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2011年11月22日
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スティーブ・ジョブズ 100人の証言

佐藤可士和「私の中でジョブズはロックスター」

聞き手・中原一歩(ライター)

写真:佐藤可士和(アートディレクター)佐藤可士和(アートディレクター)

写真:AERAムック「スティーブ・ジョブズ 100人の証言」(朝日新聞出版)980円AERAムック「スティーブ・ジョブズ 100人の証言」(朝日新聞出版)980円〈購入はこちら〉

大好きなロックバンドのアルバムを待つような感覚で
アップルの新製品を心待ちにしていました。
ジョブズのおかげで、アップルのデバイスやプロダクツに
興奮し、興味を失ったものがたくさんあります。

 私の中でスティーブ・ジョブズは「ロックスター」。彼を失ってしまったアップルは、ジョン・レノンを失ったビートルズのようなもので、なんだかとっても寂しい気持ちがします。

 博報堂に入社したのが1989年。社会人デビューと同時にMacに出合いました。この箱ひとつあれば、デザインだけでなく、音楽や映像の編集などなんでもできる。当時はポスターのデザインをするにしても、写植を使って文字を印画紙に印字して、版下を作らなくてはならず、コストと時間がデザインの可能性を制限していました。

 それが、Macの登場によって無限のシミュレーションが可能になった。当時は日本語のフォントも少なく容量も限られていましたが、これらは瞬く間に進化を遂げると確信しました。社会人1年目の冬のボーナスでMac一式を買い揃え、毎晩、ドリームマシーンを手に入れた少年のように英語の説明書を読んでは夢中でいじっていましたね。

 自分の会社を設立したあとも、大好きなロックバンドのアルバムを待つような感覚でアップルの新製品を心待ちにしていました。ジョブズのおかげで、バンドのニューアルバムよりも、アップルの新しいデバイスやプロダクツに興奮し、興味を失ったものがたくさんあります。音楽やアート、ファッションと並んで、私の生活の中に「ジョブズ」という領域が確立されました。

 彼の最大の功績は、20世紀型の会社の最終形、理想型を世界中の人々に知らしめたことだと思っています。例えば、グーグルやアマゾン、日本の楽天などの企業は、インターネットを媒介とした集合知で成り立つ21世紀型の企業。対してアップルは、ジョブズというひとつの意思で全てのコンセプトを完璧にコントロールする20世紀型のブランディングを確立しました。

 プロダクツを販売するという点では、ラグジュアリーブランドのポルシェやルイ・ヴィトンも成功したと思いますが、結局は高級ブランドで、「マス」を相手にしたとは言えない。世界中の人々に、もっとも分かりやすく、デザインとは、クリエーティブとは何かを浸透させ、株式時価総額でも世界1位を達成したという事実は、数字の上でも彼の20世紀型ブランディング手法が認められた瞬間でした。

 私は様々な分野で活躍する多くの偉人に影響を受けました。

 ミケランジェロ、ピカソ、スティーブン・スピルバーグ、ビートルズ……そしてスティーブ・ジョブズ。彼が生み出したMacとの出合いがなければ、「アートディレクター佐藤可士和」はこの世の中に存在していなかったかもしれません。

   ◇

さとう・かしわ/1965年生まれ。博報堂を経て2000年にサムライ設立。商品広告、ユニクロに代表される店舗のクリエーティブディレクション、美術館や病院のブランディングまで、幅広く手掛ける。

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