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ビキニの「死の灰」、世界122カ所に降った 米が観測

2010年9月19日3時0分

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 米国が1954年3〜5月に中部太平洋のビキニ環礁で実施した一連の水爆実験で、放射性降下物「死の灰」が太平洋を越えて広がり、日本や米国などにも降下していたことが日本の研究者が入手した米公文書で裏付けられた。米国が世界122カ所で観測した降灰量が数値で記されていた。第五福竜丸以外にも被曝(ひばく)が及んだことを示す資料として分析している。

 報告書は55年5月に米気象局を中心にまとめられ、全227ページ。写しが84年に機密解除された。広島市立大広島平和研究所の高橋博子講師らが分析を進めている。その一部は研究者の間で知られていたが、今年3月、米エネルギー省のホームページで全文が見つかった。

 かつて米国が公開した、最初の水爆「ブラボー」の爆発から2日後までの降灰の範囲を示した地図では、ビキニ環礁から風下の東に向けて1万8千平方キロに限られていた。その後、降灰が世界規模に広がったことも指摘されていたが、今回入手された報告書には4カ月間にわたる観測結果が数値で示されている。

 ビキニ環礁から東西に長い楕円(だえん)状に降灰が広がり、日本や米国、アフリカ大陸など世界中に降灰があったことが示され、その総量は22.73メガキュリーと算出されていた。

 報告書によると、米国は実験にあたり、放射性降下物の観測を目的として世界中に観測所を設置。粘着フィルムを使って降灰量を記録した。

 6回の爆発による降灰量を1平方フィート(約0.09平方メートル)の粘着フィルム上で1分間に崩壊する原子の数で表し、太平洋側半球と大西洋側半球に分けて地図に記した。その上で各観測所の降灰量に応じて、等高線のような「放射能等値線」を記した。

 報告書は「対流圏の流動パターンと観測された放射性降下物との全面的な関係は明らか」として、「太平洋で冬季に実験を行えば居住地域への早期の(降下)確率を縮小できる」と結論。放射能汚染を抑える方法を模索していたことがうかがえる。「合衆国南西部で日本の約5倍(の降下)」という記述もある。

 各観測所の数値の単位は一般的に使われているものとは異なり、降灰の影響がどれほどあったかは今後研究していくことになる。

 実験当時に近海を航行して被曝した漁船や貨物船は延べ1千隻を超えるともいわれ、がんなどの健康被害を訴える元乗組員も多い。だが、日米両政府は55年に7億2千万円の補償金で政治決着し、第五福竜丸以外の被害実態はその後調査されなかった。

 高橋講師は「元乗組員らの被曝を裏付ける科学的資料で、核実験が地球規模の環境汚染問題であることも示している」と話している。

 沢田昭二・名古屋大名誉教授(素粒子物理学)は「総降灰量22.73メガキュリーという数字は世界的な影響を物語る。これまで人体内部での被曝は過小評価されてきたが、その影響はある。地域ごとに濃淡が示されている降灰量を現在使用されている単位に換算すれば、近海で被曝した乗組員らへの影響も明らかにできる」と話している。(枝松佑樹)

    ◇

 〈ビキニ水爆実験〉 水爆開発に着手した米国が1954年3月1日から中部太平洋のマーシャル諸島(当時は米国の信託統治領)のビキニ環礁で行った実験。5月までに6回爆発させた(うち1回はエニウェトク環礁)。3月1日に爆発させた「ブラボー」は広島型原爆の1千倍の威力があり、近海で操業中だった第五福竜丸の乗組員23人が被曝。半年後に無線長の久保山愛吉さんが死亡した。ほかにも多くの漁船や貨物船、現地住民、米兵が被曝し後遺症に苦しんでいる。

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