2000年前後のITバブル崩壊から約5年。当時、従業員の大幅削減など深刻な影響が見られた米シリコンバレーにも、最近、活気が戻ってきたようだ。IT企業のニュースが豊富な地元紙「サンノゼ・マーキュリー・ニュース(SJM紙)」も、不景気な話題よりも明るい記事が多い気配。そんなSJM紙から、シリコンバレーに本社を構えるIT企業の最近の話題を拾い読みしてみた。
CEOのジョブズ氏は「セレブ」扱い アップルコンピュータ
ジョブズ氏は特大の写真とともに報じられる
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アップルコンピュータ本社
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ちょっとした話題でも記事の扱いが派手なのがアップルコンピュータ。創業者の一人でCEOのスティーブ・ジョブズ氏に関してとなると、大きな写真とともに掲載、まさに「シリコンバレーのハリウッドスター」といった様相だ。
「ジョブズの伝記で不和?」。4月26日付の1面には、ジョブズ氏の特大写真とともに、アップルが、近日発売予定だったスティーブ・ジョブズ氏の伝記を、アップルストアからすべて回収したことを報じた。本を出版したJohn Wiley & Sons社が明らかにしたもので、同出版社への「明白な報復措置」として行われたという。
ことの発端は、未発表製品の情報公開をめぐって、現在、アップルが3つのウェブサイトと法廷論争をしていることにある。アップル側は、情報の出所を明らかにすることを法廷で求めている一方で、サンノゼ・マーキュリー紙を発行するマーキュリー・ニュース社を含むいくつかの報道機関は、ウェブサイト側の公開する権利を擁護、真っ向から対立している。そして、この本の著者、ジェフリー・S・ヤング氏は80年代初期にマーキュリーニュース社の寄稿編集者だったのだ。
アップル広報は、本の回収と著者との関連についてコメントを拒否しているという。著者のヤング氏は「この本の面白いことの一つは、まったくネガティブであること。読者には、この若者(ジョブズ氏)が、世間知らずで、品がなく、スキルはあるが、賞賛に値しない人との印象を与えるかもしれない」と語っているが「失敗したことからたくさんのことを彼は学んだ、と本当に思うんだけど」とも語っている。
さらに、5月1日付のやはり1面には、この本からの引用として、ジョブズ氏とディズニーCEOとの対立が激化している、と報道。中面には全面広告と見間違えるほどの超特大のジョブズ氏の写真とともに、記事を掲載している。
いずれにせよ、一連のこの出来事で、本の注目度が増したことは間違いがないようだ。
iPod人気、業績好調 新OSも投入
アップルの業績は好調だ。主な要因は人気が続くiPod。2005年1〜3月期の当期利益は、2億9000万ドルと前年同期比で約7倍に跳ね上がった。売上高も同約70%増の32億4300万ドルに達し、「四半期としては完璧」と語るアナリストもいるほど。4月29日には、Tigerという新しいMacOSXを発表。しばらく、紙面をにぎわせそうだ。
CEO交代劇、連日トップニュースに ヒューレット・パッカード(HP)
HPの本社
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「おめでとうマーク! 前のボスは急進的すぎました。今度はあなたがより実践的であることを希望します」
3月31日付の紙面では、米コンピューター大手ヒューレット・パッカード(HP)の新CEO兼社長になったマーク・ハード氏への手紙という形式で、シリコンバレーへ歓迎と期待を記した記事を掲載している。「新しいボスは、フィオリーナ(前CEO)のハリウッドスタイルを繰り返してはいけない」。ソリューション事業やパソコン事業で苦戦を強いられた末、2月に解任された前CEOのカーリー・フィオリーナ氏からの方針転換に期待する、という論調の記事が多い。フィオリーナ氏に対する反発は、社外にも及んでいたようだ。
それにしても、このCEOの決定は、まさにSJM紙あげてのお祭りの様相。
「新CEO、突然に」「ハードはHPになにをもたらす?」「新CEOが就任会見」。果ては「HPのボス、仕事を始める」などなど、連日トップ並みの扱いで、多くの紙面を割いて報道している。
それもそのはず。HPはまさにシリコンバレーを代表する企業だからだ。「HPは、シリコンバレーでは、ただの巨大ハイテク企業ではありません。一番巨大なハイテク企業なのです。かつ、ハイテク企業の起源でもあるのです」という表現を用いて同社を丁重に紹介している。なお、同社の創業者、ビル・ヒューレットとデイブ・パッカードの二人がパロアルト市で起業したガレージは、カリフォルニア州の史跡に認定され、「シリコンバレー発祥の地」という記念碑が立っている。
さて、これらたくさんの記事の中からのごく一部、3月30日付の一面トップ記事に掲載された、ハード氏の横顔を紹介しよう。
・年齢・48歳
・ベイラー大学時代はテニス選手。一時、プロ選手を目指す。
・販売セールスマンとしてNCRに入社、25年後にはNCRのCEOに就任。
・著書は「The Value Factor」。amazon.com売り上げランク247位。
・HPでの基本給は最初の4年間は年間140万ドル。200万ドルの契約料と275万ドルの転居費用を手にした。
SJM紙の次回の「お祭り騒ぎ」は当分お預けとなることに期待したい。
業績堅調、携帯に新サービス展開も
HPの2004年11月〜2005年1月の売上高は、前年同期比10%増の215億ドル。アップルほどの増加はないが、堅調を保っているとも言えよう。同社は4月中旬、インフィニティ・ブロードキャスティング社と共同で、携帯電話にローカルFM局の放送を聴けるサービスなどを米国内で展開する、とも発表している。新CEOの今後の手腕に期待しよう。
創業者のひとりムーア氏、いまは福祉活動に貢献 インテル
インテルの本社
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「シリコンバレーのきっかけ」
そんな見出しとともに、4月7日付の1面中央には、ICのトランジスタ集積度の推移を示す巨大な棒グラフの中央に、ある技術者の写真が大きく掲載された。ムーアの法則で有名な、インテルの創業者の一人、ゴードン・ムーア氏である。
「40年前の今月、インテルの共同創業者であるゴードン・ムーア氏は、歴史的な予言をした。そして、プラムやサクラの果樹園が広がっていた牧歌的な谷(バレー)は、彼の予言通り、シリコンバレーに変貌したのだ」
同紙は続ける。「『コンピュータ基盤上のトランジスタの数は1年で倍増する』とムーア氏が発表したのは、1965年4月19日。10年後、のちにムーアの法則として知られる『基盤上のトランジスターの数は2年で倍増する』に修正した。半導体チップが、時を経るにつれて、安く、速く、小さく、そして、信頼性が向上することを、エレガントに表現した予言だった」
シリコンバレーの父とも言えるムーア氏に対し、SJM紙が特段の敬意を払っている様子が紙面から伺える。
現在のムーア氏を伝える興味深い記事も掲載されている。
今年76歳のムーア氏は、すでに引退し、シリコンバレーのスポットライトを浴びることはないという。1990年に国家技術勲章を当時のブッシュ大統領から授与されたほどの彼だが、シリコンバレーの新参者にとっては、彼はすでに知らない人となっているようだ。最近の記者会見で、「ムーアの法則は、産業において指数関数的な変化を続けているものすべてに適用されている。そこにクレジットを入れられてとてもハッピーだ」と語ったという。
今日、ムーア氏と彼の妻は、福祉貢献団体を設立し、70億ドルの資金をもとに、環境や科学分野など、ベイエリアの様々な福祉貢献活動を続けている。
彼はハワイとシリコンバレーを行き来した生活を送っており、Eメールや写真のコレクションの編集に多くの時間を費やしている。「ときどき、ソフトウエアにひどく腹が立つんだ。パソコンを再起動するのに時間が長いのに、がまんできないよ」。彼は語ったという。ムーア氏は偉ぶった堅物ではなく、気の利いた言葉を話すような、チャーミングなおじさんだ、とも付け加えている。
モバイル製品好調 ライバルの新CPUの影響に懸念も
インテルの業績も好調だ。2005年1〜3月期の純利益は22億ドルで、前年同期比で約25%増加した。売上高は94億ドルで前年同期比17%の増加。「ウォールストリートのアナリストの予想を大きく上回った」ほどで、モバイル製品の好調な需要が下支えした格好だ。ただ、4月下旬、ライバルのAMDが、二つのマイクロプロセッサーを一つの基盤に搭載した、新CPU「Opteron」を発表。今後、インテルにどう影響するかに注目が集まっている。