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2011年11月16日
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スティーブ・ジョブズ 100人の証言

西 和彦「死について考えるようになった」

聞き手・伊藤隆太郎(アエラ編集部)

写真:西 和彦(尚美学園大学教授・アスキー創業者)西 和彦(尚美学園大学教授・アスキー創業者)

写真:AERAムック「スティーブ・ジョブズ 100人の証言」(朝日新聞出版)980円AERAムック「スティーブ・ジョブズ 100人の証言」(朝日新聞出版)980円〈購入はこちら〉

ジョブズは、第4の功績へ進んでいる最中だった。
道半ばの死であり、大変に残念だ。
ジョブズもビル・ゲイツも、そして自分も同じ世代。
自分の死について考えるようになった。

 1980年代前半まで、ビジネスレターはIBMのセレクトリック・タイプライターで打つのがある種のステータスだった。ゴルフボール形のタイプヘッドを備えたこの電動タイプライターは、文字のデザインは変えられたが、文字サイズは一定だった。

 そこに第一世代のMacintoshが登場して、状況は一変した。Macでは、文字サイズも変えられるし、写真や絵を組み合わせるのも自在だ。Macで書かれたビジネスレターが増えた。このDTPシステムの誕生が、スティーブ・ジョブズの第1の功績といえる。

 その後、彼はNeXTというコンピューターを生みだし、アニメ制作会社のピクサーを成功させた。音楽や映像までもコンピューターで編集できるシステムの完成だ。これが第2の功績にあたる。

 さらに第3の功績がある。音楽プレーヤーとしてのiPodを作ったことだ。これは、ソニーとフィリップスが生み出したCDとCD―Rを市場から駆逐し、日本とヨーロッパの家電メーカーが主導していたメディア機器の主導権をアメリカのコンピューター会社が奪ったことを意味する。さらに、音楽や映像をインターネットで販売するシステムへと発展し、新しいビジネスとなった。

 これら三つの功績を打ち立て、世界を変えたジョブズは、第4の功績へ進んでいる最中だった。それは、iPhoneによって従来の携帯電話を駆逐しつつあることであり、iPadやApple TVとそのネットワークであるiCloudによってDVDやブルーレイまでも置き換えようとしていることだ。

 だが、この第4の功績は、成し遂げられるには至っていない。ジョブズにとっては道半ばの死であり、大変に残念だ。

 思えば、ジョブズもビル・ゲイツも、そして自分も同じ世代だ。30年間、コンピューターの世界でやってきたいま、自分の死について考えるようになった。

   ◇

にし・かずひこ/1956年生まれ。1977年にアスキー出版(現・アスキー)設立。その後、ビル・ゲイツの目に留まり、米マイクロソフトの極東担当副社長に。

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