諫早湾干拓事業が土地改良法に違反するとして、住民らが国などを相手取り、国が県に支払わせた事業負担340億円の返還などを求めた住民訴訟の判決が15日、長崎地裁であった。今中秀雄裁判長は住民の訴えの大半について「適正な住民監査請求を経ていない」として却下したうえで、99、00年度の県の支出の違法性については「事業計画は同法に違反するとまでは言えない」として棄却した。
この訴訟は、干拓事業が湾の野生生物の「自然の権利」を侵害していると主張してムツゴロウなどと代弁者の住民が工事差し止めを求めた「諫早湾自然の権利(ムツゴロウ)訴訟」(96年提訴、05年に原告敗訴の判決)に続き、湾周辺の住民ら22人が00年に提訴した。今回も、ムツゴロウなどが住民側のシンボルとして原告に名を連ねていることから「ムツゴロウ訴訟第2陣」として注目された。
土地改良法は、公営農地開発事業は効果が費用を上回らなければならないと定めている。住民側は、国の計画は、農地造成による利益をいずれも過大に見積もった上、干潟の水質浄化能力が湾からなくなる損失を考慮していない、などと指摘。これらを補正して計算すると、事業は同法違反と訴えていた。
これに対し、国・県側は、02年の計画変更後、費用が事業効果を上回ったことは認めたが、当初の計画は防災効果などでもたらされる利益が事業費を上回っていたなどと反論してきた。
判決は、98年度以前と01年度以降の県の支出に関する住民側の訴えについては、住民監査請求を経ていないと判断。さらに99、00年度については「当初計画は経済効果の要件を満たしている。干潟の浄化能力を損失として算定しなかったことに、過誤があったとは言えない」として、住民の請求を棄却した。
干拓事業をめぐっては、佐賀地裁が6月、事業と湾内の漁業被害との因果関係を一部認め、排水門を5年間常時開放するよう国に命じる判決を出している。国側は、これを不服として控訴する一方、開門調査のための環境アセスを実施すると表明している。