CO2を噴き出すチューブが張り巡らされた実験田でイネを採取する研究者ら=岩手県雫石町、福島慎吾撮影
「フラックスタワー」の頂上にCO2などを観測する機器が設置されている=熊本県山鹿市、超広角レンズ使用、長沢幹城撮影
大気中の二酸化炭素(CO2)の濃度が上がると、植物はどう変化するのか。人間の排出量削減の取り組みは進むが、吸収する植物や農業への影響はわかっていないことが多い。地球温暖化の未来をより正確に予測するための基礎研究が、各地で続いている。
岩手県雫石町の水田に未来の一角がある。白と黒のチューブが10メートルほどの八角形に張りめぐらされている。「プシュー」と音がしてCO2が噴き出した。
「囲いの中は50年ほど先の環境」と農業環境技術研究所(茨城県つくば市)の長谷川利拡・主任研究員。東北農業研究センター(盛岡市)と共同で実験を進めている。
内側のCO2濃度は外側より200ppmほど高い570〜580ppm。センサーが濃度を監視し、風が吹くなどして濃度が下がると自動的にCO2を補う。植物にとってCO2は光合成に欠かせない「栄養素」。だが、濃度が上がると、コメは収量が十数%上がる一方、病気にかかりやすくなるというデータもあるという。
熊本県山鹿市には、森林によるCO2吸収量などを調べる施設がある。杉林から頭を突き出す森林総研の「フラックスタワー」だ。同総研九州支所の清水貴範・主任研究員は「森林がどれぐらいCO2を吸収、放出するのか、季節でどれほど変わるのか。わかっていないことは多い」。
高さ約50メートル。先端部にCO2や水蒸気量、風速、風向などを測る機器を備える。清水さんは週に1度は、風雨にさらされた機器の調整や点検のために塔に登る。「より精度の高いデータを集めることが、将来の予測に役立つ」
九州大の射場厚教授(植物生理学)は「植物がCO2に反応する仕組みもよくわかっていない。分子レベルでの本格的な研究が始まったところだ」と話している。(福島慎吾)