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【ネット】ツイッターが提案するゆるやかにつながるメディア

2009年9月10日

  • 筆者 伊地知晋一

 「いまなにしてる?」

 「つぶやき」のような短いメッセージを投稿するマイクロブログサービス「Twitter(ツイッター)」にログインすると、まず目に入るのがこの問いかけである。ユーザーは、その下のフォームに140文字以内で、自分の現在の状況を書き込む。

 ツイッター自体はテキストだけの非常にシンプルなサービスで、写真や画像などテキスト以外の情報を発信したい場合は、他のサービスやブログに投稿して、そのURLをツイッターに貼り付けることで表現力をカバーする。

 ツイッターは2006年7月に米国で始まり、07年以降、Facebook(フェースブック)と並び、よく話題に上がるコミュニティーとなった。日本でのスタートは08年4月だが、それ以前に、米国でツイッターがはやり始めていることを受け、07年ごろから似たようなサービスが「ミニブログ」などと呼ばれて登場した。私も08年1月に同様のサービスを立ち上げる機会があったが、今のところ国産のミニブログで「はやっている」と言えるものはないようだ。

 もっとも、ネットレイティングスの調べによると、ツイッター自体の日本でのユーザー数は09年4月の時点で約52万人。米国ではユーザーが約1700万人に達していることを考えると、日本での普及はまだ微妙な段階だろう。

◆「リアル」と競合する?日本でのツイッター

 日本では、とくに中高生の間ですでに携帯電話による「リアル」と呼ばれる使い方やサービスがすでに普及している。携帯電話向けのブログサービスの多くはメールによる投稿が可能で、今なにをしているかを誰ともなく携帯メールで発信することで、ツイッターと似たような使われ方がされているのだ。携帯メールを使い慣れている中高生にとって、リアルタイムに投稿するには適したツールだ。

 「リアル」はツイッターと異なり、テキストだけでなく写真や絵文字も使用することができ、手軽なわりには表現力の高い情報を発信することができる。この手のサービスは数多く利用されていて、これらのユーザーからすれば、ツイッターに新しさや利用したいという意欲を感じることはそれほど大きくないのかもしれない。

 ブログと海外では利用が盛んなメッセンジャーを足し合わせた形のツイッターの雰囲気よりも、ブログと携帯メールを組み合わせた「リアル」のイメージのほうが日本のユーザーには親しみやすいという面もあるだろう。

 それでも、今年に入って、私の周囲ではツイッターという言葉を頻繁に耳にするようになったことは間違いない。

 ツイッターでは、様々なユーザーが投稿することで、次々と「いまなにしてる?」の情報を見ることができる。他のユーザーの投稿を時系列に見るには、そのユーザーを「フォロー」という機能で設定する必要がある。誰をフォローするかを決めるに当たっては、友だちがフォローしている人にならってみたり、検索サービスから特定のキーワードに関する投稿をしている人を探したりする。

 私の知人が「飲みにいきたい」と投稿したところ、この知人をフォローしている数十人のうちの一人から「じゃあ今から飲みに行こう」との投稿があり、あっという間に飲み会が設定できたという。また別の知人は、奥さんの出産に立ち会ったときの状況をモバツイッター(モバイルのツイッター)で投稿。「まだまだな感じ」、「来そうだ」、「出た」など、友人たちに実況中継をした。このように今の自分の状況を簡単にみんなに知らせて、できたら反応がもらいたいという「ゆるやかなつながり」を得るというのがツイッターの楽しさだ。

 ブログほどしっかり書くのは面倒だし、SNSほど人とつながるのはうっとうしいという要求を満足させるポジションと、チャットのようなリアルタイム性がツイッターの魅力である。また、ウェブでありながら、メール同様、相手の都合を考えずに一方的に送りつけるプッシュ型の要素を含んでいることも大きい。

 ツイッターはシステムの仕様を公開することで、外部の開発者がツイッターを便利に使うためのサービスを自由に開発する環境を提供している。ツイッターがシンプルなサービスであることが、追加のアプリケーション開発や他のサービスとの連携の可能性を広げているとも言える。開発されたサービスは100以上にも及び、画像や動画投稿ができるサービスやユーザーを検索するサービス、長いURLを短縮して投稿するサービス、RSSからそのまま投稿できるサービスなど多様だ。

 パソコンにインストールして使うツールも数多くある。たとえば「Tween(ツィーン)」というツールをインストールしておくと、フォローしている人の投稿があったことをパソコン画面に通知してくれるので、いちいちウェブブラウザを立ち上げる手間が省ける。外部の開発者にサービスの機能を向上させるアプローチの代表例はフェースブックで、フェースブックの急成長はそうした開発が活発になるような環境を整えたことで成し遂げられたとする見方もある。日本でもミクシィがこの手法を取り入れている。

◆仕様を公開してユーザーがサービスを開発

 ツイッターでは、既存のサービスとの連携も進められている。「tumblr(タンブラー)」との連携がそのよい例だろう。タンブラーはウェブ上の情報をブックマークして、他のユーザーと共有するというブログとソーシャルブックマークをあわせ持つサービスだ。一般的なソーシャルブックマークサービスとは異なり、単にウェブサイトのリンクをブックマークするだけでなく、そのウェブサイトに含まれるデータそのものをアーカイブとして蓄えることができる。タンブラーに投稿することで、ツイッターにタンブラー上に蓄えられた画像などのURLが表示される。このようにツイッターは、他のウェブサービスに何かを投稿した際に第一報を知らせるツールとして機能が注目されている。

 従来のコミュニティーサービス(ブログやSNS)では互いにユーザー数を競い合う雰囲気があるが、ツイッターを見ると、ツイッターを中心としながらも、他のサービスと併用することで利用者の利便性を向上させようとしていて、よりウェブらしい考え方であると感じる。

 ツイッターは、「いまなにしてる?」を他の人に伝えてゆるやかにつながることを、ただひとつのコンセプトとする非常にシンプルなサービスだ。サービス内容の進化はユーザーに委ねられている。このような手法は、今後、支持されるサービスには必須になってくると見られる。

 そして、ユーザーの手が加えられた利用方法の部分が拡大するにつれて、当初のコンセプトが希薄となり、まったく異なるコンセプトに基づく他のサービスと似通ってくるという現象が起きることが考えられる。実際にユーザーの力を借りて進化しているフェースブックも、ツイッターと似た機能を備え始めており、利用シーンが重なる部分が現れてきている。どのようなサービスが支持され普及していくかは、いかにやる気があってセンスのよいユーザーを集められるかが勝敗の鍵になるのだろう。

◆模索が始まったツイッターのビジネス利用

 ツイッターには今のところ、広告以外に収入を上げる方法がなく、収益モデルとしては乏しいが、ツイッターをマーケティング活動に役立てる動きが一部で始まっている。コンピューターハードウエアメーカーのデルでは、定期的に特売情報を配信し、ここから自社のウェブサイトへ誘導することで販売促進につなげている。日本では09年4月にスタートしたが、米国ではすでに300万ドルの販売実績があるといわれる。

 また、米国ではCNNやニューヨーク・タイムズなど主要なニュースメディアで、ニュース速報をツイッターで配信するサービスが盛んに行われている。ニュースのテキストに自社サイトのURLを貼り付けることで、ツイッターのユーザーを誘導しようとするものだ。さまざまなニュースメディアをフォローすることで、ツイッターを見るだけで重要なニュース速報を確認することができるわけで、ツイッター自体がひとつのニュースメディアとして機能し始めている。(「ジャーナリズム」09年9月号掲載)

   ◇

伊地知晋一(いじち・しんいち)

 ゼロスタートコミュニケーションズ専務取締役。

 1968年鹿児島県生まれ。ライブドア執行役員上級副社長を経て現職。著書に『ネット炎上であなたの会社が潰れる!』(WAVE出版)など。

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