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ZeroOne San Joseリポート(2)

最先端コンピュータ・テクノロジーを駆使したアートフェスティバル

2006年08月17日

asahi.com編集部 藤谷 浩二(サンノゼ)

 「ZeroOne San Jose」の2大テーマは「最先端のデジタル・アート」と「インタラクティブ・アート(参加型の芸術)」。SF映画を思わせるような先鋭的な作品から、ほのぼのとした参加型アートまで、アイデアを凝らした作品が街を彩った。ユニークな作品の数々を紹介する。(カッコ内はアーティスト名と関連のウェブサイト)

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カラオケアイス

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ピンプマイハート

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スケートソニック

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99レッドバルーン

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ピジョンブログ

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ラブウィルス

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SEEN

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シークレッツ

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CNN plusplus

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チットチャットクラブ

●参加する

■カラオケ・アイス
 一見したところ、アイスクリームを売り歩くカラフルで可愛い小型トラックの屋台。ところが、荷台をあけるとカラオケのステージに早変わり。コンピュータにプログラミングされたカラオケをバックに、街行く人々がつかの間の歌手気分を味わえる。なんとも肩の力の抜けた、ポップな作品だ。
 ZeroOne期間中は連日、来場者による「カラオケ・アイス・バトル」が開かれ、子どもから大人まで人気を集めていた。参加者の映像と歌は記録され、ウェブサイトでも公開される。人気投票に参加もできる。ニューヨークなどでアーティスト、デザイナーとして活動する女性3人組の共作。
(Nancy Nowacek,Katie Salen,Marina Zurkow:http://karaokeice.com/home/

■ピンプ・マイ・ハート
 米ピッツバーグのカーネギー・メロン大に在籍する若手日本人アーティストの作品。自動車のドライバーの心拍音を拾い、コンピュータで増幅・加工してカーオーディオの音楽に取り込むという、独自の「HBBB(ハートビート・ベース・ブースター)」システムを自動車に組み込んだ。若者に人気の重低音を響かせた音楽と心臓の鼓動をシンクロさせることで、「ドライバーと車が完全に一体になれる」とうたう。
 プログラムを組み込んだコンピュータとつながれたハンドルを来場者が握って体験できるデモでは、おっかなびっくり挑戦した人々が、巨大な音で鳴り響く自分の鼓動に笑顔を浮かべていた。
(Takehito Etani:http://www.takehitoetani.com/

■スケート・ソニック
 スケートボードの裏にワイヤレスマイクと車輪の動きをとらえるセンサーを組み込み、ボードの動きを音楽に変換する「体感楽器」。ボードをジグザグに滑らせたり、ジャンプしたりといった複雑な3次元の動きをセンサーが拾い、それぞれ異なった音をつむぎだす。
 腕自慢の子どもたちが参加したワークショップは大好評で、見守る親や若者たちが「いいね(Sounds good)!」「カッコいい(Cool)!」と、盛んにエールを贈っていた。南アフリカ出身で、現在はドイツで電子音楽やデジタル・メディアのクリエーターとして活動する女性アーティストの作品。
(Cobi van Tonder)

■99レッド・バルーン
 大きな赤い風船を持った人々が広場に集まり、2人1組で楽しそうに駆け回ってゲームに興じていた。風船には小型カメラと発信機がとりつけられていて、広場の隣のテック・ミュージアムでは上空からのライブ映像を見ることができる。ゲームを終えた人々は記録された映像を見て、決められたルールにもっとも近かったチームを投票で選び、勝者を決める。実際に身体を使ったゲームとバーチャルなビデオゲームをまぜこぜにしたようなイベントだ。アーティストはシェークスピアの「夏の夜の夢」と、作品名と同タイトルの80年代ロックのヒット曲から発想を得たという。
(Jenny Marketou,Katie Salen)

●携帯電話が活躍

■ピジョン・ブログ
 ZeroOneのポスターやチラシにイメージ・デザインが採用された、フェスティバル招待作品のひとつ。全地球測位システム(GPS)と大気汚染観測装置、携帯電話を組み込んだ超軽量のバックパックを背負わせた伝書鳩を飛ばし、空中の大気汚染(COとNOx)の状況をモニターした状況をリアルタイムでブログ上に公開する。
 8日夕にサンノゼ市街から放たれた鳩たちは、2時間足らずかけて飼い主のもとに戻り、その間途切れなくデータを送信した。環境・社会問題のアクティビスト(行動主義者)でもあるカリフォルニア在住の女性アーティストが創案した。かつては軍事通信用に使われていた伝書鳩を、もっと有効な方法で役立てたいという思いもこめられている。
(Beatriz da Costa:http://www.pigeonblog.mapyourcity.net/

■ラブ・ウィルス
 環太平洋圏の若手アーティストたちが、貨物コンテナを舞台にアイデアを競う「コンテナ・アート」への出品作。「I am the MEDIA!」というメッセージの通り、一見若者の住むアパートの一室のような空間の壁に映しだされたスクリーンに、携帯電話などから送られた動画が次々と現れる。会ったことのない人同士の横顔がキスするように向かい合い、まるで会話を楽しんでいるかのように編集された映像は、「新しいシンプルなコミュニケーションの形」を表現しているという。アーティストや一般の来場者の声を集めたチャットはウェブサイト上でも公開され、ZeroOneをめぐる掲示板のような役割も果たしていた。韓国・ソウルからの参加作品。
(Kim Joon,Jang Woosuk:http://www.nabi.or.kr/delivery

■SEEN
 何の変哲もない黒いアクリル製の壁が、広場に突然現れた。いくら見ても「黒い壁」なのだが、デジタルカメラや携帯電話のカメラのモニターを通して見ると、漆黒の壁面にテキストメッセージが浮かび上がって見える。
 サンノゼ周辺に住むヒスパニック系の不法移民やインド人技術者、低賃金の電話サービス業などで働く外国人労働者たちに「あなたにとって労働の果実とは?」と尋ねた答えが次々と表示されていく。一般の米国人から見えないところで働く外国人労働者たちが、皮肉にも米国の繁栄を下支えしている。グローバリゼーションがもたらした労働のあり方の変化を、「肉眼では見えない/デジタル機器を通してのみ見える」という形で批評している。米国の建築家とテクノロジー・アーティストによる共同作品。
(Osman Khan,Omar Khan)

●カフェも美術館に

 ZeroOne開催期間中、サンノゼ美術館のカフェ「C4F3」も特設の展示会場となり、さまざまな作品であふれた。コーヒーやサンドイッチのサービスは、もちろんいつも通り。カップやグラスを手にした芸術家たちが集まり、楽しそうに語らっていた。

■シークレッツ
 カフェのテーブルに置かれた砂糖や塩の容器を持ち上げると、下には極小のモニター画面が隠されていた。実はカフェのいたるところに小さなモニターが仕組まれている。画面に映る映像には、短い字幕のようなものがつけられている。その1文1文は、匿名の人々がインターネットを使って告白した「誰にもいえない私の秘密」だ。
 「俺はキリストかもしれないという恐怖を抱いている」「彼は50歳、私は18歳だった」……二重に隠された秘密は、都会人のひそやかなため息のようだ。サンフランシスコを拠点にする女性アーティストによる作品。サイトから「秘密」を投稿できる。
(J.D.Beltran:http://www.seekingsecrets.com/

■CNNplusplus
 テレビで放映されているのは、おなじみのCNNニュース。しかし、よく見ると、画面の下の字幕ニュース部分が微妙に違う。CNNplusplusは、視聴者の興味に応じてニュース画面を加工するメディア・アートだ。CNNはCurious News Networkの意。
 利用者はキャスターの背後の映像や字幕ニュースの内容を編集し、画面をカスタマイズすることができる。キャスターが話したキーワードをもとに、グーグルの検索エンジンを使って関連するイメージを探すこともできる。ある日の画面には、イスラエルとパレスチナを隔てる分断壁よりも、米国とメキシコの国境につくられた壁の方がはるかに長いという「文字ニュース」が流れていた。
(Heidi Kumao,Chip Jansen:http://www.cnnplusplus.org/)

■チット・チャット・クラブ
 カフェの片隅で、スプーンの形をしたロボットのような置物と向き合い、熱心におしゃべりを続けている若者がいた。独り言だったらちょっと不気味。しかし、彼はいすを模したこの立体作品を通じて、ネットの向こう側の人と会話していたのだった。3体のユニークないす型オブジェは、それぞれ音声、テキスト、映像のチャットに対応している。
(Judith Donath,Karrie G. Karahalios:http://www.chitchatclub.org/


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