激減が懸念されるアキアカネ=中原正登さん提供
赤トンボの姿を見なくなった。そんな声が全国各地で上がっている。特に、水田地帯を中心に繁殖するアキアカネの減少が著しいようだ。稲作の変化が一因として浮上している。
研究者らでつくる「赤とんぼネットワーク」事務局長の上田哲行・石川県立大教授は昨年、24都道府県64人の会員を対象にアキアカネの個体数に関するアンケートをした。回答した52人のうち40人が「最近、急減した」と答え、うち24人が「00年前後から減少が始まった」とした。
佐賀市の「佐賀トンボ研究会」の中原正登・副会長(46)も同じ意見だ。
00年、同市北部の棚田で7〜10月に15回の調査をし、アキアカネなど3種計1644匹を捕らえた。だが、同じ場所での今年7〜9月の調査では、7回で計29匹しか捕獲できなかったという。「以前は虫取り網一振りで4、5匹は捕れた。アキアカネは学校のプールでも羽化し、繁殖力は強いはずなのに」
減少の原因について、研究者の間では「アキアカネを育んできた水田が繁殖に適さない環境になっているからではないか」と指摘されることが多い。
湿地を好むアキアカネが卵を産み付ける冬場に、農業機械を入れやすくするための乾田化が行われたり、休耕田の増加で荒れ地が増えたりしているのは、その一端だ。
また、除草剤など既存の農薬には一定の耐性を示していた幼虫(ヤゴ)が、別の害虫駆除用に開発された新しい農薬の作用を受けやすいとする公的機関の報告もある。
トンボ愛好者が毎年開く「全国トンボ市民サミット」(事務局・静岡県磐田市)の細田昭博事務局長(57)は「このままでは日本の秋の風景や文化が失われてしまう」と危機感を募らせている。(神沢和敬)