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水俣病の資料ピンチ 保存環境悪く変色や虫食いも

2010年11月7日7時32分

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写真「苦海浄土」の直筆原稿(右)と、水俣病の原因企業チッソと患者の間で1973年に結ばれた補償協定書(左)。いずれも一部が黄色く変色している=熊本県水俣市袋の水俣病センター相思社、稲野写す

 作家、石牟礼道子さんの代表作「苦海浄土――わが水俣病」の直筆原稿など、熊本県水俣市の財団法人・水俣病センター相思社に保存されている水俣病の貴重な記録や資料が、展示や保存の環境が悪いため、変色するなど危機にひんしている。

 相思社は1974年、水俣病患者の支援拠点として患者や支援者が設立した。以降、患者や支援者のほか、作家や写真家、弁護士らが資料を寄贈し、水俣病関連資料の充実ぶりでは国内屈指という。新聞や裁判資料など文書10万点や写真数万点があり、一部は敷地内にある水俣病歴史考証館に展示されている。

 だが、保存状態は悪い。考証館は、患者の作業場として建てた簡易鉄骨造りのきのこ栽培施設を88年に改修したもので、博物館のような資料保存用の建物ではない。展示している紙の資料は、日光や蛍光灯の紫外線の影響で一部が黄色く変色している。収蔵庫も木造や簡易鉄骨造りであるため、湿気やすき間から入り込んだ虫によって一部の資料に傷みが出ている。

 相思社は88年、石牟礼さんから「苦海浄土――わが水俣病」の第1章「椿の海」の直筆原稿32枚を寄贈された。2007年ごろまで考証館で展示していたが、原稿用紙の変色が目立ち、インクの文字も薄くなってきた。今は展示をあきらめ、事務所内の日の当たらない場所で保管している。

 ユージン・スミスさんの写真集「MINAMATA」のオリジナルプリント40点も、木造の収蔵庫に保管されている。40点の中には、胎児性患者の姿が世界に衝撃を与えた「入浴する智子と母」も含まれる。05年、これらの一部にカビが生えていたのを職員が見つけた。ふき取って事なきを得たが、昨年は天井が雨漏りしたという。

 相思社は、民間団体などから寄贈された物品を活用して展示や保存の改善に取り組んでいるが、慢性的な赤字状態で施設の大幅な改築や新築は望めないという。資料保存の専門知識のある人材もいなかったため、2年前に職員の一人、高嶋由紀子さん(33)が学芸員の資格をとった。

 高嶋さんは「世界的な財産といってもいい資料もある。水俣病の実像を何百年も後に残すため努力したい。石牟礼さんの原稿やユージン・スミスさんの写真は、工夫して何とか展示したい。ただ、いまは応急処置が精いっぱい」と話している。(稲野慎)

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