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2011年11月18日
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スティーブ・ジョブズ 100人の証言

佐々木かをり「自由さと厳格さを両立していた」

聞き手・太田匡彦(アエラ編集部)

写真:佐々木かをり(イー・ウーマン社長・ユニカルインターナショナル社長)佐々木かをり(イー・ウーマン社長・ユニカルインターナショナル社長)

写真:AERAムック「スティーブ・ジョブズ 100人の証言」(朝日新聞出版)980円AERAムック「スティーブ・ジョブズ 100人の証言」(朝日新聞出版)980円〈購入はこちら〉

アップルとスティーブ・ジョブズに
ついて思うのは、自由さと
ルールに基づく厳格さの
両立です。要求される
「トーン&マナー」は厳しかった。

 私は20代だった1987年に、通訳や翻訳の専門会社ユニカルインターナショナルを創業した。そこに知人の米国人カメラマンが「使っていいよ」と置いていったのが、Macintosh Plus。Macとの最初の出合いでした。

 素晴らしい機能に驚いた。それまでは翻訳文は、タイプライターで打っていて、間違えればやりなおし。ところがコンピューターなら、修正もレイアウトも自由自在です。翌年、ユニカルの社員全員の机に、1台ずつMacを置きました。

 当時、1台70万〜80万円。米国で購入して持ち込みました。1千人以上いた通訳者や翻訳者の名簿も、言語ごとに管理するデータベースを作った。たぶんファイルメーカーだったと思います。おかげで、顧客からのさまざまな注文にも素早く対応できた。私はスティーブ・ジョブズという名前を気にしていたわけではありませんが、私の人生と会社に、彼は大きく寄与してくれました。

 89年に働く女性のネットワークをつくったときも、Macが活躍。パソコン通信の会議室を使って議論を深めました。92年には、ユニカルの登録者にこう宣言しました。

「今日現在、電子メールを使っていない人には、もう仕事がいきません」

 95年には、このネットワークの年次総会で、米国のアップル本社と結んでテレビ会議を実演してみせました。日本のアップルの社内報を制作していたこともあります。

 アップルとスティーブ・ジョブズについて思うのは、のびのびした自由さとルールに基づく厳格さの両立です。アップルの社内報づくりでは、取材は自由でしたが、要求される「トーン&マナー」は厳しかった。トーン&マナーとは、表現の一貫性を保つためのスタイルや方法などのルールのこと。アップルという会社は、これが厳密だった。日本の企業との差を感じます。

 日本人は、「技術がよければ製品は売れるはずだ」などと過信している節があります。でも、本当はそうじゃない。「伝える力」「見せる力」を軽視してはいけない。企業のトーン&マナーを確立し、いかにコミュニケーション力を高めるかが重要なんです。

 それは私のテーマであり、スティーブ・ジョブズのテーマでもあったでしょう。彼を心底、知っているわけでもない私がこう言うのはおこがましいですが、私は彼に、ずっと親近感を持ってきました。

   ◇

ささき・かをり/1959年生まれ。80年代に、言語能力と専門性の両面をデータベース化した通訳者・翻訳者のネットワークを作り上げ、注目された。96年からは毎夏「国際女性ビジネス会議」を開催。2児の母。

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