赤外線を光合成に使う特殊な葉緑素「クロロフィルd」が、世界中の海や湖に無視できない規模で存在することを海洋研究開発機構と京都大のグループが見つけた。地球規模の二酸化炭素(CO2)吸収量の推計に影響を及ぼす可能性がある。米科学誌サイエンスに発表した。
植物や藻類は、ふつう目に見える光(可視光)を使って光合成を行う。赤外線を使うクロロフィルdは、シアノバクテリアという原始的な微生物の一種しか持っていないと考えられ、赤外線を使う光合成は無視できるほど少ないというのが定説だった。
グループは、北極海や相模湾、琵琶湖、南極の池など、水温や塩分濃度が大きく異なる世界9カ所の水域の底に堆積(たいせき)した泥を分析した。その結果、すべての泥から一般的な葉緑素の1〜4%の濃度でクロロフィルdを検出した。
クロロフィルdが光合成に使うのは近赤外線で、可視光とほぼ同じ深さまでしか届かない。このため、光が届く水域で光合成する生物の死骸(しがい)が底に沈んだ痕跡とみられる。生物の種類はまだ特定できていないという。
海洋機構の大河内直彦グループリーダーは「今回検出された濃度などから、見落とされていたCO2吸収量をざっと見積もると地球全体で年10億トン程度(炭素換算)」という。これは大気中の年間CO2増加量の約4分の1にあたる。(安田朋起)