者は北海道から沖縄県まで幅広い。
朝日新聞の取材に応じた宮城県の20代の女性店員は昨年春、会員になった知人から「すごい話がある」と呼び出され、「仮想空間がオープンしたら何百万円も入ってくる」と勧められた。「借金がある」と断っても「貸す」と言われ、約40万円を払って会員になったという。
特定商取引法は、マルチ商法の勧誘で、確実に利益が出るような説明などを禁じている。相談件数が多い宮城県は9月、同法に違反する行為を複数認定し、ビズ社に対し、勧誘活動など県内での4カ月の業務停止を命じた。宮城県への報告では、ビズ社の昨年10月期の売り上げは44億9千万円、会員は今年6月で約2万3千人。
当初、PR冊子で今年6月とされていた仮想空間の開設は2度延期され、10月15日にβ(ベータ)版(試作版)が公開された。だが、「日本列島を再現する」との事前説明とは異なり、エリアは一部だけで、土地や商品の売買に必要な機能もなかった。会員には「約束と違う。金を返してほしい」「そもそも勧誘して報酬を稼ぐのが目当ての会員が多いのではないか」という声もあがっている。
ビズ社は10月末、ホームページで会員に「課金機能をはじめ多様な機能を追加するべく着実に進捗(しんちょく)しております」と説明した。朝日新聞の取材には、文書で「取材に対する答えは一切しない」と回答した。(関根和弘)