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2011年12月28日

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大河原克行のクラウド・エクスプレス

クラウドでストレスなく利用できるネット通販を実現、千趣会(後編)

文・大河原克行

 ベルメゾンネットを展開する千趣会は、クラウド・コンピューティングの活用によって、安定したサービス運用と顧客満足度の向上、そしてコスト削減を両立することに成功した。

 アクセスの集中時にも、アクセス制限を行うことなく、多くの消費者が利用できる環境は、消費者がストレスなく買い物を楽しめる環境の実現にもつながっている。

 同社が、ベルメゾンネットにおいてクラウド・コンピューティングを採用してからすでに1年以上を経過しているが、この成果について、千趣会業務本部情報システム部の高田拓治部長は、「大きな課題が出ることなくスムーズに移行ができた」と語る。

 インターネットを使用した販売は、外出せずに家の中で生活を楽しむ「巣ごもり消費」の高まりや、スマートフォンの普及拡大などによって利用が増加傾向にある一方、よりリッチなコンテンツを使いたいという要望が出ている。

 これはベルメゾンネットでも同様のことが起こっている。

 例えば、洋服を選ぶ際に、360度の方向から見てみたり、色を変えたり、他の商品との組み合わせといったことを自由に行えるようなコンテンツを提供するといった動きも出てくるだろう。

 「今後は、完全従量制による契約や、高い信頼性を要求しないコンテンツ等に関しては、サービスレベルを低くするなど、より安価な料金でタイムリーに利用できるといった仕組みも期待している。また、動画をはじめとするリッチコンテンツの今後の増加や、蓄積するデータ量の増加に対応できる、ストレージ・クラウドサービスの提供を期待したい」と語る。

 ベルメゾンネットの事業拡大に向けて、クラウド・コンピューティングの活用はますます進展していくことになりそうだ。

●業務システムなどもクラウド化、コスト2割削減へ

 この成功事例の取り組みと並行しながら、千趣会では、業務システムなどのクラウド化にも取り組んできた。

 千趣会では、2010年から各種社内業務向けサーバーなど、135台のサーバーを、118個の仮想サーバーに集約させ、クラウド・コンピューティング環境で稼働させている。この作業は2011年12月に完了。さらに、今後も移行できるシステムに関しては、なるべくクラウド環境への移行を図る考えを示している。

 「かつて、社内には約360台のサーバーが稼働しており、そこで300以上の業務システムが稼働していた。特殊なデータベースやファックスなどの周辺装置が必要なためクラウド基盤に乗らないものや、安定的にリソースを目一杯使用しているようなものを除いて、基本的にはクラウド環境へと移行したいと考えている。約360台のサーバーのうち、7〜8割程度が クラウドに移行することになるだろう」とする。

 クラウド・コンピューティングの移行については、まずは高い効果が発揮されると判断したベルメゾンネットから実施したが、その後、更新時期が近いものから順次、クラウドへの移行を図っていった。

 同社では、クラウド・コンピューティングを活用することにより、システムの冗長化が実現できるとともに、リソースの効率的な活用、管理の一元化が可能になり、単純にリプレースを行った場合と比較して20%以上のITコストの削減と変動費化が可能になるとしている。

 「日本IBMとのアウトソーシング契約のなかでクラウドへの移行を図っており、移行に際しては、課題といえる問題は発生していない」

 クラウドサービスには、IBMマネージド・クラウド・コンピューティング・サービス(IBM MCCS)を利用。同社アウトソーシングサービスとの親和性の高さも、クラウドへの移行を容易なものにしたともいえよう。

 「パブリッククラウドでありながら、限りなくプライベートクラウドに近いサービス環境である点も、多くのシステムでクラウド移行を図ることができた要因のひとつ」とする。

 また、同社では、MCCSに限らず、メール管理システムについては、Googleのクラウドサービス「Google Apps」を利用するなど、用途にあわせてクラウドサービスを使い分けていくといったことも行っている。これも2011年12月に移行を図ったばかりだ。

 高田部長は、これまでのクラウド・コンピューティングへの移行経験を踏まえながら次のように語る。

 「クラウドへの移行を図る際には、OSやミドルウエアなどの共通化を図ることが最適。カスタマイズしたシステムは、むしろクラウドへの移行は難しいと考えた方がいい。一方で、小さなシステムを細切れでクラウドに移行するのではなく、ボリュームを意識した形でクラウド環境に移行するのがいい。クラウド・コンピューティングの最大のメリットはスケール。単発の案件で商談するのではなく、一定以上のボリュームを 前提とした形で取り組むことがいい。当社も、ベンダーも、お互いが本気になってクラウドに取り組むことができ、結果としてリスクを少なくし、コスト削減効果と運用品質をさらに高めることができる」とする。

 千趣会では、多くのシステムをクラウド化しており、まさにスケールを追求している。これがクラウド移行を成功裏に進めることができる大きな要因なのかもしれない。

プロフィール

大河原克行(おおかわら・かつゆき)

1965年、東京都出身。IT業界の専門紙である「週刊BCN(ビジネスコンピュータニュース)」の編集長を務め、2001年10月からフリーランスジャーナリストとして独立。BCN記者、編集長時代を通じて、20年以上にわたって、IT産業を中心に幅広く取材、執筆活動を続ける。現在、ビジネス誌、パソコン誌、ウエブ媒体などで活躍。

インプレスのクラウドWatch「大河原克行のキーマンウォッチ」、日経パソコンPCオンラインの「マイクロソフト・ウォッチング」、ASCII.jpの「大河原克行が斬る日本のIT業界」の連載などを担当。著書に、「ソニースピリットはよみがえるか」(日経BP社)、「松下電器 変革への挑戦」(宝島社)、「松下からパナソニックへ 世界で戦うブランド戦略」(アスキー新書)など。

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