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西田宗千佳のクラウド入門

IBM・クラウド担当者に聞く:企業向けクラウドに必要なこと<下>

2009年12月24日

 前回の「企業向けクラウドに必要なこと:上」から引き続き、日本アイ・ビー・エムの三崎文敬クラウド・コンピューティング事業推進部長のインタビューをお送りする。

■強みは「経験」と「マルチベンダー・マルチプラットフォーム」

――クラウド事業の中で、IBMの強みとなる部分はどこだと考えていますか?

 まずは「仮想化」です。IBMは、IA(インテル・アーキテクチャ)を採用したサーバーの分野で様々な経験があります。それに最新の技術により、従来は1台のサーバーの上に複数の仮想化が基本であったものが、複数のサーバーの上に同じ仮想イメージを展開することもできるようになっています。

 標準化については、まさに「言うは易し、行うは難し」で……。

 これまでは、各部門の要望を聞いて、いちいちすべてシステムを作っていきました。だからそれぞれが「サイロの中」になってしまうんです。当然、運用も保守もバラバラでした。

 これを完全に一本化するわけではないんですが、一つの標準的なメニューに従って、それに合わせる形にしていかないとクラウドにはなりません。ITサービスの整理・統合が必要です。ただ、IBMはそのための方法論を持っていますので、既存のシステムであっても、個々のノウハウ・方法論を生かした上でシステムを変更していきます。極論すれば、これはクラウドを超えたIT戦略そのものといえるでしょう。

 クラウドにとっては、「システムのプラットフォーム基盤」が大切であり、基礎技術です。それは、グーグルにしろアマゾンにしろ変わりません。IBMは、仮想化の上に運用のサポートシステムと、標準化・自動化のシステムを組み合わせ、ライフサイクルを持ったアーキテクチャを提案する形を考えています。

 IBMの場合は、パブリックのクラウドも提供していますし、プライベートのクラウドも提供しています。もちろん自社でも、提供しているパブリッククラウドのシステムも、プライベートクラウドのシステムも使っています。

 ここが他社との大きな違いなのですが、我々は企業向けをメインにしていますので、サーバーとしては、IAサーバーだけではダメなんです。UNIXやメインフレームなどのサポートも必要になります。マルチプラットフォーム・マルチベンダー対応が基本です。

■クラウドの導入には「綿密なロードマップ」が必要

――では、どういう分野に向いているのですか?

 既存のITと、クラウドの適用領域は分かれてくると思います。適用領域の中でも、パブリックとプライベートの領域は分かれてくるでしょう。

 我々は、世界ですでに何千というお客様からシステムのアウトソーシングを請け負い、システムをお預かりしています。その経験から、基礎研究所では「なにがクラウドに向き、なにが向かないか」ということを特定しています。

 パブリックかプライベートか、ということは業種・業態によって違ってくるので、ここでは置いておきますが、ビジネス・インテリジェンス(業務システムデータを分析し、判断の助けとすることで、さらに業務に生かすシステム)やコラボレーション業務です。それに、ソフトのテスト業務や情報のアーカイブ、Web2.0系の業務なども、クラウドに向いているでしょう。ハイパフォーマンス・コンピューティングの分野にも活用が可能です。

 ERP(企業が持つ資産を有効活用し、経営の効率化を図る手法)に向いている、と言われるのですが、ERPは、一度導入してしまうと安定的に使い続けておられる例が多い。そういうところは、むしろフロー型のコストであるクラウドの価値が出てきません。投資効率の面でよく考えないといけないのは、データベース・トランザクション・ERPの3ジャンル、ということになるでしょう。

 導入までの王道としてはステップを踏んで判断することをお勧めしています。

 まずは、IT戦略のロードマップの中で、システム開発のアーキテクチャをどうすればいいか、ということ。次に、クラウドの作業負荷をどう考えるか、ということです。

 その次に来るのが、従来型のIT・プライベートクラウド・パブリッククラウドのミックスをどう考えるか、ということでしょう。特にプライベートクラウドについては、一見既存型ITと差が分からない、と言われるのですが、投資効率の面で大きな効果が生まれるようになっています。稟議を通しやすくするために、「どう導入すれば、どのくらいの投資効率が見込めるのか」というシミュレーションを行うツールも、IBM社内で独自に開発しました。現在は日本語化もされており、導入に大きく貢献しています。

 結局、このような手順を踏み、お客様自身の「ITロードマップ」を作っていただくというのが、最終的な流れになると考えています。

プロフィール

西田宗千佳(にしだ・むねちか)

1971年福井県生まれ。フリージャーナリスト。得意ジャンルは「電気かデータが流れるもの全般」。朝日新聞、アエラ(朝日新聞出版)、AV Watch(インプレス)などに寄稿。近著に「クラウド・コンピューティング ウェブ2.0の先にくるもの」「クラウド・コンピューティング仕事術」(朝日新書)、「クラウドの象徴 セールスフォース」(インプレスジャパン)がある。

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