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グーグル、中国に「決別宣言」 言論・人権、再び火種

2010年1月14日

 米インターネット検索最大手グーグルが12日、中国の13億人市場への参入と引き換えに一度は甘受した言論統制に反旗を翻した。対中姿勢が軟弱と米国内で批判されてきたオバマ政権も、同社の決断に同調する声明を発表。言論や人権をめぐる摩擦が、米中両国の火種として再び浮上した。(ワシントン=尾形聡彦、村山祐介、北京=琴寄辰男)

 中国版検索サイトや中国の現地法人を閉鎖する可能性に触れたグーグルの12日の発表は、中国の規制への「決別宣言」に近い内容だった。

 「これ以上、検閲を受け続けるつもりはない」

 グーグルは1998年、米スタンフォード大の大学院生2人が創業したシリコンバレーを代表する新興企業だ。瞬く間に検索結果が表示されるサービスが評判を呼び、先行していた米ヤフーを数年で抜き去りネット検索で世界最大手の座にのぼり詰めた。

 ただ、厳しい言論統制を敷く独裁政権と、米西海岸育ちの自由な社風で知られるグーグルは、もともと水と油のように対照的だった。

 同社は06年に中国に進出する際、中国当局が閲覧を望まないサイトを検索結果から自主的に削除する「自己検閲」を受け入れ、米議会から「恥ずべき行為」と非難された。「中国人にとって情報へのアクセスが増える利点が、『検閲』のマイナス面を上回る」というのが従来の同社の立場だったが、中国の言論統制は予想を超えていたようだ。

 中国メディアによると、昨年6月に中国政府がグーグルの中国語版サイトを「大量のポルノ情報を流している」とやり玉にあげ、海外サイト検索の一時停止を命じた。

 双方の溝を決定的にしたのは、同社の無料メールサービス「Gメール」へのハッカー攻撃。中国の人権活動家のメールを盗み見ようとする攻撃が激化。欧米の活動家のGメールも標的になっていたという。グーグル以外にも金融、ネット、メディアなど大手企業約20社へのハッカー攻撃が判明。詳しい説明は避けつつも、「かなり高度な攻撃」とした同社の口ぶりには、中国当局の関与を示唆する響きもある。

 クリントン米国務長官は12日、「中国政府に説明を求める」との声明を出してグーグルを側面支援した。来週には「21世紀におけるインターネットの自由の重要性」に関する演説も予定している。

 伏線はあった。

 オバマ大統領が初訪中した昨年11月。上海での学生との対話集会で「私は開かれたインターネットと反検閲の強力な支持者」と中国政府を暗に批判。グーグルは「自由と開放がなければ存在しなかっただろう」と語っていた。

 政権発足から1年。「中国との信頼関係づくり」を優先し、懸案を先送りしてきたオバマ政権には弱腰批判がつきまとう。年末には民主党の苦戦が予想される中間選挙もある。

 米中関係では、米国の台湾への武器供与で年初から中国が猛反発した。チベット仏教最高指導者ダライ・ラマ14世が2月に訪米するとの観測も流れる。オバマ大統領は昨年、米中関係が「21世紀を形作る」と言い切った。国内世論と対中関係を見据えた難しいかじ取りが迫られる。

 ●規制厳格でも市場は魅力

 「世界で最も優れたサービスが、中国を去っていく。中国人として、悲しい」

 中国からの撤退も辞さないというグーグルの発表内容が伝わると、中国内のブログやネット掲示板は、この話題の書き込みが相次いだ。

 中国では、海外と国内のインターネットの接点を政府系通信会社が統制。中国共産党・政府高官への批判や言論への弾圧などを批判する論調を遮断している。海外の有力なメディアや人権団体のサイトの多くも、特別なソフトがないと閲覧できない。

 しかも、中国政府は建国60年という節目の2009年に「低俗情報」の取り締まりを名目にしたネット検閲や規制を強化。閉鎖されたウェブサイトは未登録サイト、ポルノサイトを合わせて約15万にのぼった。同年7月に騒乱が起きた新疆ウイグル自治区では、国営の新華社通信などごく一部のウェブサイトを除いてネット閲覧ができない状態が年が明けても続く。

 ネット規制について、中国国務院新聞弁公室の王晨主任は昨年末の記者会見で「民族や国家の分裂を扇動し、邪教を宣伝する情報は処理しなければならない」と強調した。

 09年の調査では、国内最大手の「百度(バイドゥ)」の市場占有率は8割に迫る。グーグルの発表は、中国市場での苦戦が原因ではないかとの冷ややかな見方もあるが、中国のネット人口は昨年9月末に3億6千万人に達し、世界一の規模を誇る。今後の成長も見込めるだけに、簡単な決断ではなかったはずだ。

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