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2012年9月10日10時53分
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【ネット】あなたの点数はいくつ? ネット上の影響力を表すクラウトスコア

筆者 小林啓倫

写真:写真1:満点に近い94点となっている、オバマ大統領のクラウトスコア写真1:満点に近い94点となっている、オバマ大統領のクラウトスコア

 2011年1月20日木曜日。サンフランシスコのとある会場で、アウディの高級セダン「A8」のニューモデルをお披露目するパーティーが開かれた。招かれたのはセレブなどの特別な人物ではなく、ごく普通の人々。しかし彼らはA8に触れるだけでなく、週末にかけての3日間、同車を借りて乗り回すことまで許可された。なぜそのような待遇を受けることができたのか―その理由は、彼らが高い「クラウト(Klout)スコア」の持ち主であるという点にあった。

 クラウトスコアとは、ある人物がウェブ上でどの程度の影響力を持つのかを、1〜100点の数値で示したものである。つまりアウディは、彼らをもてなすことでA8に関するクチコミを起こせるかもしれないという期待を抱いていたわけだ。日本ではまだ知名度の低いクラウトスコアだが、海外では注目を集めるようになっており、同じような活用を行う企業が少なくない。

 例えばキャセイパシフィック航空がサンフランシスコ国際空港のラウンジ(通常はファーストもしくはビジネスクラスの乗客しか利用できない)を開放したり、ユニバーサル・ピクチャーズが映画『アジャストメント』の限定試写会を実施したりといった事例が登場している。いずれも招かれたのは、クラウトスコアが一定以上の人々だ。

 クラウトスコアを提供しているのは、米国のベンチャー企業のクラウト社。同社はツイッターやフェイスブックなどを参照することで、独自のアルゴリズムに基づいて各ユーザーのクラウトスコアを算出している。また何人ぐらいの人々に影響を与えられる可能性があるかという「トゥルー・リーチ」や、どんな話題で影響力を持つかという「トピックス」など、より詳しい評価を下すサービスも提供中だ。ソーシャルメディアに関する成績表を発行している企業、といったところだろう。

 実はこうしたスコアを提供しているのはクラウト社だけではない。ピアインデックス(PeerIndex)やクレッド(Kred)といった競合が既に存在しており、日本でもアジャイルメディアがユーザーチャート(user chart)というサービスを提供している。さらにこうした動きを総合する言葉として、「ソーシャルスコアリング」という単語も登場してきた。果たしてソーシャルスコアリングの概念、そしてクラウトを始めとしたスコアリングサービスは、ソーシャルメディア時代に不可欠な存在として定着してゆくのだろうか。

 企業にとってみれば、一般人の影響力が可視化されるというのは魅力的だ。ブログやウェブ2・0といった言葉が流行りはじめた頃から、一般の人々に働きかけることでクチコミを盛り上げようというマーケティング活動が行われていたが、あるブロガーが本当はどの程度の影響力を持っているのかという実情を把握するのは困難だった。

 さらにソーシャルメディアが普及してからは、クチコミに参加する一般人の数は爆発的に増加しており、彼ら一人ひとりの影響力を企業自らが確認するというのは現実的ではない。したがってクラウトスコアのような評価指標は、クチコミを起こしたい企業にとって貴重なものとなるだろう。

●不透明なスコアリングに今後の不安も見え隠れ

 しかし評価される立場に立つ一般人にしてみれば、スコアリングサービスは愛憎相半ばする存在かもしれない。点数や順位をつけられるという経験だけでも嬉しいものではないのに、高級車の試乗といった恩恵の有無に結びつくとなればなおさらだ。最近ではクラウトスコアが低い応募者には面接をセッティングしないという企業まで現れたとの報道もあり、仮にソーシャルスコアリングという発想に賛成できなかったとしても、それを上げる努力を強いられるという事態に陥ることも考えられる。

 そうなると「クラウトスコアの上げ方」といったものを知りたくなるのが人情だが、当然ながらクラウト社はスコアの算出ロジックを公開していない。計算の仕方が分かってしまえば、誰でも数値を操作できてしまうからだ。検索サービス各社が検索結果の表示順を決めるルールを公開していないのと同じ話である。

 しかし少しでも検索結果で上位に表示されたいという願いから、SEO(検索エンジン最適化:結果表示順を決定するルールを裏読みして、それに沿うようにウェブサイトを作成するテクニック)が編み出されてきたように、最近では実際以上にクラウトスコアを上げるためのテクニックが論じられるようになってきている。

 こうした動きはスコアの信頼性を損ないかねないだけに、クラウト社としても対応に追われているが、検索サービスの場合と同様に「いたちごっこ」の様相を呈している。

 ある意味でこうした不正行為が出てくるのは、それだけクラウトスコアが無視できない存在になっていることの裏返しと言えるだろう。ここで誰もが納得できる仕組みを構築できれば、クラウトスコアはグーグルのように強力な存在になってゆくかもしれない。あるいは他のソーシャルスコアリング企業が成功を収めるという可能性もあるだろう。いずれにしても、ここ数年の対応がカギを握ると考えられる。(「ジャーナリズム」12年9月号掲載)

   ◇

小林啓倫(こばやし・あきひと)

日立コンサルティングシニアコンサルタント。1973年東京都生まれ。筑波大学大学院地域研究研究科修了。国内SI企業、外資系コンサルティング会社等を経て、2005年より現職。著書に『リアルタイムウェブ ー「なう」の時代』『災害とソーシャルメディア』(マイコミ新書)など。

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