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配信シングル急成長、格付け異変

2008年03月08日

 昨年のヒット曲といえば「千の風になって」を思い浮かべる人が多いはず。事実シングルCDでは唯一のミリオンセラー。でも、もう一つのミリオンシングルがあったのをご存じか。携帯電話向けに音楽配信された新人バンドGReeeeNの「愛唄(あいうた)」だ。シングル曲の流通手段として配信が急成長するなか、時代の「ヒット曲」がますますわからなくなっている。

 「愛唄」は04年に始まった音楽配信サービス「着うたフル」で初めて100万回のダウンロードを記録した。曲の一部である「着うた」に対し、「フル」は一曲丸ごとの完全版。「千の風」はオリコンのシングルCDチャートこそ年間1位だが、フルでは配信されていない。一方、「愛唄」はCDチャートで24位。さらにCD2位、フル3位の宇多田ヒカル「Flavor Of Life」なんて曲もある。こちらは4日に発表されたゴールドディスク大賞で年間1位シングルに選ばれた(07年発売の曲が対象。「千の風」は06年発売)。どれが昨年最大のヒット曲なのか。

 「もちろん千の風です」

 オリコンの小池恒社長の答えは明快だ。同社は68年からシングル曲のランキングを提供してきた。

 「本当に好きなアーティストの音は手元に形として持っておきたいもの。シングルヒットはアルバム購入の道筋をつけ、ひいてはアーティストへの忠誠度を高める役目を果たしてきた。配信はまだ宣伝道具の域を出ていないのではないか」

 同社の調査によるとヒット曲の目安としてCDチャートを支持する層は7割おり、この数年変わらない。

 だが、日本レコード協会によると、昨年のCDシングル生産金額は前年比92%の469億円、一方で配信シングル(パソコン含む)は右肩上がりの383億円。1000円を超えるCDに対し、フルは1曲300〜400円ほど。枚数にあたるダウンロード数ではすでに勝っており、金額も08年に逆転するかもしれない。シングル曲の流通手段として、配信がCDに肩を並べる存在になったといえる。

 さらにこんな例もある。昨年、洋楽で指折りの人気曲となったR&B歌手ニーヨの「ビコーズ・オブ・ユー」は着うたフルで約20万ダウンロードされたにもかかわらず、シングルチャートに名前が出てこない。CDを出していないからだ。

 「配信市場の可能性がどこまであるのかを試すための実験でした。シングルを出さずとも結果的にアルバムは約50万枚のヒットに結びついた」と発売元ユニバーサルミュージック洋楽部門の加藤公隆マネージング・ディレクターは話す。「アーティストによってCDだけ、CDと配信、配信のみといった柔軟な売り方ができる時代になった」

 配信の急成長は携帯電話の技術革新の影響が大きい。通信スピードがあがり、データ保存の容量も増えた。その結果、ボタン操作だけで安価に簡単にヒット曲を買える音楽プレーヤーとして常用する人が増えた。取り扱いやすいCDラジカセの普及が、90年代のメガヒット量産に大きく貢献した構図とも似ている。

 その頃のヒット曲は現在「R35」のようなオムニバスCDに収められ、往時を知る世代に支持されている。世代を超えるヒットがなくなったといわれて久しいが、ヒットの指標となってきた音楽チャートも曲がり角を迎えている。CD、配信それぞれランキングはあるが、二つを統合したチャートはまだ、ない。

 オリコンの小池社長は「配信チャートはレコード会社の発表をうのみにするしかない。CDのように店頭での自主調査を積み上げるようにはいかず、統合チャートは作りにくい」。

 「千の風」やニーヨのようにCD、配信の一方だけしか流通しなくなれば、時代のヒット曲すら、人により全く異なるような状況が生まれるのだろうか。

 配信の隆盛とヒット曲の行方について、音楽ジャーナリストの津田大介さんは「“携帯で音楽を聴く”という行為がはやっているだけで、音楽文化を豊かにはしていない」と心配する。

 「80年代まで所有するものだった音楽は、90年代以降、消費財の一面を強めていった。配信でそんな音楽の聴き捨て文化が加速している気がする。時代のヒットとはランキングといったデータではなく、むしろ音楽体験の記憶から語り継がれていくものではないか」

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