巣立っていくコウノトリのヒナ(右)=3日、兵庫県豊岡市城崎町、県立コウノトリの郷公園提供
昨年、国内の自然界で46年ぶりにコウノトリ1羽が巣立った兵庫県豊岡市で、今年は誕生した8羽のうち7羽が大空へ飛び立ち、残り1羽も巣で羽ばたきの練習を繰り返している。「巣立ちラッシュ」を支えているのは、地元住民らの温かい気遣いだ。
3月上旬、昨年もヒナを巣立ちさせたペアが営巣した同市百合地(ゆるじ)にある高さ12.5メートルの人工巣塔で、卵5個が確認された。その後も続々とペアが成立し、4月下旬までに初産卵の3組を含む5組が計20個の卵を産んだ。5月中旬までに13羽のヒナが誕生。5羽は間もなく死んだが、残った8羽は親鳥が運ぶフナやドジョウを食べて順調に育った。
昨年は、成立したペアが2組で産卵数も6個にとどまり、1羽しか育たなかった。今年の好調な繁殖について、県立コウノトリの郷(さと)公園の大迫義人・主任研究員は「地元住民らの協力で、コウノトリのすめる環境が豊岡盆地全体に整ってきたのが大きい」とみる。
昨年の繁殖シーズン前に8基しかなかった人工巣塔は、企業や地元有志の寄贈などで18基に増えた。コウノトリの餌場となる水田では、農薬の使用を抑えた米づくりが進められ、栽培面積は03年度の0.7ヘクタールから今年度は198.8ヘクタールに拡大。手作業での草取りなどは骨が折れる仕事だが、農家の人たちは「コウノトリが安心して暮らせる手助けができれば」と話す。
一方、繁殖の急増は「禁断の恋」も生んだ。遺伝的な偏りを避けるため一度は引き離された8歳の雄と5歳の雌の兄妹が、昨年に続き今年も交尾しているのが確認された。兄は郷公園内に強制収容。妹は別の2歳の雄と行動をともにし始め、やがて1羽のヒナが生まれた。郷公園は父鳥が特定できないとして、DNA鑑定を実施する方針だ。(大島良太)