シンポジウム
ウーマノミクス〜働く女性が増え、成長する社会〜

働く女性増えれば経済成長
国の成長率のカギとなる要因は3点しかありません。その国の人口と資本、生産性です。とりわけ人口が占めるウエートは大きい。
ちょっと暗い話になりますが、2005年に約1億2500万人だった日本の総人口は、2055年までに30%減り、約9千万人になると予測されています。一方、人口に占める65歳以上の高齢者の割合はこの間に倍増し、40%強になる見通しです。15〜64歳の労働力人口はすでに減っていますが、今後さらに、急速に減っていくのも気になります。
労働力人口が減るとモノやサービスの需要が落ち込む。高齢者が増えれば年金や医療費の負担が膨らむ。この結果が招くのは、国の財政赤字の膨張です。債務残高の対GDP(国内総生産)比率は現在220%ぐらいですけれど、10年以内に275%、2・7倍強になる見通しです。財政赤字を減らすには、国を成長させなければいけません。
解決策は3点。出生率の引き上げと移民の受け入れ、そして働く女性の比率を上昇させることです。ただ、女性の未婚率はこの20年で急上昇していて、出生率の引き上げは容易ではありません。移民政策も時間がかかる。となると、女性の活用が最も現実的なわけです。
15〜64歳の女性の就業率は非正規雇用の拡大もあり、1975年の49%から、2009年には約60%に上がっています。もっとも、これを国際的にみると、ノルウェーは75%、アメリカは66%で、日本は遅れています。高学歴な女性の社会進出も低水準。大卒の女性の就業率は、大半の先進国が70〜90%なのに対し、日本は66%にとどまる。もったいないですよね。
女性が職場のリーダーになっている割合も残念ながら低い。国際労働機関(ILO)によると、03〜08年の民間企業の女性管理職の比率は、イギリスやドイツ、アメリカが30〜46%なのに対し、日本はわずか9%。男女の賃金格差も依然、大きい。こうした処遇を変えていくことが必要でしょう。
就業率を低下させている大きな要因には、育児・介護の支援体制の不備があります。6歳未満の子どもを持つ母親の就業率はスウェーデンやアメリカは60〜70%ですが、日本はなんと34%しかいません。夫が家事・育児に費やす時間も、他の先進国と比べてはるかに短い。家庭のサポートの問題もあります。
柔軟な働き方が利益伸ばす

女性の勤務時間は、男性より柔軟であるべきです。出産後に仕事を辞める女性の割合は約6割。「勤務時間が合わなかった」「職場に両立を支援する雰囲気がなかった」という理由が多く挙げられています。
では、多様な人材の活用を進めるダイバーシティー、あるいは柔軟性のある職場にした場合、どんな効果があるのか。厚生労働省の調査では、ワーク・ライフ・バランスや公平な評価制度などを実践した企業の57%は、従業員1人あたりの経常利益が10%以上伸びたそうです。
「ダイバーシティーって横文字の言葉だし、推進するのが難しそう」「なんのメリットがあるの」という反論も企業にはあるかもしれません。しかし、猛烈なスピードで進んでいるグローバル社会で生き残り、成功するには、多様性のある、より柔軟な職場を持てるかどうかがカギを握ります。その前提として、公平な評価制度が重要なことは言うまでもありません。年功序列ではダメです。
日本の出生率は1・37と低い。ペットの数が15歳未満の子どもの数を上回っているのは、経済協力開発機構(OECD)加盟国では日本だけだそうです。「女性の就業率を上げると、逆に出生率が下がってしまうのでは」という疑問もよく聞きますが、実はこれ、逆です。統計では、就業率が高いほど、出生率も高くなるという結果が出ています。スウェーデンやデンマーク、オランダやカナダなどが高く、日本や韓国、イタリアなどは低い。この「正の相関」は国内でも確認されていて、福井県や長野県、沖縄県など、出生率が高い県では就業率も高いんです。
私は11年前、「ウーマン」と「経済」を掛け合わせた「ウーマノミクス」についてリポートを書きました。日本人女性の就業率を今の60%から男性と同じ80%に引き上げた場合、どんな経済効果があるか分析すると、GDPの規模をなんと15%も押し上げます。
厳しい経済環境でも、女性の消費支出は好調です。30歳未満の単身の女性と男性の可処分所得の水準を比べると、09年は初めて女性が男性を上回りました。女性が、より社会に出て、活躍すれば、所得の増加につながり、消費の増加につながります。そのお金は、保育や介護サービス、外食、インターネット関連、不動産、金融サービスなどに振り向けられるでしょう。こうした分野の企業の株価はすごく元気です。
人口の減少や高齢化の進展といった人口動態問題の解決策は、目の前にあります。男女を問わない、一つの社会をどう築いていけるか。あと1、2年の間に考えないといけないと思います。「ウーマノミクス」は、日本の将来、成長性の大きな機会につながるのです。












