2009年11月8日
国への行政手続きを市民がインターネットで行う電子申請について、朝日新聞が64システムすべての利用状況と運用経費について調べたところ、昨年度、総申請数に占める電子申請の割合を示す利用率が10%に満たないシステムは3割あった。利用率1%未満のシステムは2割弱。ほぼすべて電子申請で行われていても、1件あたりの運用コストが1万円以上かかっていた割高なシステムもあった。
電子申請の運営経費として昨年度、219億円が計上されており、仮に利用率が10%を切るシステムを停止するだけで50億円を削減できる計算だ。予算の無駄削減に取り組む行政刷新会議は、11日からの「事業仕分け」の対象に「IT関連の調達費」を盛り込んでおり、電子申請も俎上(そじょう)にあがる見込みだ。
調査は、電子申請を導入している全官庁から(1)電子申請の利用件数と利用率(2)システムの開発費と年間の運営経費などを聞き取った。電子申請は、利用者の申請手続きの部分をオンライン化したもので、官庁側の人件費は含まれていない。
調査の結果、利用率は平均34%だったが、システムにより大きな偏りがあった。64システム中、20システムの利用率が10%未満で、うち10システムが1%未満だった。
64システムには1万3129の申請手続きが接続しており、政府はそのうち、国民に身近で申請も多い171手続きについて、各省に利用促進を指示している。ところが、4割を超える74の手続きが利用率1%未満。うち64が厚生労働省所管だった。
防衛省の55ある手続きは、この「政府促進」ではないが、情報公開申請の4件しか使われておらず、運営経費3366万円に対する1件当たりのコストは842万円になる。同省は今年3月でシステム全体を停止しており、電子申請から事実上、撤退した。
財務省の入札関連のシステムは、7645件ある申請中99.9%にあたる7640件が電子申請で行われていた。運営経費は約9千万円で、1件あたり約1万1800円のコストがかかっていた。利用率が100%になっても1件1万円以上の運用コストがかかるシステムはこれを含めて計四つあった。
政府は06年、利用率を改善しようと、専門家らを集めて電子政府評価委員会を発足させたが、同委員会が停止させたシステムは防衛省と文部科学省の二つにとどまる。これ以外に外務省が07年に、パスポート申請システムを自ら廃止した例がある程度だ。朝日新聞の試算では、電子申請システムの開発や運営などにこれまで、少なくとも2300億円以上をかけている。(鈴木逸弘、須藤龍也)